紅月-31
細いカーブを登ると、開けた丘にバイクは止まった。由起子は、バイクを降り、ヘルメットを取った。高台の丘は田園風景の真ん中に立っている立山高校を一望できた。風が由起子ののびた髪をくすぐる。傾きかけた陽射しは、由起子の顔を紅潮させた。由起子は風と陽の感触を楽しみながら、その風景を眺めた。
「結構、きれいだろ」
「ん。新設だっけ?」
「うん。五年。僕が三期生」
「あたしも、三期生」
二人は顔を見合わせながら笑った。
泉央一号線を失踪したバイクは、深山駅の近くで南に折れ、小さな喫茶店の前に止まった。由起子は不思議な気分でバイクを降りた。山内はヘルメットを脱いで、バイクのエンジンを止めた。
「ここ?」
由起子もヘルメットを取って訊くと、山内はにこりと微笑みながら答えた。
「うん、もうここまで帰ってきたし、ちょっとくらいいいだろ?」
「うん」
慣れた様子で山内は店に入った。店内はこぎれいな雰囲気で、小さいながら安心できる造りだった。
「いいお店ね」
「うん。時々、ツーリングの途中に寄るんだ。今日はまだ帰るのももったいないし、由起子ちゃんに見せて上げようと思ったんだ」
由起子は少し顔を赤らめ、頷きながら店内を見回した。
静かな音楽が流れている店内には、コーヒーの香りが漂っていて、冷えた由起子の体が温まるにつれてしみ込んでくるようだった。人の少ない店内は、こうして山内と二人でいても何も気恥ずかしくない。ふと、前を見ると山内がじっと由起子を見つめていた。その視線に気づいて戸惑ってしまった。
「ど、どうしたの?」
「んん。由起子ちゃんって、こうして見てるとスポーツギャルって感じじゃないなって思ったんだ。ほら、スポーツ選手って結構骨太だけど、由起子ちゃんってどことなく華奢だから」
「そ、そんなことないのよ。もう、脚なんか太くて、筋肉が浮いて見えてるから短いスカートなんかはけないの」
「へぇ~?そうなんだ。でも、見てみたいな、由起子ちゃんのミニスカート」
由起子は照れながらコーヒーを口にした。暖かな液体が喉を通って、体が熱くなるのを感じると、次第に眠くなってきた。




