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グリーンスクール - 紅月  作者: 辻澤 あきら
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紅月-5

 入学式の雰囲気からおかしかった、って言ったら信じる?

 あたしたちが体育館に入っていくのを上級生がにやにやしながら眺めているの。品定めするかのようにね。入学式は一応普通に終わったわ。だけど、そのすぐ後、壇上に、不良っていうのかな、ツッパリみたいなのが上がってきたの。それからマイクを取って、叫ぶのよ。入学おめでとう、なんてね。先生たちはやめさせようとするんだけど、あんまり大勢だから抑えきれなくてね、そのまま不良たちの挨拶が始まるのよ。

 ―――市立でしょ。

 そうよ。普通の学校。結局、不良生徒の力が強くなり過ぎて、先生の力じゃ抑えきれなくなっていたのね。そんな時代にあたしは入学したの。

 すごいのはその後で、体育館を出て教室に戻ろうとしたら、その途中で声が掛かるのよ。クラブの勧誘くらいならまだいいんだけど、不良グループの勧誘だったり、ナンパだったり。あたしたちは唖然としながら教室に戻ったわ。

 教室に戻ってホームルームが始まったら間もなく、上級生が入ってきて何だかんだとわめいて出ていくのよ。先生も怒鳴るんだけど全然抑えられないのよね。ちょうどマスコミで学校の体罰が問題になってる時期だったから、先生も強く出れなかったのよね。最近はそんなこともないわね。あたしは体罰は必要だと思ってるし、マスコミも昔より大人になったから、ちょっとしたことで取り上げたりはしなくなったけど、あの頃はまだまだそういう意識が未熟な時期だったのね。だから、不良のやりたい放題。

 ―――すごいとこだっんたんだね。

 上岡だけじゃなかったみたいよ。城西も城南も随分荒れていたみたいよ。だから、両親は私立に入れたかったみたいだけど、あたし、ちょっと偏屈だったのね。今もそうかもしれないけど。

 ―――怖くなかった?

 怖かったわよ。だけど、あたし、お兄ちゃんたちと一緒に柔道と空手習ってたから、少しくらいチンピラなら大丈夫だって思ってた。一対一なら負けないなんていう意識もあったわ。そういう点では、生意気な新入生だったのね、きっと。

 だから、平気な顔して野球部に入ろうとしたのよ。女の子たちは怖がってて、いつもグループで行動しようって結束を固めてたのに、あたし、じゃあ、なんて言ってひとりでうろうろしてたの。それで校内歩き回って、って言うと不思議に思うかもしれないけど、クラブボックスのある場所なんてチンピラの吹き溜まりみたいなとこでね、あっちこっちでたむろして煙草吸ってる連中がいるような状態だったの。そんな中、平気な顔して歩き回って野球部の部室を見つけたの。

 元気良く部室をノックして、ドアを開けると、とんでもないツッパリ連中が睨んできたの。一瞬引いたけど、こんなのでも先輩だと思いなおして、挨拶をしたの。


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