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番外編 花畑薫は吐く直前である

「この匂いは……」


 青の叫喚地獄を手に取り、臭いを嗅いでみる。ヤバイ物は臭いからしてヤバい。しかし、これは……芳香剤がきつくなった感じ。リラックス効果があるのでは? と騙されてしまうところだ。


 後輩は……臭いも嗅がずに諦めた様子だ。肌色が『叫喚』なら……と思うのは、可哀想か?


「では!! 実飲。鼻を詰まんで飲むのはなしですよ」


「南無三!!」


 猪鬼の音頭に俺と後輩は叫喚地獄を一気に飲んだ。チョビチョビ飲む方が地獄なのは分かっているからな。


「……普通に不味いか? 」


 ハーブ系のドリンク。匂いばかりで、味が全然しない。飲めなくもないが……猪鬼の好みによるという意味がよく分かる一品だ。俺は……もう一度飲みたくはないかな。


「亡者様が飲んだ叫喚地獄はハーブのブレンド茶。好き嫌いが分かれる一品です。歯磨き粉みたいな味がすると感じる人もいるかもしれませんね。これを私達は『普通に不味い』にしました」


『普通に不味い』は許容範囲内。後輩は流石に凄い顔をしてるはず……って、溜め息を吐いただけだと!? 美味しいの方を引いたのか、『激不味』や『叫喚』なのか、どっちなんだ!?


「……飲めなくはないです」


『飲めなくはない』なのか!? 後輩は答えを知ってるわけだが、何故残念そうだったんだ? 二番目に良いのを引いたんだぞ?


「肌色と敬遠したと思いますが、実は豆乳と桃をメインにしたドリンクです。それにプロテインを加えて、ドロドロにしました。豆乳やプロテインとか飲む機会はそこまでないと思うので、これを機に飲んでみたら如何でしょうか? 体にも良いですよ」


 豆乳と桃、それにプロテインか……ハーブは美味しくなかったが、そこまでヤバい食材を入れてはなさそうだ。今のところ、体に良さそうなのを入れてる感じか?


「というわけで、二人とも『美味しい』を選べなかったので、二回戦に突入です。次に選ぶのは弱鬼からです」


 後輩は後の左を指差し、次に俺は逆の後の右を選んだ。


「選びましたね。二回戦は……弱鬼はねずみ色、亡者様は緑色です。という事は!! 弱鬼が選んだねずみ色はメニューにない色、閻魔様が追加したドリンクの『未知』で決定です。ですが、弱鬼が飲む事には変わりません」


 ねずみ色!? とんでもない色が登場したが、『『激不味』や『叫喚』ではなく、『未知』。美味しいか不味いかも分からない。


 後輩は『未知』のドリンクに、期待した眼差しを送っているようだが、俺はそれどころじゃない。


 緑の叫喚地獄は見るからにヤバい。写真では分からなかったけど、中に葉っぱみたいなのが散らばっている。しかも、少し離れていても、青臭いのが漂ってくるんだが!!


「それでは、実飲お願いします!!」


 俺は息を止めて、一気に口の中へ緑の叫喚地獄を流し込む。


「むぼっ!! 」


 あまりの臭さに吐き出しそうになり、声が出ない。これはヤバい!! 変な汗が出てきた。臭いし、苦いし、不味い。青汁を飲んだ事はあるが、それを上回る程の不味さ。舌が痺れた感じもする。


「亡者様が選んだ緑は薬草汁。数種類の薬草をミックス。青汁よりも健康的ですが、その味は青汁よりも不味い。もう一杯といけない程。これは……『激不味』です!!」


 これで『激不味』!? 『叫喚』の間違いじゃないのか? これ以上だと、人が飲めるのを越えてしまうんじゃないか? アクリルスタンドのためとはいえ、ギブアップしたい気持ちになってきたぞ。


「さて、弱鬼の方は……亡者様と違って、顔の表情が崩れてません。残念そうな顔もしてるけど……」


「……わ、私は好きかもです」


 好き……『未知』が美味しいだと!? 店長が情けをかけたドリンクだったのか? 


「中身を聞いてみますと、黒ゴマとあんこ、生クリームをミキサーにかけたらしいです。これは……私も挑戦してみたいかも」


 猪鬼も飲んでみたいと思わせるなんて、叫喚地獄に入らないだろ!! 因みなんだが、俺も飲んでみたい。というか、口直しをさせてくれ!! 

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