表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グリーンスクール - 紅月  作者: 辻澤 あきら
38/38

紅月-最終話


          *


 「風が冷たくなってきたわね」

由起子のその声はいつもの声だった。少しハスキーな、それでいてよく通る声が、重苦しい雰囲気を一新した。

「ごめんね、こんな話聞かせて」

微笑みながらそう言う由起子にイチローは微笑みを返すことができた。

「んん。オレ、嬉しいよ。こんなこと、真剣に、オレなんかに話してくれて」

「ふふ」由起子は鼻に皺を寄せながら笑んだ。

「あたしはこう考えているの。あたしは、学校ではあなたたちの先生かもしれない。あなたはあたしの生徒、ね。でも、学校と関係のないところでは、人間として付き合って行きたいの。人間として対等に、相手を尊重しながら、付き合って行きたい。そう考えているの。だから、今日こうしてイチロー君に、あたしの恥、聞いてもらえて、本当によかったって思ってる」

真っ正面からきっぱりとそう言われたイチローは照れてしまい、困ってしまった。

「でも……、オレ、誰かに話すかもしれないよ。中川なんかに、話したら、噂になっちゃうかもしれないよ」

「あたしは、あなたを…、んん、あなたたちを、信じてる。人として。何よりも人間として信じてる」

強く言い切った由起子にイチローは見とれてしまった。ほんの一時間ほどで語られたおはなしは、イチローには想像もつかない世界だった。そんな苦悩の人生の一面をさらけ出しながら、いまこうして明るく微笑んでいる由起子に、ただ見とれるしかなかった。

 ベンチには夕暮れの陽射しが差し込めていた。オレンジの陽射しは、穏やかな陰影を浮かび上がらせ、その中で由起子は映えている。いつかは自分もこんな大人になることができるだろうか、イチローはぼんやりとそう考えていた。

「ねぇ、イチロー君。何か食べて帰ろうか?付き合ってくれたお礼に奢っちゃう」

「え、ホント?」

「ホント、ホント。何でもいいわよ」

やったぁ、と叫ぶイチローを見つめながら、由起子の笑顔は華やいでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ