紅月-17
―――……ホントなの?
―――本当よ。その時は信じられなかった。強いといっても、たかが女じゃない。力もない、身長もない、体重もない。そんな女の子が自分より大きな男の体を宙に飛ばすほどのパンチを繰り出せるなんて、信じられなかった。ただ、そこに書かれている描写に気になることろがあったの。…螺旋回転させるってわかる?
―――捩じるの。こう?
そうね。でも、そんな状態でパンチなんて繰り出せない。じゃあ、どうやって。と思ったとき思い出したの。中国拳法に発經という秘伝がある。それは、わずか数センチの間合いから繰り出す突き技ではあるものの、相手を遙か突き飛ばすことができるという。なぜそんな力が生まれるのか。それは、全身を螺旋回転させその捩じれのエネルギーを相手に与えるからだというの。
―――『ファントム』は、発經?
そう思ったわ。それから、あたしは調べたの。中国拳法の本を見て、空手の本を読んで。空手の師範にも話を聞いたわ。『ファントム』を見たことのある人を探し出して、『ファントム』を再現しようと思ったわ。
―――できたの…、できたんだよね。だから、先生は二代目のファントム・レディになったんだよね。
あたしは、考えただけ。そうして編み出したそれは、初代のそれとは違うかったかもしれない。けども、なんとかそれらしいものを再現できるようになった……。初めは、アッパー・カットだったわ。相手の右ストレートをかいくぐって食らわせる左アッパー。それを改良して、アンダースロー投法のように腕を振って、そのときに螺旋回転を加えて。こう言うと、すごくケンカしてたみたいだけど、実際はほとんどケンカしたことなんかなかったのよ。家のサンドバッグ相手にシュミレートしてただけ。ほんの護身術のつもりだった。万が一に備えて。
―――でも、使うことになったんでしょ。
そう。それは、やっぱり、あんなグループに入ったからだったわ。




