アイマスクが必要です
「陣。井上さん、猪狩さんもなんだけど、小鳥遊先生がスマホを預かるらしいわ。写真とか情報漏洩を防ぐために必要らしいのよ。勿論、私やお父さんの分もね」
お母さんが先に戻ってきたのは、私達のスマホを回収するためだった。
「研究施設に着いてからじゃないんですね。行く道なんて、外の風景で覚えるかもしれないのに」
「漫画とかでもあるまいし、アイマスクなんかして、周囲を見せないようにする事はないだろ」
「残念だけど、そのまさかなのよ。みんながアイマスクをするようにと、黒い袋を渡されたの」
お母さんが手に持ってきた黒い袋はスマホ入れだけじゃなく、人数分のアイマスクが用意されてる。
「そこまでするような場所に行くわけ? 一気に怪しく思えてくるんだけど……」
紗季がいたら喜びそうな展開。無事に戻ってこれるのか不安になるじゃない。何かあった場合、紗季が警察に連絡してくれる事を祈ろう。もしくは、小鳥遊先生相手なら、白先生もありかも……
「行くと言ったのは私達だからね。無理をしてくれたのかもしれないし、ここはちゃんと指示通りに動かないと駄目よ」
能力者が登場して一ヶ月の経ってない。研究が始まったばかりなのか、実は以前から能力者はいたのか。謎の部分を垣間見れるわけだから、仕方ないのかも。
「私は別に構わないぞ。アイマスクするなら、その間寝ればいいわけだしな」
確かに響鬼先輩の言うとおり、アイマスクをするなら寝るのもありかも。暗闇状態が続くと余計な事を考えてしまうかもしれない。小鳥遊先生とは別の車だからって、何も起こらないとも限らない。途中で襲撃にあったり……って、そこまで漫画みたいにならないか。
「なんなら、井上の能力があるから、不安になる事もないんじゃないか?」
そうだ!! 悟の【透視】なら、アイマスクの効果はないのも同然。
「それなんだが……井上さんは目薬も受け取ってくるように言われてしまったよ」
お父さんが戻ってきたかと思えば、小鳥遊先生も悟の【透視】を忘れたわけじゃなく、きっちり抑えに掛かってきた。
「それに研究施設に行くために、別の運転手を用意してくれたみたいだ」
お父さんと小鳥遊先生の車以外で、近くに高級車があるなと思ったけど、研究施設から運転手を派遣したみたい。つまり、両親もアイマスクをしなければならず、徹底して行き道を分からないようにするみたいだ。
「だから……誰かが先生の車に移動しないと駄目になったわけなんだが……流石に私が移動するのはな……」
運転手が増えるのなら、席が一つ埋まるわけで……お父さんが座る場所が無くなるわけ。響鬼先輩は嫌がってたわけだし、ここは……