秘密基地なんてないでしょ?
「能力とか男のロマンだったが、やはり魔法少女のように、能力も女の方がいいのか?」
「どうなんでしょうね? 私はオッサンに【変身】する能力は欲面白いと思うけど、欲しいとは思わないかな」
私の部屋から一階に降りて、リビングで家族会議。キツイ感じじゃないのは、お母さんがお父さんにビールを薦めたから。酒は好きだけど、そこまで強くなく、軽い感じになる。
「うぅ……本当に元に戻るのか? 娘がオッサンになったのを見るのがどんなにショックか。ほら、お前も飲みなさい」
「お父さん!! こんな姿をしてるけど、陣はまだ二十歳になってないわよ」
お父さんはちょっとしかビールを飲んでないのに、すでに酔ってるみたい。ボケをかましたのか、誰かと間違えたのかも分からない状態なの?
「冗談だ。娘と一緒に飲むのも夢だったが、こんな状況は望んでないからな」
そう言いながら、グビッと一気に飲み干した。確かに一緒に酒を飲む日が来たとしても、その時までに【変身】が無くなってるのか。オッサン時の方がお酒が美味しかったら、そっちを選ぶかもしれない。
「解除されたみたい。スルメを食べたり、栄養ドリンクを飲むと【変身】するんだよ……イテッ!!」
「また食べたら【変身】するんだろ。オッサンの姿なんて見たくないぞ」
お父さんが持ち帰ってきたスルメに手を伸ばすと、食べるのを阻止された。オッサンの時が美味しいの当然として、この時も食べてみたいじゃない。
「大丈夫だよ。スルメだと十分しか【変身】出来ないし、最悪カップラーメンを食べたら解除されるから」
スルメは食べれるけど、カップラーメンを食べれる程の腹は残ってないけどね。
「はぁ……仕方ないな。色々と調べておくべきだからな。将来、結婚をする事になってみろ。オッサンに【変身】する娘を誰が貰ってくれるんだ」
それは当分先の話だし、オッサンに変身出来なくても結婚出来るかどうか……ずっと、紗季と馬鹿みたいな事をしてる気がするんだけど。
「調べるんだったら、陣が通う学校の先生で、能力を研究してる人がいるのよ。家を訪ねてきた事もあったし。能力を消す方法とかも考えてくれてるらしいわ」
「小鳥遊先生ね。色んな能力者に会いに行ったり、話を聞いたりしてるみたいだよ。でも、実際に研究してるのを見た事はないけど」
学校の保健医の仕事もあるし、能力者の集いのメンバー集めもしてそうで、忙しいのは確か。どんな能力があるのかを調べるだけで精一杯と思う。
「うおっ!! 【変身】は一瞬なんだな。いきなり声変わりしたから驚いたぞ。その……小鳥遊先生? が調べてるというなら……学校ではなく、その研究施設、秘密基地みたいな場所に案内して貰おう。そこで詳しく説明を」
「……お父さんも漫画とかアニメ好きで、秘密基地とか憧れてるのよ。一応、先生に話を聞きに行けるか聞いといてくれる?」
お母さんがこそっと教えてくれたけど、秘密基地とか普通ないでしょ。施設もあるかどうか分からないのに、それに乗り込む勢いなのは止めて欲しいんだけど。