意外な来客
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月曜の昼休み。私と悟はご飯を食べてるんだけど、紗季は単行本の表紙になる絵をひたすら悩みながら書き続けるわけ。口にするのはカロリーバーと栄養ドリンク。表紙にオマケ漫画、今月の話とやる事は山盛りあるから。
「う~……アイデアが全然浮かばない。何か刺激がないと」
「刺激って……紗季が引き起こしてる事ばかりじゃない。遊園地の事もそうだし……って、表紙には主人公が必要じゃないの?」
紗季は迷走してるみたいで、表紙の絵に主人公をいれず、花畑君と私、蛍をモデルにしたキャラを描いてる。最初は主人公を全面に出すでしょ。
「だって……人気がないからさ。主人公は影が薄くて、私もサブキャラ達を描いた方が楽しいから」
作者自身がそんな事言ったら駄目だと思うんだけど……ランキングとかしたら、主人公が一位とかあまり見かけないかも、
遊園地の件は途中で頓挫したから、紗季のモチベが上がらないかも。あれから少し変わったのは悟が若杉と少し仲良くなったくらい? 今朝も悟から若杉に挨拶してたから。
花畑君は相変わらず……というわけではなく、紗季よりも若杉が積極的に話し掛けて、面倒臭そうに相手してる感じだ。
「オマケ漫画も薫がいいんじゃないか? って、黒さんが言うぐらいだぞ。といっても、ネタは本編で出してるから、なかなかな」
花畑君がモデルのキャラは人気があるから、オマケ漫画でメインにするのは分かる気がする。けど、メインにするとネタを出すのが難しい? 花畑君と若杉のやり取りもありだと思うけど……若杉をモデルにしたキャラは登場してないから?
「有野さん。お客さんが来てるわよ。相手は一年生みたいだけど、何かやらかしたの?」
クラスメートが紗季に声を掛けてきた。その子は一年の時も同じクラスで、紗季がどんなキャラなのかを知ってるからの発言だ。
「私に一年の知り合いはいないぞ。そこまで手を出す余裕は無かったからな。ある程度してからでないと」
「手を出すつもりではいるとは思ってたけど……そう言うのなら、紗季は嘘をついてないと思うよ」
「そうなの? あの子なんだけど……」
大人しそうな女の子がドア越しに様子を伺ってる。一年生はネクタイが青色なので、彼女で間違いないはず。私は紗季と一緒にいる事が多いけど、記憶に全然ない。
「漫画関連だと……一年生というのもおかしいよね」
紗季の漫画をファンだとしても、本名は知らないはずだし、後羽先生と呼ぶんじゃないかな?
「あ~……あの時、名前を呼ばれてたな。けど、何故私なんだ?」
「やっぱり、知り合いだったわけ? 私は一度も会った事がないんだけど」
「いや、あるぞ。ロッカーの中にいたから、顔は見えてなかったからな。彼女は雪見だぞ」
雪見!? だから、紗季は『何故私なんだ?』と言ったわけね。相談事なら【ライソ】でコメントや、紗季じゃなくて、私や悟に声を掛けてくれたら良いのに……