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紅月-32
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いつもより早く起きた長崎は、やたらと目覚めがよかった。さっと起き出して窓を開けると陽射しが柔らかで、例年のこの時期より随分暖かだった。今朝は、ちょっとトレーニングでもしようか、と着替えた。
寮の扉を開けて、外に出ると朝もやが太陽を覆っている。ソフトフォーカスのかかった太陽はエンジに輝いている。
―――ん、いい天気だ。
人気のない校内を抜けてグラウンドに出ると、誰もいないグラウンドはいつもより広く見える。それに、斜めから射している光のせいでいつもと随分雰囲気が違う。得したな、と思って見回すとバックネットに何かがある。それはネットの影になっていてはっきりとは見えなかった。長崎は、ゆっくりとそこに近づいた。そして、それが何かわかったときには駆け出していた。
長崎の目の前のバックネットには、裸のまま吊るされた由起子がいた。
* * *
イチロー君は、もうわかる年頃なのかしら……?
―――そ、それって…?
そう、あたしは、薬を盛られて、犯されたの。
―――ん、…ん。
彼は、暴走族のひとりだったの。ファントム・レディを疎ましく思っていた連中の刺客として送られてきたの……。
―――全部、芝居だったの…?
そう…だった、みたいね……。




