独り言は聞かれていたら少し恥ずかしい
いつもありがとうございます。かろうじて三日連続の投稿となりました。書くことと推敲と宣伝を一日でするには時間がいくらあっても足りないですね。ですがせっかく見つけた夢ですからあきらめずに頑張っていきたいと思います。
「おかえりなさい。ミスターロン毛」
「あぁメガネ、昔の傷は大丈夫か?」
「あなたはいつもそれを聞いてきますが、どうしてそれを知っているんですか?」
メガネはおなかをさすりながら、疑うようにこちらを見る。メガネは垢抜けた。昔は髪は長く、その間から見える表情は暗かった。いつも下を向いていて、トラックが近くに来るのもぎりぎりまで気付かないような女の子だった。
彼女が変わったのは、ここに来てからだった。環境を用意して、仕事を与え、存在意義を与える。それから彼女は髪を切らせた。見た目が変わると自信がつくというものだ。
そして眼鏡を買った。度の合っていないメガネは視界を曇らせるからだ。
フレームの細いメガネが似合う彼女はロン毛のパートナーのオペレーターだ。ロン毛のマネジメントを行うことが主な仕事で、本部に戻ったときにはこうやって直接会って挨拶をする。
「これから休日、と言いたいところですが、問題が起きました」
「俺の仕事に不備があったとでも?」
「いえ、あなたの仕事に不備はありません。しかし先ほど異世界へ転生させた男に問題があったようです」
「というと?」
「はい、異世界へと転生中、事故があり、チート能力がなく異世界へ転生されました。つまりは無一文の社会不適合者が異世界の野に放たれたのです」
「ということは手助けか。上はどういう風に考えているんだ」
上は運命を決めるメンバーの総称だ。ロン毛は何人いるか、誰がメンバ―なのかも知らない。書類で彼らと連絡を取り、それの通りに事をこなす。今までそうやって俺たちは成り立っていた。
「まだ決めていないようです。ただ書類が一枚だけ」
「そうか、それにはなんて書いてあったんだ」
「一言、手助けするかはお前が見極めろと」
「俺がか?」
そうして渡された書類には本当に殴り書きのような汚い字で「ロン毛が現地に行って見極めろ」と書いてあった。
「上は何を考えているんだ?」
こんなことは初めてだった。今までは事細かく詳細が書かれているのにもかかわらず、今回はこの文だけ。それが通常ではなく以上であることは明白だった。
「分かりません。ただ急ぎの仕事ではあるようなので、すぐに向かうようにお願いいたします」
「わかった、転送装置のところへ行くよ」
休む間もなく、その紙を受け取り、詳細な情報を確認する。場所は異世界、向こうはまだ昼のようだ。メガネと離れ転送装置の部屋へ向かう。
様々な異世界が物語の中ではあるが、ここでは一つしか存在しない。いやまだ関与できないといったほうが正しい。今いる場所が俺たちの世界だとするならば、向こうはファンタジーのための世界だ。現実で成しえないこと、それができるのが向こうの世界だ。最初は異世界からこちらに流れてきた人間が始めたのが、この秘密結社ディスティニーだという。それからいろいろな技術が輸入され、それが今もこの秘密結社を支えている。
それが死体隠蔽君一号であったり、そしてこの転送装置だ。転送装置を通れば異世界を行き来できる。私用で使うことはないが、今回のような仕事の際はよく使う。ロン毛も何度も異世界へ行って他人の運命を変えている。それが彼の仕事だからだ。
転送装置は、ステージが一つ、その近くにはパソコンがある。簡素な作りであるにも関わらず、機能は素晴らしい。これをいじるのはいつだってロボだ。ロボにしかいじれない。いつだって理解できないことはロボが何とかしてくれる。天才は無駄がないから天才なのだとロン毛は一人思っていた。
「じゃあ行くぞ、忘れ物はないか?」
書類を入れた鞄、帰還の時に必要なベル。これをならせば帰還がすることができる。それから戦闘の時の警棒。これも大事。そして、異世界に馴染むためのパフューム。これはこのスーツが異世界で違和感がないようにするもの。そして、携帯電話を取り出したところで、思い出す。
「今回はインカムか」
「そうですよ、インカムです」
仕事は異世界、そこには一つ問題が生じる。携帯の電波が通っていないのだ。だから専用のインカムを使う。これはメガネといつでも連絡が取れるためのものだ。それを渡すため、メガネは後から俺を追ってきてくれたようだ。
インカムを左耳に着ける。どちらに着けてもいいらしいが、ロン毛は左側のほうが好みだった。ただ自分のロン毛でインカムが隠れてしまうので実質的には見た目の際はなかった。
そしてマイクの調整をする。「あー」と声を出すと、メガネがグーサインを出した。どうやら問題はなようだ。
「ありがとう」と一言、礼を言うと再び持ち物を確認する。スーツも問題がないようだ。異世界の身体能力のダメージをもたってもスーツの部分ならある程度大丈夫だ。そういう繊維が使われているそうだが、これもロボが作った。
「大丈夫だ、ロボ。始めてくれ」
ロボはキーボードに何か打ち込むと異世界転送が始まる。転送はすぐだが、激しく揺れる感覚がする。この改善をロボに求めているが一向に改善してくれない。ロン毛はどうしてもと言っても「そんな無駄なことしない」と相手にされなかった。
「おえ」
実際に吐いたわけではないが、この吐きそうな気持はどうにかならないものだろうか。
ロン毛は気が付けば異世界にいた。ロン毛はいつも目をかっと見開き、現実と異世界の間を見ようとするが、それに成功したことはない。それほどの一瞬、一回のまばたきの間に世界が変わるのだから、マジシャンもびっくりの早業である。
「聞こえますか。ミスターロン毛」
「はい、聞こえます。これから目的地まで向かいます。体も問題ありません」
「わかりました。引き続きサポートします」
部屋の一室だ。ここは本部が用意した場所で、王都の中にある。ここは何か特別な力で守られているので絶対に本部の関係者しか入ることができない。ゲームの無駄に作られた開かない場所はこのために存在するといっても過言ではない。
コーヒーを淹れ、書類を確認する。ここには現実にあるものと、異世界にあるものが入り混じる。カップは異世界の物だが、コーヒーは現実のもの。ロン毛自身が置いてくれと頼んだものだ。水も少し違うらしいがロン毛にはそれが分からない。ただ異世界の水で入れる現実のインスタントのコーヒーはこの仕事の特権である気がしたのだ。
書類には、異世界の情勢が書かれていて、ロン毛自身が異世界送りにした男が今どこにいるのかが書かれている。どうやら突飛な場所に転生したようだ。今はエルフの森にいるようで、そこに三日も留まっているようだ。移動する気配がないことから、何か問題があったように見える。詳細な情報はないがそこはロン毛自身で、今後どうするかの判断をするべきだとロン毛は考えていた。
人間はエルフが好きだ。単純に美人で、知的で、温和なところだろうが、それ以外に彼女たちが人間を好きになるのはきっと、人間本人がエルフのことが好きだからだろう。好意を向けられればそれに答えたくなる言うものだ。それはどんな生物でも、どんな人種でもきっと変わりはないはずだ。
「俺もお前のこと、好きだぜ」
「あたりまえだろ、俺も好きだ」
「そうだよな!俺を好きでなくて誰が俺を好きになってくれるというんだ」
「今日も元気にやっていこうぜ」
「あぁ、当然だ」
一人芝居を終え、インカムのマイクが入っていなかったかを思い出し、確認するが大丈夫だったようだ。
エルフの森は王都から離れた森の奥地だ。この王都ではめったにその森へ行く人物がいない。それもエルフの森がまだ世間に広まっていない秘密の場所だからだ。
「あれ、久々にするかー、やだなー」
「仕方がないだろ。頑張っていこうぜ」
「あぁ主人公を正しい物語へ導かないとな」
いかがでしたか?私はいつも物語を考えながら生活しています。今の生活はお金はないものの楽しいです。アドバイスがあればぜひ教えてください。それを参考に今後も頑張りたいです。よろしくお願いします。
ついでに評価と宣伝と感想をお待ちしております。