異世界のコスプレ
「ゴメン!! 私が迷惑をかけちゃって……」
「悟? 何でこっちの店にいるのよ」
蛍が店に入る前に、悟が自らを犠牲に外へ出た。悟も異世界研究所の話を聞きたいはずなのに……
「紗季にオマケ漫画を頼まれて、アイデア探しに……【愚弟】だと蛍の邪魔をするかなって」
「陣子もそうだけど、紗季の頼みで無理な事があったら、断っていいと思うわ」
店の中からでも悟の声が聴こえてくる。咄嗟に出た言葉なんだろうけど、蛍もそれに納得してるみたい。そこは紗季が無理難題を頼む事があるのを、蛍も知ってるからなんだろうけど。
「そんな事言ったら可哀想よ。悟ちゃんは好きでしてる事なんだから。蛍ちゃんが好きな人のために頑張ってるのと同じよ」
悟に続いて、弟店長の店の外に行ってくれた。私がオッサンという事は内緒にしてくれるのかも。じゃなかったら、店の中に招き入れそうだし。
「悟ちゃんと兄貴の三人で、ちょっと漫画のネタで盛り上がってしまったのよ。すぐに戻れなくてゴメンなさいね」
「とんでもない。自作のコスプレをするために、店長には協力して貰っているんだから。私の方が邪魔をしてしまって……少しの間、私も加わってもいいですよ。こっちも新しいアイデアが出るかもしれないから」
「そ、そこは大丈夫です。異世界系の話が多かったから、紗季の漫画とは少し違うかな……と思ったから」
蛍がアニメや漫画の話に加わろうとするなんて……これもオッサン効果? お面ライダーで登場した事もあるから。
「そういえば、蛍ちゃんのコスプレも異世界系なのよね。蛍ちゃんとオジ様の両方とも。絵に描いてくれたけど、私達でも何のアニメかは分からなかったのだけど……」
「私も名前までは……頭に思い浮かんできて、それがオジ様の姿に似合っていたから」
蛍が作ろうとしてるのは特撮とかじゃなく、異世界系のアニメのコスプレ? オッサン(私)に似合うとか、想像出来ないんだけど……それに、オッサンと蛍二人合わせてのコスプレだとすれば尚更よ。
「それを来週……遅くてもゴールデンウィークまでに完成させたいから」
今日は四月の三週目の日曜日。後、二週間で完成させるつもりなの!! その努力を水の泡にしようとしてるんだよね。居たたまれないわ!!
「どんなのか見てみたいな。勿論、絵の方で十分なんだけど……」
悟も蛍をこの場所から引き剥がすのが目的があったけど、蛍が作るコスプレの絵を見る方に入れ替わってるよね?
「……悟とは一緒にコスプレしたからね。店長達以外の意見を聞いた方がいいかもしれないし。オジ様のコスプレは良くても、私の方も良いかどうか」
これは……蛍を【愚弟】に戻す事に成功したのでは? 後は私達が【兄貴】から上手く脱出……じゃなくて、兄店長の話を聞かないと……その前に!!
「店長……栄養ドリンクがあったのなら、カップラーメンが常備されていたりしませんか?」
オッサンの姿を二時間待って解除するより、カップラーメンを食べての解除の方が安全でしょ。