紅月-27
でも、甲子園に出てから、目標がなくなったような気がしたの……。
―――どうして?二年のときだったら、次の年もあるじゃない?
ん…、あたしは、どうせ出れないんだし、目標のお兄ちゃんも、もういないし…、って思ったらなんとなくやる気がなくなってね。あたし、ちょっと調子に乗って不良相手にいきがってたの。
―――それって、ファントム・レディ?
まぁね。あれだけ、隠しておいて、いまさらというのが正直なとこだけど、しばらく学校さぼってね、あちこち旅してたの。
―――旅?
ん。ぶらぶらと、日本全国あちこち回って、それで気の向いた駅で降りて、色んな街を歩いて、適当に学校にもぐり込んで、野球やったりケンカしたり。
ふらふらしてたのよ、信じられる?
―――へぇ~、知らなかった。
そんなことしてたから、未来ちゃんのやってることが他人事に思えなかったのよねぇ。ま、あの子は目的があったけど。
でも、その間よ。二代目ファントム・レディの名前が知れ渡ったのは。
あちこちで好き勝手やって、去り際にファントム・レディでした、なんて、安物のドラマみたいなことしててね。そんなことしてるうちに、全国的に名前が売れちゃったの。
初代みたいに全国制覇しないのか、と訊かれたこともあったわ。でも、そんなの面白いとは思わなかった。ただ、色んな人と会って、好きなことしてるのが、楽しかった。勝手気ままな、無為なことが、面白いと思う時代だったのね。
―――俺も面白いと思うよ、そういうのって。
楽しかったわ。ホントに。
でも、帰ってきたら、ファントム・レディの名前が有名になっててね、由起子さん、活躍してたんだね、なんて言われて、あらびっくり。
―――驚いたって、先生が自分で広めたんだろ。
まぁね。




