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ユニークスキル『パソコン』で幼馴染みと魔王討伐

作者: 紅狐


 俺たちはついに魔王の座までたどり着いた。

思えばここまで長く、つらい旅でもあった。


「ついにここまで来たか……」


 世界樹の光を受け、山神の石で作られた聖剣、ロンジクール。

神海の底より生み出された聖盾、リアルフォンス。


 ついに最後の決戦が始まる。


「インテリ何してるの? 早く倒して帰るわよ」


 声をかけてきた魔導士のエディエム。

彼女との付き合いも長く、タッグを組んだら恐らく俺達に勝てるものはいない。


「ようだな。早く帰って酒でも飲むか」


 魔王の座は大きく黒い扉が立ちはだかっている。

俺は両手で扉を開け、中に入っていった。


 真っ暗な部屋。

少しだけ冷たい風を感じる。


――くるっっ


「お前たちが侵入者か? ここまでよくたどり着いたな。ま、帰りは死体になるがな!」


 甲高い声が響いてきた。

これが、魔王。俺たちの最後の敵か!


「お前を倒して、世界に平和を!」

「はっ! 何が平和だ! 平和を乱しているのは人間どもじゃないか! とりあえず死ね! 『ペンティウム』!」


 暗かった部屋に灯りがともり、一気に視界が広がる。


 玉座には前には黒い魔装で身を固めた魔王が立っている。

そして、魔王の手のひらがひかりはじめ、紫色の炎が俺達に向かって放たれた。


「なによっ! 少しくらい話をさせなさいよ! 『レークーファン』!」


 エディエムも負けじと応戦する。

彼女の背後からとてつもない風が吹き荒れ、魔王の放った炎の軌道をずらす。


――ドカァァァン!


 放たれた炎は俺たちをかすめ、後方で爆発する。


「ちっ。直撃すれば、あっさり死ねたものを……。楽には死ねぬぞ?」


 魔王が玉座からゆっくりと俺達に向かって歩き始めた。


「エディエム! 時間を稼いでくれ!」

「なに? もうやるの?」

「出し惜しみしてもしょうがないだろ!」


 彼女は俺の前に立ち、詠唱を始める。

それと同時に俺も最大の一撃をお見舞いするために、準備に入る。

エディエム、頼むぞ。


――バイオスオン!

――オーバークロック!

――メモリ開放!


 体がきしみ始める。

体が、熱い……。


「いくわよ! 『スーレーシキ・レーキャク!』 さぁ、インテリ体の芯まで冷えなさい!」


 エディエムの補助魔法を受け、俺の熱くなった体は徐々に冷えていく。

まだいける。


「な、なんだその魔法は? 聞いたことがないぞ?」

「これはインテリの力よ! あんたの相手はしばらく私がしてあげる! 感謝しなさい!」


 再びエディエムが詠唱を始めた。


「私の名において、召喚するわよ! さぁ、命を吹き込まれし私の創作たちよ! 魔王を倒しなさい! 『タブレート』『タチペーン』」


 エディエムの手に黒い板とペンが召喚される。


「さぁ、お絵かきの時間よ!」


 エディエムの手にある黒い板にペンで命を吹き込む。

描かれた創作物は現実のものとなり、召喚される。


「できた! まずは一体目! あなたの名前は『ミコナス』! 魔王を浄化してあげなさい!」


 エディエムの目の前に現れた、不思議な服を着た女の子。

手には棒を追っており、なんとなく神道系なイメージがある。


「こんにちは! お、お祓いしちゃいますね!」


 あんまり強くなさそうだけど、時間は稼げる。

俺は冷えた体に再度スキルを発動させていく。


――クロックアップ!

――デバイス起動!

――最適化実行!

――デフラーグ!

――デバイス再認識!

――ブーストオン!


 全身が痛くなってきた。

だが、一撃で致命傷を負わせなければ、きっと俺たちは負ける。

まだだ、まだ……。


「さぁ、次行くわよ!」


 再びペンを走らせるエディエム。


「よし、数で勝負! アスキアートでカキカキ! あなたたちは『モナモナー!』」


 現れたのは床が埋め尽くされるくらいの何か。

動物か? モンスターなのか? 変な顔をしたものが大量発生している。


「さぁ、魔王をやっつけて!」

「モナモナモナモナモナモナモナモナモナモナ」


 見ていると気持ち悪くなってくる。

なにあの数、どうやって召喚したの?


「な、なんだこの生物はぁ!」


 埋め尽くされ始めた魔王は、体の半分がモナモナーに埋まっている。


「続いてはー! 私の力作! 魔法少女怪力君!」


 魔法なのか物理なのか。少女なのか少年なのかもわからない。


「レッツカキカキ! さぁ、魔王私の創作魂と勝負よ! あなたの名前は『セラムン』! 私に変わって魔王にお仕置きして!」


 目の前に現れたのは多分女の子。

異国の服を着ており、髪が長く見た感じおしとやかに見える。


「あなたが、魔王? では、私にお仕置きされなさい!」


 どこから持ってきたのか手には黒い鞭とろうそくを持っている。

そして、魔王に向かってろうそくを投げつけた。


「あつぅ! な、何をする!」

「魔王さん、あなたは悪い子ね。悪い子にはお仕置きよ!」


――ぱちーーーん


 振りかざした鞭の音が響く。

モナモナーで埋め尽くされ、頭をお祓い棒でずっと攻撃されている魔王。

そして、鞭で打たれ続けるその姿。もはや魔王とは思えなくなってきた。


 っと、俺もそろそろいいかな?

痛みに耐えながらなんとか準備が終わった。


「エディエム! 待たせたな!」

「遅いわよ! いつまで待たせるの!」


 俺は聖剣を両手で持ち、魔王に向かって走り始める。

走りながら剣を振りかざし、斬撃を飛ばす!


「くらえ! 『ワイハイ・エービージー』!!」


 早さと威力の違う斬撃が魔王を襲う。


「甘いわ! 『ファイヤーウォール』!」


 すべての斬撃がはじかれた。

俺が、甘かったのか!

それでも俺の走りは止まらない。


――ストレージオン!

――召喚 ロジテーク!


 現れたのはもう一本の剣。

聖剣を手に入れるまでずっと使っていた剣だ。

これも同じ世界樹の光を受けた世界に一本しかない剣。


 俺は両手に剣を持ち、魔王に飛び掛かる。

目下、白黒のモナモナーやミコナス、セラムンがいる。

もしかしたら巻き添えになってしまうかもしれない。


 が、まぁいいか。

ここまで来たんだまとめてやってしまえ!


「行くぞ魔王! 食らいやがれ! 『エフゴ・アタァァァァァク』!!」


 俺は両手に握っている剣で魔王を切りつける。


――スパァン

――スパァン、スパァン

――スパァン、スパァン、スパァン


 その勢いは止まらない。


クロックアップ、オーバークロック、ブースト。

やれるだけのことはやった。すべての力をここで使い切る!


 体が、あつい。

燃えるように体が熱くなっていくのがわかる。


 ここで、燃える切るのか?

灰になってしまうのか!


「インテリ! まだまだいけるわよね! 『ダブルファン!』『オーバータイフーン!』『ホウネツハイシート』。うぐぅ、ま、まだ冷やさないと……」


 エディエムのうめき声が聞こえてきた。

魔力が、尽きたのか……。


「ここまで来たのよ! 最後位、やってやるわよ! 『ブリザード・コアレイキャク』『メモリホウネツパネ、ル』」


 そまで言い切り、エディエムは地面に倒れた。


「イ、インテリ……。一緒に帰ろう、私達の村に……」


 気を失ったのか、召喚されていた全ての者たちが消えてしまった。

ここには俺と魔王しかいない。


「ここで、決着をつける! 『エフゴアタック・ダブル!』」

「な、なぁにぃぃぃ! そ、そこまで早くなるのか!」

「これで、終わりだ! ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス」


 両手に握った剣で魔王を滅多切り。

ここで全ての力を出し切る!


「まだ、私は倒れるわけにはいかない! 世界をウインドスの邪神から守るためにも! 私は紅の神、アプール様をこの世界にぃぃぃぃ! ここで、倒れるわけにはいかない!」


 魔王が何かを始めようとしている。

大技が来るのか……。


 この手段しかないのか……。

俺は最後の手段、最後の切り札を出さなければいけない局面になってしまった。

恐らく魔王も同じことを考えているはず。


「これが、最後だ。運が良ければ来世で会おうぞ」

「何を言う。俺は生き残る!」


 魔王を目が合った。


「さらばだ! 『リーストア!』 すべてを無に帰す!」

「俺は生き残る! 『リーカバリ!』 すべてをもとに戻す!」


 光が溢れる中。

俺と魔王はお互いに目を交差させながら、光の渦に取り込まれていった。



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