表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/245

サラリーマン

「ふっふっふっ……騙される奴が悪いんだよ。これで目的は達成された」


 紗季は悪びれた顔でスマホをこちらに向けてくる。オッサンに【変身】した姿を写真で取るため? 栄養ドリンクを吹き出したけど、鏡とかを見なくても【変身】したという事が分かるようになった。


「はぁ……目的は何よ。『脱げ!!』というのはなしなのは分かってるよね」


 井上さんの透視能力で私……オッサンの姿を見るよりも、紗季自身が見た方が漫画のためになるわけだし……


「ん? 目的は達成されたって。まぁ……残念で、全く面白くもない結果だけど」


「どういう事? 前とは別の栄養ドリンクを飲ませたら、別のオッサンに【変身】するとでも思ったとか?」


 スルメと栄養ドリンクでも同じなんだから、別のオッサンに【変身】する事はないんだけど? そもそも、別のオッサンとは自分で言うのもおかしいけど……


「違う違う。陣子も言ってたじゃん。ジャージ以外の時で【変身】した時は違う服装になったって。制服の場合はどうかな? って……女子の制服を着たオッサンなら撮っておこうかなと思ったんだよ」


 オッサンが女子の制服を着る姿なんて、罰ゲーム以外の何物でもないじゃない……あれ? 紗季が残念という事は、服装は変わってる?


「面白くないって事は、制服じゃないんだ」


 服装を見てみると、ネクタイとクタクタのスーツ……疲れきったサラリーマンの姿じゃないの!! ある意味、社会人の制服ではあるけども。


「待って……これだけのためなら、スルメでも良かったよね? それぐらいの事なら【変身】するのに」


 これだけのためなら最悪だ。スルメなら十分で済むのに、栄養ドリンクだと二時間もオッサンの姿のままだし。前回のトイレの件もあるから余計に嫌なんだけど。


「いやいや……陣子は駄目と言ってたね。良いじゃんか。今回は【変身】時間が分かってるんだし、オッサンになった事を楽しまないと」


 オッサンになって楽しむ事? 味覚が変わって、何か食べるのはありだし、エロ本を買おうとはしたけど……他にある? 偏見だけど、不遇な職業にしか思えない。


「そう言われると……全然思い付かないんだけど? あっ!! エロい事は考えてないから」


「そ、そ、そんな事思ってないさ。なら、部屋にいるのもなんだし、私の取材を手伝ってくれよ」


 紗季も少しは考えてたっぽいが、外の取材か……外で【変身】する事が絶対ないとも言いきれないし、練習はしとくべきなのかも。私一人じゃなく、紗季もいるわけだし。


「取材……変な場所じゃなければ構わないかな」


 けど、オッサンが行きそうな場所でしょ。パチンコ屋とか競馬場? これを変な場所扱いしたら駄目な気もするけど……


「取り敢えず、今日は公園がいいかな。それも中央公園ね」


 公園? 紗季の住んでいる住宅地でも公園はあるんだけど、駅付近、色んな店がある場所の中心部にあるのが中央公園。たまにサラリーマンがブランコに乗って、黄昏てる時を見かけたり、夜中のベンチで酒を飲んでる姿も確認されてる。


 流石に無断でその写真を取るわけにもいかないから、私にモデルを頼もうとって腹なわけね。近所の公園だと、子連れの母親連中に怪しく思われるのもあるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ああ、確かにサラリーマンにとってはくたびれたスーツが制服みたいなものですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ