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番外編 花畑薫、男を見せる

「最後の勝負になりました。ここで『美味しい』と『叫喚』が残るのは亡者様、弱鬼共々盛り上げ上手ですよね」


 猪鬼は上手い事を言いながら、俺に水を渡してくれる優しさを見せた。観客達も盛り上がり、笑っている客達もいる。ねずみ色や肌色の叫喚地獄を頼んでる客も出てきた。


「うぅ……『叫喚』でリアクション芸は無理だよ」


 近くにいたからこそ、後輩の声が俺の耳に届いた。リアクション芸……って、不味いのを選んで、客達を笑わせようとしてたのか!? 最初の接客でもオドオドしてた感じなのに、店の方針か? いや、後輩は有野の事を師匠と呼んでたぐらいだからな。


 それは一旦置いといて、『叫喚』が余程ヤバいのが分かった。『激不味』の時点で相当ヤバいのに、後輩の反応が死を想像させる。流石に客に出す物で死は言い過ぎか……


「先攻は亡者様。連続で『不味い』のを引いてますが、最後に勝利の女神は微笑むんでしょうか?」


 それは俺自身も思ってるから!! この運の悪さ……といっても、後輩に関しては互いにそうなってるのかもしれない。


「俺は……前の右を選びます」


「残ったのが弱鬼の方になります。それでは……オープン!!」


 俺の叫喚地獄(ドリンク)は紫、後輩の方が透明。俺が一番ヤバいと思ったのが後輩の方へ。流れだと紫が『叫喚』の可能性が高いんだが……後輩を見ると、さっきみたいな残念そうな感じではなく、見るからに顔色が悪くなっていき、手も小刻みに震え始めている。明らかに透明が『叫喚』だ。


「あの表情……弱鬼ちゃんの方がハズレなんじゃ……」


「おいおい……それほどヤバいものなのか?」


「彼女の苦悶の表情も見たいかも」


 後輩の様子に観客も『叫喚』を引いたのだと気付いた。


 緑の叫喚地獄は臭いがここまで漂ってきたが、透明は何もなし。無臭なのが余計に怖い。


「残念な事にギブアップはなしですよ。二人にはきちんと飲んでもらいますからね」


 猪鬼も鬼だな。俺が引いた場合でも飲ませるはずだから、間違ってはない。これでアクリルスタンドを引けるのは五つになったわけだ。


 俺は紫の叫喚地獄のコップを手に取ると、芋の甘い香りがする。これは間違いなく『美味しい』やつだ。後輩は固まって、透明のコップに手を出せないでいる。


「はぁ……」


「ちょっと!!」


 俺は一度溜め息を吐き、猪鬼が『実飲』と言葉にする前に紫の叫喚地獄を一気に飲んだ。スイートポテトをドリンクにした感じで、ほのかな苦味もアクセントになって美味しい。


 その美味しいの状態をキープした状態で、後輩が飲まないといけない透明の叫喚地獄を口に流し込んだ。アクリルスタンドは勿体ないが、そのために後輩を犠牲にするのは寝覚めが悪い。


 というのも、意識が失くなったからだ。拒否反応が酷すぎて、シャットダウンしたのかもしれない。店もそんな飲み物を出すなよ。

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