妄想の中に真実は一つ?
「飛鳥がお前で良かったわ。今朝の態度も納得だぞ。体育の時も私を全然怖がる事が無かったからな」
「そうなんですね。最初はどんな感じだったんですか?」
悟も興味があったみたいで、能力とは無関係だけど質問してくれた。
「何もないと言った方が正解だな。話す事もなかったし、黙々とペアとして体操したり、一緒に行動してただけだ。名前も勘違いしてたぐらいだからな。でも、何も気にしないで良かったから、楽だったぞ」
「私も一緒だね。響鬼の事は知ってたけど、ある意味防波堤になってくれてた。そのせいで、変な目で見てくる輩もいるんだけど」
響鬼先輩は姿見先輩の名前をオウジと勘違いしてたから、そんなもの? 姿見先輩も女子達に人気? があって、響鬼先輩を利用したら、周囲があんな感じに……分からないわけでもないけど……
「その変な目で見られるというのは……私と飛鳥をカップル? みたいに思ってるのか? 【テレパシー】で聴こえた声はその連中の……」
その可能性はあるかも。響鬼先輩の怪我は姿見先輩が原因でとか、色んな妄想を広げたとか。響鬼先輩本人ではなく、推しカップルの心配。
「それはあの時に話した事に関係ある? 能力者が一人足りないのも気になるところなんだけどさ」
「私が説明しますよ。私や悟の能力もあるし、響鬼先輩の【テレパシー】の事も。ここにいない能力者の事もね」
能力者の集いの事を簡単に説明。能力の事もそうだし、雪見がここに来なかった理由。週末の能力者の集い。響鬼先輩の相談事に関して。
「私の能力もちゃんと伝えていたみたいだね。だから、響鬼と二人が来たわけだ。それに響鬼の相談事もあってか……違う意味での心配がありそうなのは申し訳ないけど」
姿見先輩も、響鬼×姿見の心配を否定出来ないみたい。一番の被害を受けてる姿見先輩だから分かるのかも。
「違うと信じたいけどな……【テレパシー】で今日捜すのはやめとこ。聴きたくない心の声で溢れそうだしな。そいつらとは友達には……なりたくないぞ」
二人が体育の時間以外で邂逅したわけだし、その心の声を聴きたいとは思わないだろうなぁ。それをするのは紗季か小鳥遊先生ぐらいだろうし……
「という事は、響鬼先輩の相談事は一度保留にするんですか? 本当に心配する人がいたら、この時にこそ心配するかもですよ。二人の関係はそんなのじゃないって」
それはあるかも……しれないか? 純粋に心配する気持ちなのか、響鬼×姿見を否定する人なら、それも怖い気がするけど。
「そんなもんか。なら、この後でまたやってみるか。成果が出たら【ライソ】するわ。雪見にも教えとくか」
これで響鬼先輩の相談事を一旦保留になった。姿見先輩がグループに参加した後、響鬼先輩が相談事の報告を入れた。
「これで小鳥遊と雪見も見るだろ。次は井上か叶の相談事か? 全員揃ってないけど、先に聞いてやるぞ」
私の相談事……蛍の件を話してみる? っと、その前に昼休み終了の予鈴が鳴ってしまった。