◯◯願望者の末路
「担当が違うので、それは無理なんです。【透視】と【テレパシー】の使用条件で、ゴブリン等の異世界物の観覧を許して貰いました。それも幾つかだけで、全てではありません。未知の果実や石とかも。異世界と信じて貰えるそうなのが、この二つなのでは? と」
未知な果実や石はある意味地味だし、そこまで詳しくないから異世界の物とは考えないけど、ゴブリンだけじゃなく、聖剣や魔導書があれば異世界を信じたくなるよね。
「ちっ……触らせて貰えないのかよ。剣とか持ってみたかったのに。私達は無理だけど、先生は試したのか?」
「勿論。結果は当然ながら無理でしたよ。【変身】後もそうです。もしかしたら、アレを装備するだけの能力が必要かもしれないですね」
小鳥遊先生は無理だったのなら、私も無理だろうなぁ。それを試す事は出来ないみたいだし。
「あの……たまに人の写真が飾られてるんだけど、異世界人だったりするんですか? 服もコスプレのような感じだし」
お母さんが質問したけど、私も少し気になってた。その中に【兄貴】と【愚弟】の店長と似てる人も……本人じゃないよね?
「彼等は異世界の旅立ちに挑戦した者達です。成功か失敗したかは……本人しか分かりません。連絡も途絶えてますから」
異世界転生とか転移に挑戦? ……それは明らかに無謀な行動でしょ。連絡が途絶えたのも、その人物は◯◯だから。もしくは、逃亡したからなのでは?
「……怖がらないでくださいね。本人の意思でもありますし、何度も挑戦する人達もいます。違う仕事に異動もありで、強制ではないですよ」
一瞬、シーンとなったので小鳥遊先生はブラックではない事を説明した。けど、【兄貴】と【愚弟】の店長の事は内緒にしておこう。いや……写真のコスプレは【愚弟】の店長の作品?
「違う仕事って……やっぱり、いいや。流星群によって、異世界から人が来た事はないわけ? 能力者の中に実は存在してたりするんじゃないの?」
紗季は思わず、店長達の事を聞こうとして、なんとか踏み止まった。流星群が何度も異世界物を運ぶのなら、人がいてもおかしくない。写真の人物を異世界人だとお母さんも思ったぐらいだし。
「可能性はゼロじゃないですね。流星群の光を浴びて、異世界の記憶が戻ったとか。能力者の正体は転生者なのでは? という説も出てきてます。私に前世の記憶はないし、井上さん達はどうですか?」
「私はないです」
「私もないな」
「あったら面白いけど、ないよね」
悟、響鬼先輩、サクラ先生もそれを否定する。勿論、私もそうなんだけど。
「【変身】の場合、それはどうなのか。私の【変身】は若返った姿なのですが、叶さんはオッサンの姿に【変身】。両親に似ず、僅かな可能性が」
「ないから!! オッサンが女の子に転生するのは漫画の話。勇者とか魔王とかならまだ許せるけど、オッサンだから。オッサンの記憶なんて思い出したくもないし」