紅月-9
明けましておめでとうございます。
少し時間が空きましたが、今年もよろしくお願いいたします。
翌日の放課後、いつものように更衣室で着替えて部室に元気良く入ると、緊迫した空気に由起子は口を噤んだ。どうしたのかと様子を伺うと、青木ら三人が床に正座させられ、その向こうに秋葉と二人の男子が立って由起子を見つめていた。
「こいつか?」
一人の男子の言葉に、青木たちは頷いた。
「あ、あの…」
由起子は恐る恐る訊ねた。
「部長の吉村さん…ですか?」
「あぁ、俺が吉村だ」
「はじめまして、あたし、新入生の緑川由起子といいます。入部希望です。よろしくお願いします」
吉村は鼻で笑うと、呆れたように言った。
「入部…希望…ね?女で、何ができるんだ」
「あ、あたし、野球得意なんです。ポジションは、一応、ピッチャー希望です」
「ハハ。呆れたバカだな。女なんか、投げさせりゃ、恥だよ」
「え……?」
「それより、マネージャーとして、俺達の役に立ってもらう方がいいよな」
青木たちに同意を求めるように吉村は言った。青木たちはうなだれて反応を見せなかったが、秋葉はニヤニヤして眺めていた。
「おい、こっち来いよ」
吉村は青木たちをどかせて手招きした。由起子は招かれるままに近づいた。青木も黒田も川村も、蒼白な心配そうな表情を浮かべていた。その表情に戸惑いながら、吉村の前に立った。由起子よりずっと背の高い吉村は見下ろすように由起子を見た。ニヤニヤ薄笑いを浮かべた吉村は、やたらと煙草臭かった。