憧れの人の登場
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「後羽さん!! こっちこっち!!」
私と紗季、悟が【妖怪の森】のショーから離れて、向かったのは羊爺のカフェ。スタンプ集めのためかと思ったら、紗季を待ってる女性が二人。
「あれは……姿見先輩だよね」
その一人はおばけ屋敷でバイトしていた姿見先輩。悟はその事を知らない。という事は、もう一人は体が伸びた能力者の人?
「姿見先輩はおばけ屋敷でバイトしてたんだよ。もう一人は一緒に働いてた能力者じゃないかな?」
「ああ……なるほどね。おばけ屋敷がヤバイ意味が分かったよ」
ネタバレになるけど、姿見先輩の【透明化】でおばけ屋敷が怖くなる事に悟は納得した。
「一緒にいる君達もアレなんだね。君は……おばけ屋敷に来てた子だ」
服装もおばけ屋敷で見た時と一緒だから、彼女があの能力者で間違いない。少し顔が違うように見えるのも、メイクか何かをしてたかもしれない。
「叶さんだけじゃなく、井上さんも? という事は……コイツがあの時一緒にいた人? おばけ屋敷で絡んできたのもそうだし」
姿見先輩の【透明化】の効果が消えて、話した内容を忘れてる。とはいえ、見た物は覚えてるから。
「そうですね。姿見先輩は何で彼女と一緒に? 初対面だと言ってたんですよ」
「同じ能力者だからって、強引に連れて来られたんだ」
「違うよ。ちゃんと意味があるからね。飛鳥ちゃんが覚えてないだけで」
同じ能力者だからって、滅茶苦茶フレンドリーに姿見先輩に接してるんだけど、紗季の誘いに乗るぐらいだから当然なのかも……
「あの……貴女は? 後羽と呼ぶからには、漫画出演に誘われたんですよね?」
それにしても紗季が大人しくない? 私が聞くよりも先に彼女を紹介してもおかしくないんだけど……
「それもあるけど、彼女とは同業なんだ。漫画の題材にするからって、声を掛けられた時は驚いたよ。【サクラサク】って名前でファンタジーを書いてるんだけど」
「……【サクラサク】先生!! 大ファンです。【サクラミチル】とか、発売したばかりの十八禁本も手に入れたかったぐらいです」
「驚いただろ? 体験取材してるらしい。おばけ屋敷もそうだけど、人の驚く顔のバリエーションを勉強してるみたい」
紗季が大人しかったのは、私を驚かせるためらしいけど、驚かないわけないでしょ!! サインとかキャラを描いて欲しいぐらいなんだから。
「ファンだったなんて嬉しいな。私も能力者だから、新しい漫画を描けたらと思ってたんだけど、考える事は一緒だよね。彼女から聞いたけど、能力者の集いというのも面白そうだし、参加させてもらうよ」
能力者の集いにサクラサク先生が参加するなんて夢のよう……ネタにされても嬉しいかも。
「そんな事を私は言ったんだね。急いで、何かを伝えたのは覚えているのだけど」
姿見先輩は【透明化】の反動で、【透明化】になってた時の会話や聞いた事、もしくは見た物を全部忘れてしまう。今回は前者の方。サクラサク先生に能力者の集いに誘うと確かに言ってた。
「それもあるんだけど、本当に伝えたかった事は違うよ。遊園地の中で事件が発生するかもって」