ネタバレします
「あの親子……アトラクションに目もくれないな」
アトラクションの一つでも並んでくれたら、その隙に二人の顔を確認出来るんだけど、全く目もくれない。小鳥遊先生達だとすれば、遊ぶのが目的じゃないから。
「俺達みたいに手を繋いでないどころか、子供の方が父親に説教してないか?」
父親の方が子供を肩車したり、手を繋いだりする光景はあるかもしれないけど、父親がペコペコと子供に頭を下げてるのも何だか怪しい。
「『俺達みたいに』とか強調しないでいいから。あれは親子じゃないし」
「親子じゃない……って、誘拐か!! 狙ってるのは本当の両親!?」
「馬鹿じゃないの。紗季の関係者でもそこまでしないから。誘拐犯の方が子供に怒られてどうするのよ」
馬鹿みたいな会話をしてる場合じゃないんだけど……二人の会話を聞きたいぐらいだから。
「確かに……おっ!? 二人が別行動するけど、大丈夫なのかよ。迷子になるんじゃないのか」
若杉の言った通り、二人は別方向に足を進めていく。そういえば、最初から白先生達が向かった先には行ってなかったけど……
「子供の方に追って、保護するか? その時に顔を確認出来るぞ」
本当に小鳥遊先生だった場合、今回の件について、素直に答えてくれそうな気はする。けど、余計な事も言い過ぎる気も……私が能力者だって事も。家を訪問された時がそうだったし。
「父親……じゃなくて、男の方を追うから。そっちの方が安全だと思うし、話もしてみる」
酢男が紗季と小鳥遊先生の協力者なら、私もその仲間だと勘違いさせる事も出来るかもしれない。紗季が考えた事じゃなくても、何かしらの情報は引き出せるかも……
「酢……煤川さん」
その男が酢男じゃなかった時は謝ればいいと、思いきって声をかけた。勿論、子供との距離は離れてる。
「えっ? 誰……って、後羽先生のアシスタントじゃないっすか。貴女も協力してるんすよね。伝言でもあるんすか?」
やっぱり、酢男だ。しかも、紗季と一緒に行動してたせいか、最初から協力者と勘違いしてくれてる。酢男も詳細の全部は伝えられてないのかも。
「いえ……煤川さんがいる事の方がビックリで。先生達が迷惑をおかけしてます」
ここで紗季の名前を出さないのは、若杉が後羽=紗季という事は知らないわけで、先生達というのも小鳥遊先生の事を含めて言ってる。
「本当にそうっすよ。けど、『ここまでするとは!!』って感じで面白いっす。先輩の頑張り次第で消えた案だったすけど」
酢男は簡単に白状してくれた。やっぱり、紗季の仕業だわ。『先輩』も黒さんの事だろう。頑張り次第って事は、紗季はおばけ屋敷の時点で黒さんを見限って、協力する方を選んだ? 最初に一人で行動したのもそのためだったのかも。
黒さんも何となく察したから、私達だけで解決するのに賛成したんでしょうね。