少し漏れてるますよ
「おお……やっと来たか。アイスは保健室で冷やしてたから、安心して食べてくれよ」
小鳥遊先生が用意したのは能力の集いで使った教室。私達が入ってた掃除用具入れは撤収されていて、普通の教室と同じ状態になっていた。
「あ、ありがとうございます。アイスもそうですけど、わざわざ見に来てくれたのも嬉しいです」
雪見は響鬼先輩に頭を下げた。響鬼先輩には【ライソ】で委員会が終わった事を伝えて、そこからアイスを取りに行ってくれたのかもしれない。
「気にすんなよ。同じ能力者同士だからな。先生の方は用事があるからって、教室を準備してくれただけだな」
雪見の能力が見れるチャンスなのに、余程の用事なのかも。
「どうやら、学校の仕事を溜め込んでいたらしくて、鉄に押さえ付けられてたわ」
ああ……昨日も遊園地にいたし、【四葉】出版にも付いてきたり、私の家に早朝に来るなりで滅茶苦茶な事してたから。基本的に紗季と同類なんだよね。
響鬼先輩はアイスを食べながら説明してくれた。雪見のだけじゃなく、ここに来る全員の分のアイスを用意してくれてるのは嬉しい。
「悟と姿見先輩はまだなんですね」
「そろそろ来るだろ? 飛鳥の方は図書委員だったな。叶と同じぐらいに【ライソ】があったからな。【透明化】で隠れてもいないぞ」
悟は花畑君と同じ美化委員で、姿見先輩は図書委員か……悟は花畑君を誘うって事はないと思う。姿見先輩も前回みたいに【透明化】で教室にいる事はないらしい。
姿見先輩は私達相手だと気軽だけど、別の誰かがいると壁が出来る。響鬼先輩や姿見先輩でも、雪見のツッコミ役が出来そうな気がしないでもない。
「っと、アイスを食べたせいか、体が冷えてきたな……って、漏れてるぞ」
響鬼先輩は軽く体が震えてるけど、私も寒くなってきてる。雰囲気は決して悪くないんだけど、雪見が響鬼先輩に怯えてたり、緊張してるからのが原因かも。
「す、すみません。披露するのと、叶先輩がどう返してくるか考えてしまって」
それを言いたいのはこっちなんだけどね。雪見の方はある程度考えてるだろうから良いけど、こっちは設定を見たばっかりだし。まぁ……響鬼先輩に緊張してるとは言えないだろうから。
「今日知ったばかりで、会話も行き当たりばったり。ノリツッコミになると思いますよ。失敗したら、それで笑ってくださいね」
「逆にそっちの方が面白かったりするからな」
響鬼先輩は今もゲラゲラ笑っていて、雪見も緊張が解けてきたのか冷気が止まってくれた。
「お待たせです。丁度、姿見先輩と鉢合わせて」
悟と一緒に姿見先輩も教室に。二人の手には紙パックのジュースが。もしかして、雪見のコントを口にジュースを含みながらするつもり!!
「待たせたお詫びね。普通に飲んでくれていいから」
なわけもなく、姿見先輩は私達にジュースを渡してくれた。
「んじゃ……揃ったところで、雪見と叶のコントの始まりだな」