異世界のはじまり
「というのは冗談です。剣や魔導書の解析が進まないと、使用者探しは無理らしいので。能力者に関しても色々とあるんですよ」
小鳥遊先生は冗談を言いつつ、階段を降りては更に先へ進んでいく。ゴブリンや聖剣が見れた区間とは違い、閉鎖されたように、シャッターで閉じられている。
「このシャッターは研究の閲覧を禁止という意味してます。そして、あそこが私の研究室です。助手が数人いますが、気にしなくても大丈夫なので」
小鳥遊先生が指差す場所もシャッターがされていた。お互いに情報を渡さないという事? 今回、私達が来たのは特別なのかも……
「私も助手の一人だから、研究に触れる事が出来るんじゃないの?」
「無理に決まってるでしょ。あれはネタに過ぎないんだから」
能力者の集まりで、紗季は助手Sと名乗った手前、ここはボケどころと思ったのかも。無茶振りしてきた事にビックリだわ。
「流石にそこまでは許容出来ませんよ。まずは叶さんの親御さんに説明をしてから、能力を少し調べさせて貰いますね」
小鳥遊先生の研究室。中は結構広そうなんだけど、謎の機械に占領されて、狭く感じてしまう。そこにはいつの間にか消えていた運転手の姿がいて、その他にも数人バタバタと動いている。
「先生、【透視】検査の準備は完了してます。すぐに始めますか?」
助手の一人が小鳥遊先生に気付き、準備完了の報告をしてきた。
「最初に叶さん達に能力の説明をしてからです。井上さんの【透視】の検査も、反動による目の負荷などを調べるためなので」
「そ、そう言われると能力を使うのが怖いかも。そこはお願いします」
悟の【透視】は使用後、目が一時的に見えなくなる。それがどれだけの目に負担をかけているのか。下手すれば、失明の可能性があるとすれば、先に調べてもらうべきなのは確か。悟が頭を下げるのも分かるかも。
「狭い場所ですが、座ってください。私達が掴んでいる能力の説明をしますね」
助手達が人数分の椅子を用意して、私達はそこに座っていく。真面目な話という事で、紗季やサクラ先生も茶々を入れない。
「先程も言いましたが、ゴブリンや聖剣がこちらの世界に来たように、能力も流星群の影響だと思われます。私自身の体を調べてみましたが、体の変化は発見されてません。血や遺伝子等もそうです」
「何も変化がないのであれば、能力を無くす事は無理なのでは? 消す方法等を探しているんですよね?」
お父さんの質問は当然。能力の事を聞くためにわざわざ来たんだから。能力者の私達よりも気にしてるのも、私のためなんだろうけど。
「普通の解析ではまだ無理なだけで、次の流星群による情報によって変わるかもしれません。それに消す方法として、その流星群による異世界の扉を閉じるという考えもあります。それが何処にあるかは不明ですが」
ほぼほぼ分かってない状態。能力が登場したのも乙女座流星群の後だし、それ以前の異世界物に関しても未知の部分が多いんだから仕方がない。
「もしくは……始まりを知るかです。この研究所を立ち上げた人物は行方不明になっているのですが、ある記述が残されてました。最初は一筋の流星だったらしく、その光は赤ん坊が発していて、異世界転移されてきたと。その赤ん坊がどうなったのかは書き残されていません。それが十七年前の話です。それが事実なのか、今の研究員は誰も知らないのですが……」
十七年前……って、私が生まれた年じゃないの。流石に私達の知り合いにそんな人物がいるわけないでしょ。