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勘違いも甚だしい


「さて……ここが一番見えやすくて、隠れやすいな。陣子と悟も早く良い場所を見つけてくれ」


 紗季は入口に入ってすぐにあるマスコットキャラの銅像の後ろに隠れた。銅像の股下から入口を覗き込む事で、白先生と黒さんを待ち構えるつもりらしい。流石にそこは一人しか無理そうだし、私と悟も監視しやすい場所を……


「何やってんだよ。かくれんぼしに来たわけじゃなく、遊びに来たんだろ? 観覧車とかお化け屋敷に行かないと」


 若杉は予想通り、ジェットコースターとかじゃなく、観覧車や遊園地とカップルが雰囲気を作りやすい場所を言ってるんだけど、言いたい事はあながち間違いでもないんだよね。覗き見するために遊園地に来るなんて……


「私は遊びに来たわけじゃないぞ。取材だ。対象相手の行動を見るためだな。陣子や悟にも協力してもらうから、二人は好きな場所に行っていいぞ」


 紗季の目的は若杉達と遊ぶ事じゃないから。突き放すような言い方も、若杉をここから引き離すためだろうね。


「何が楽しくて、男同士で回らないと駄目なんだよ。それに叶達は誰を待ってるんだ? 全員でそいつを待った後なら、遊んでも大丈夫なのかよ」


 若杉に白先生と黒さんのデート現場を見られるのは如何(いかが)なものか……若杉がそれを学校で言いふらす事によって自然消滅がないとも限らない。


「いや……俺は今のところ一人で大丈夫だぞ。他は勝手にやればいいさ」


 花畑君の方は私達の待ち人に興味はなさそう……というか、花畑君が持ってるのは入口抜けた後すぐに置いてある【妖怪の森】スタンプラリーの用紙なんじゃ……近くのポスターに妖怪捕獲ロボ【クマガン】の限定ぬいぐるみGETと貼られてる。


 そういえば、お母さんが好きなんだっけ? 【愚弟】でウサニンの着ぐるみを貰ったと悟から聞いたし。


「花畑~お前までそんな事言わないでくれよ。俺はこの日を楽しみにしていたんだよ」


 若杉は滅茶苦茶悲しそうに顔して、涙も流しそうな感じになってる。


「あの……私が一緒に回りましょうか?」


 悟は見てられないと、若杉の相手に名乗りを上げた。きっと、悟の体は優しさで構成されてるのかもしれない。


「井上……お前、俺に惚れてるのか?」


 その優しさを打ち砕くのが欲望に忠実な若杉。


「全然。紗季や陣子の邪魔になると思って」


 言葉に棘が……悟のこめかみはピクピクとなってるだろうなぁ。


「……仕方ない。チケットも奢ってもらったわけだし。誰を取材しようとしてるか知らないが、隠れて見るなら一人で十分だろ。有野達三人の内、二人が俺達とそれぞれで行動。時間を設けて交代。これでどうだ?」


 若杉や花畑君を白先生達から引き剥がすためにはそれが一番かも。花畑君も若杉を哀れに思ったんだろうけど、四人で行動するとは言ってないのよね。『それぞれで行動』だから。


 若杉もウンウンと頷き、私の方にすがるような目を向けてくる。私もそれに賛成すれば、話は決まるみたいな……多数決ならすでに決まってる。


「分かったわよ。最初は紗季が一人行動。私が花畑君、悟が若杉で良い? 一時間で交代。そこはグーチョキパーで決める。相手が同じになっても文句は言わない」


 身の危険を感じるから、若杉とペアになるのを避ける方法を念のために作っておかないと。紗季だけじゃなく、私も白先生達の行動を見てみたいし。


「紗季もそれで構わな……」


 紗季の姿が消えてる!? 白先生達がすぐに来ると言ってたから、何も言わずに先に行ったわけ!?

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