第二章 第1話 見た目じゃないな
腐食の遺跡を攻略後の、朝にクロスが一冊の本を出してきた。
「なんだ、その本は?」
『コレは、アイス用の魔導書じゃ』
「私、ですか?」
突然、何を言ってるんだ? 魔導書はどこから出てきたんだ?
オレとアイスが意味が分からず。謎のまま、パンにベーコンと卵焼きを乗せた、朝飯を食べていた。
『実はのう、この魔導書は、左腕乃浸食者なんじゃよ』
「グハッ! の、喉が! パ、パンが!」
「ユウ! ミルクですよ」
アイスから、ミルクをもらい、一気に飲み干す。
危なかった。こんな事で、死んだら笑い者だ。
「クロス! 殺す気か!」
左腕乃浸食者は、かつてクロスと共に神と戦った神官で、グラディウス・アメリアさんで、アメリア王国を作った人らしい。
神の呪いにより、左腕乃浸食者になってしまい。
苦しみは続いたが、死ぬ事もできず、呪いにより生きている者を憎むようになったようだ。
最後の望みは、呪いからの解放で、オレが呪いを解いたから協力してくれるそうだ。
「なるほど、クロスにはオレ、グラディウスさんにはアイスって事か?」
『グラディウスは強いぞ。サポートと回復の天才じゃからな。まっ、ワシと違い、魔導書の状態だと、所有者のサポートしか出来んがな』
「逆に何で喋ったり色々出来るんだよ」
『それはな、ワシが超超天才の魔道士だからじゃ』
どんだけテングなんだよ。高笑いするクロスにアイスが申し訳なさそうに話す。
「いいんですか? ユウから聞いた話だと、大切な方ではないんですか」
『良いのじゃよ。アイスが使ってくれたら、コイツも喜ぶ……どうしても、礼がしたいらしいからのう』
数千年に渡る苦しみからの解放。どれだけ苦しかったのだろうか……クロスに聞いて、グラディウスさんの気持ちの一端でも、理解できるのだろうか。
「わかりました。よろしくお願いします、グラディウスさん!」
真っ白な魔導書に、挨拶をするアイスに、クロスが言った。
『その魔導書は、元々ワシが作った物じゃ。"煙霧の白"それが魔導書の名前じゃ』
「どうゆう事だ?」
クロスが神と戦う前に、仲間達に魔導書を一冊ずつ作成した。所有者の力を数倍にする程の強力な魔導書を、全部で11冊作ったようだ。
「その一冊が、"煙霧の白“か……」
「そういえば、よかったんですか? アメリア王国に呼ばれたのに無視して……」
「いいんだよ。政治に利用されるだけだぞ」
アイスが心配していたが、英雄とか言い出してから、プロパガンダに利用されるのはごめんだ。
『ユウは、そうゆうのは嫌いか?』
「自由に旅をしたい……クロスの願いを叶えながら、アイスと美味い物を食べて、色んな所を見て回るのは、駄目かな?」
「ダメじゃないです! そうですね、愛する2人の旅ですもんね」
『そうか……マリアと同じ事を言うのだな』
クロスは、悲しそうに呟くとマリアさんの話をしてくれた。
マリアは、武道家でクロスとは意見の食い違いから良く喧嘩をしていたが、自分にない所と自由奔放な所に惹かれて、付き合うようになった。
神との戦いの後に、世界中を2人で自由に旅をしようと約束をしていたそうだ。
『何の因果かのう、まさか、ひ孫とあの約束を果たすとは……』
「クロちゃん、ユウのお爺さんなんですか?」
驚いているアイス。
「クロスは、ひい爺ちゃんだぞ? 前に、言わなかったか?」
「言ってないですよ! アイスです! ユウとお付き合いをしています」
『とっくに、知っとるわい。落ち着くんじゃ』
「私、いつの間にか、家族公認の仲だったんですね。デェへへへ……」
アイスは、完全に顔が溶けていた。
朝食後に、次の国への道を行く道中に山賊が馬車を襲っていた。
「お前達、金目のもん置いて行け!」
ザ・山賊みたいな奴等が、オレとアイスに気づき叫んでいた。
「前もあったな……治安、悪過ぎるだろ」
「確か、ここ傭兵の国スペルは、1年中戦争をしていて、戦争中の他国に参戦するような国なんですよ。だから、傭兵崩れが悪さをするんです」
『ようは、雑魚じゃな』
「なるほど、なるほど。お前達いいのか? オレ達を襲って?」
まったく怖がらないオレ達に、疑問を持ったのか山賊達が、ざわめき始める。
「ま、まずいぞ。アイツら、Aランクの冒険者だぞ!」
冒険者用のプレートに気づいた山賊が、馬車から人質を取る為に、馬車をこじ開けると、真っ白な髪の女の子。真っ黒な髪の女の子。同じ顔をした双子の子供のシスターを連れて来た。
「子供を人質とはな……無事に帰れると思うなよ!」
切れかけていたせいか、一瞬の出来事に理解出来なかった。
双子のシスターが、両袖から折り畳み式の鉄棒を取り出し、捕まえていた山賊を殴り倒し、周りの山賊を襲い始めていた。
読んでいただきありがとうございます。
・面白かった
・続きが気になる
と思ったら下にある「☆☆☆☆☆」の評価と、ブックマークの登録をしてくれると、すごく励みになります。