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「……紗季か。久し振りだな。また冷やかしでも来たのか?」


【兄貴】の店に入ると、奥の方から渋い声が聞こえてきた。

レジ近くに作業場があり、店長はそこで粘土をこねている。ねんどろいどを作る準備をしてるのかもしれない。


「似たようなものかな。店長に聞きたい事があって、ここに来たわけ」


「聞きたい事か……弟の店に出入りしている蛍ちゃんの事なら、本人に聞けばいい」


 向かい側だけじゃなく、兄弟で経営しているから、蛍の事を知っていて、私達の友達という事も分かっているみたいね。というか、『蛍ちゃん』って……兄弟共々気に入られてるみたい。


「……こっちの店長は普通なんだね。【愚弟】の店長みたいに凄いと身構えたんだけど……」


 悟は私達に聞こえるぐらいの小さな声で囁いてくる。見た目はサングラスと髭、体も筋肉質。そこは【愚弟】の店長そっくりなんだけど、あっちはコスプレをしてるいるから……


「普通……といえば、普通か。フィギュアに話し掛けたり、たまにパンチラを覗いたり……色々やってるけど」


 紗季が言った通り、店長は作業しながらも、棚の上の絶妙な位置にフィギュアを置き、パンツが見えるか見えないか、何度も覗き込んでいる。私達がいても、その行動を止める事はない。


「それは当然なんじゃ……パンチラもそうだけど、スカートを捲ったりもするけど……」


 そういえば、悟はこう見えてもムッツリな部分があったわ。異世界研究所の研究員や助手のアレも見たぐらいだから。


「そこの彼女……分かってるじゃないか。そのキャラを愛してるからこその行動。そこにエロが含まれるのは当然。何かを買うのであれば、何割か値引きしてあげよう」


「やった!! コスプレもそうだけど、フィギュアも気になってたから。今は何を作ろうとしてるんですか?」


 悟は店長とすぐに意気投合したみたいで、作業を覗くために近付いていく。異世界研究所の事を聞くつもりで来たのに、このままだと話が脱線してしまう。紗季の漫画の事もあるから、悟には悪いけど……


「これか? これは蛍ちゃんを作成するつもりだ。勿論、売るつもりは……」


「蛍ちゃん……それが欲しいんですけど!!」


 店長が作ろうとしてるのは蛍のねんどろいど!? 悟もそう思って、声を上げた。


「アウト!! それは駄目だから。店長も蛍に許可をきちんと取ったんですか!?」


 思わず叫んでしまった。蛍の事だから、フィギュアにされるなんて絶対に拒否するはず。いや……オッサン(私)のプレゼント用に、自身のフィギュアを渡すなんて事は……ないとも言い切れないんだけど……


「駄目なのか?」

「駄目なの?」


「駄目!! 悟もそんな事したら、蛍に嫌われるわよ。店長も今から聞きに行くのもなし!! 私達がいる事も内緒だからね」


 店長と悟は落胆したけど、蛍自身が頼んでなくて、私はホッとしたわ。

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