表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私のお耳の恋人

作者: 馬波良 匠狼

 短編6作品目です!

 ラジオとの出会いはいつ頃だっただろうか。

 少なくとも小学生の時には母が好きで時折地元のFMをつけていたから、その頃からの付き合いではある。

 当時流れていたのは二人組の男性ユニットの元気な曲だったり、三人組(現二人組)のこれまた男性ユニットの哀愁染みた曲だったりと、中々小学生が聴くような曲じゃない曲を聴いていた想い出だ。

 と言っても所詮は子供なので、テレビの方が視覚で訴えるためか、そっちに傾倒していたのは否めない。故に、ラジオはあまり深く聞いていなかったのは確かである。


 その認識が切り替わるのは、高校時代だ。

 遡ること受験の時。

 受験勉強の醍醐味は、深夜に徹夜で勉強することである。違うと言われれば、ぐうの音は出ないが、私はよく深夜に勉強していた。

 そして私は静寂の中で勉強をすると、違うことを考えるためあまり集中できない上に、眠気が襲ってくるので全く駄目だ。

 一方、気晴らしと思いテレビをつけていると当然ながら視覚がそっちに移るため、それでも集中できないのは間違いなかった。

 どうしようかと困っていた時に母から「ラジオをつけなさいラジオを」と半ば強制されるように、正直に言えば仕方なくラジオをつけることにした。

 最初は煩わしく、静かな曲や深夜のテンションに辟易していた。

 しかし、不思議と集中力は上がり、勉強は捗る。

 おかげかは分からないが志望の高校へ無事合格し、暫くはラジオ生活から離れてしまう……。

 と思ったが、入学してから私はラジオにはまり出した。

 夜も遅くまで勉強することがますます増え、私の耳の恋人はすっかりラジオとなってしまったのだ。

 特にFMラジオから流れる、あれだけ煩わしかった静かな曲や深夜テンションでしゃべるDJの声が面白く感じ、私のラジオ街道はじわりじわりと進行していく。

 夕方も早めに帰ることが多くなったため、夕方のラジオも聞き出し、ついにはラジオの醍醐味である”投稿”をするようにもなった。

 更に英語の勉強にもラジオを用いていたことにより、ラジオは私の生活の一部と言えるようになるまで溶け込んでいく。

 ここに一人のラジラーが誕生した瞬間だ。


 ただ、この生活は長くは続かない。

 地元を離れた大学進学だ。

 その場所のFMも気にはなっていたが、残念ながらフリーのネットラジオには入っておらず、ラジオを買うという選択肢がなかったため、結果暇なときは某動画投稿サイトでアニメを見ることにはまった。

 かと言ってそれでは勉強も執筆もできないので、その時はPCにCDを取り込んだ曲を聞いていたが、単調なため物足りなさを感じていた。

 一応公共放送のラジオはいつでも聞くことができたため、時折はそれを聞いていたが、軽快なしゃべりは少ないため、やはり物足りない。夜の安眠には最高ではあったが……。

 お金はないのでネットラジオのプレミアム会員になることもできず、私の生活の一部であったラジオは遠ざかった。


 だが遂に、私を更なるヘビーユーザーにする出来事が起きた。

 地元への就職だ。

 帰ってきた私は実家からかなり離れた場所へ就職することとなり、その場所でのメディアをどうするか考えた。

 テレビを買うのはちょっと高いし、ネットもまだ引けてない。

 そこで私は迷わずラジオを買うことにした。

 2千円もかからず小型のラジオを買うことができた私は、帰宅するたびにスイッチをつけ、車に乗るたびに音量を上げて、4年間聞けなかった鬱憤を全て浄化するように、ラジオにはまる。

 ラジオばかり聞いており、家にテレビを持っていないことを職場で話すと「時代錯誤」だの「流行に遅れてる」だのと言われたが、ラジオから流れる曲はどれも最新で、DJが話す内容も後れを取ることはなく、寧ろ私は次に流行る楽曲も先取りできていたように感じた。

 投稿は中々できなかったが、地元のFMを聴けるだけで私は、新鮮な空気を肺に送り込むような清々しい気持ちになった。


 今でもその時買ったラジオを東京の自宅で聞いている。

 ちょっとずつガタは来ているが、私の耳を癒し、活気づけ、時に慰めてくれる、最高のアイテムだ。

 東京のFM放送も中々面白いが、地元はそれに負けてないと自負できるぐらい面白い番組ばかりがそろっている。

 いつかはネットラジオのプレミアム会員になって、地元でしか聞けない番組を聴けるようにするのが今の目標だ。

 ラジオを通して聴く世界は、海外の最新楽曲やこれから芽が出て来そうなアーティスト、私の知らなかった楽曲、ラジオDJ達やゲストの日常の話など鮮やかな色彩に彩られ、虚無のような現実を壊してくれる。

 コンテンツとしてのラジオは確かに古い。

 だが、流れる音楽や会話はいつも時代の一つ先を行っている感じだ。

 この話を書きながらも、やはり私はラジオをつけ耳を傾けている。

 もう私は、ラジオ無しで生きていけなくなった。

 これからも耳から入ってくる音を、頭で想像しながら聴くこのコンテンツを愛し続けるだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ