私はまだまだ子供だから!!
お盆企画として書きました。最後まで読んでいただければ嬉しいですm(__)m
「ねえ月菜、今年のお盆に久しぶりに月菜もおばあちゃんの家に帰らない?
月菜ももう6年生なんだし」
「えぇ~」
私は嫌そうな顔をしながら否定した。
普通の小学6年生といえば、帰省をすることは楽しみなことだろう。
しかし、私は母方の家に帰省するのは嫌だった。
その理由は私が小学校低学年の時にさかのぼる。
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「ねえ、お母さん! 月菜、もうおねしょ少なくなったし、小学生のおねーさんだからおむつしなくてもいいよね!」
「そうね。でも車での移動は結構時間がかかるけど大丈夫?」
私は大きく頷きママの運転する車に乗り込んだ。
それからは途中でサービスエリアによってお昼ご飯を食べたりして、徐々に目的地へと近づいていく。もちろん、一度もトイレに行かずに何時間も移動するというのは無理があるので、私はサービスエリアによるたびにちゃんとトイレに行った。
一度、サービスエリアまで我慢できるか危うい時があり、ちょろっとハート柄のパンツをおしっこで濡らしてしまったが、おもらしと呼ぶほどではない。
しかし、問題はゴールを直前にして起こる。
二つ目のサービスエリアを後にして、残りはおばあちゃんの家まで行くだけだった。
高速道路を降りて、少しの間市街地を駆け抜けた後に車は山間部に差し掛かる。
市街地を走っているときはおしっこなんて忘れてしまえるくらい尿意は全くなかったのに、山間部に入った途端おしっこがしたくなった。
「ねえお母さん、月菜ね、おしっこしたい……」
「えっ!? 山の中だからコンビニとかないよ? ほらあと10分くらいでつくから」
ママが運転しながら驚いている中、私は小さいその手を股間に押し当てる。
我慢の辛さで息が荒くなり、視界も手元しか見ていられなくなる。
すると、車が減速し、バックするときの電子音が聞こえてきた。
私は顔を上げて窓の外を見てみると、そこにはおばあちゃんとおじいちゃんの家があった。
こ、これでやっとおトイレに行ける!
ーーがちゃっーー
車のドアのロックが解除された音を聞き私は急いでドアをあける。
「おばあちゃん、おじいちゃん! おトイレどこ??」
私は股間を抑えながら、足をパタパタさせながら、いかにもおしっこを我慢しているような行動をとった。
はしたないかもしれない。だけどそうでもしないと今にもおしっこが出ちゃいそうだから。
するとおばあちゃんとおじいちゃんは少し慌てた様子で私を手招きした。
早く、おトイレに行かないと。で、でも歩けばもう出ちゃいそうな気もした。
早く、急いでとみんなの声が聞こえる。そんなこと言わないで、行きたくてもいけないの。
もうだめだった。小学一年生のまだ小さい膀胱に蓄えられていたおしっこはあふれ出し、ハート柄のパンツを突き抜けて、すこしおめかししたワンピースを濡らす。
まだ幼く細い、足を伝って地面に黄色い水たまりができていく。
はあ、おばあちゃんやおじいちゃんにいいところをもっと見せないといけないと思ったのに……
それからは持ってきていた着替えに身を包み、いかにもなお盆休みを過ごす。
夜になり、気が付くとおばあちゃんが布団を敷いてくれていて、私は少し眠たかったのですぐに寝ることにした。
もちろん、おねしょが治ったといっても少しばかりは心配なのでトイレにはちゃんと行く。
おばあちゃんの家のトイレは少し高さがあって、便器に座ってしまえば足が届かない。
膀胱にたまっていたほんの少しのおしっこがちょろろろと音を立てて流れる。
そうして私は眠りについた。
翌朝、感じたのは懐かしいおしりの感触。べっちょりと水で濡れていて、パジャマのズボンがピタッと太ももに引っ付いてくる。
徐々に意識が戻るとともに、顔が青ざめていった。
しちゃった……
久しぶりのおねしょはいつもおねしょをしていた時よりもはるかにショックなものだ。
私は隣で寝ているお母さんを起こす。
「お母さん…… おねしょしちゃった……」
「え!?」
お母さんは初めは驚いていたが、いつも通りやさしくしてくれる。
すると、朝ご飯を作っていたらしいおばあちゃんもお母さんの声を聞いてやってきた。
「あらあら、月菜ちゃんおねしょしちゃったの?」
また失態をおばあちゃんに見られてしまった。おばあちゃん、私本当ならおねしょ治ってるんだから。成長してるのに…… どうしてこうもうまくいかないの?
それから私はおばあちゃんの家にいる間は毎晩おむつをして寝た。
辛いことにも全敗だった。
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それが一年生の時の出来事である。普通ならその翌年の二年生の時にもお盆返りするはずだったのだが、おじいちゃんの突然死でお葬式などに行くことになり、おばあちゃんの家に行くということはなかったのだ。その時の心の痛みは消えることはないのだろう。初めて身近な人を失うのもつらかった。しかしそれより子供の心に残るのは、自分の母親が死を悲しんで哭いているのを見たことだろう。私がつらさを感じたのは、お母さんの悲痛な顔を見たことが関係しているのかもしれない。
そして、その翌年に私はまたおばあちゃんの家に行った。
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車が減速し、後ろ向きに停車する。今年はおばあちゃんの家までおもらしすることなく無事にたどり着けた。私たちが乗った車を見ておばあちゃんが駆けてくる。
「月菜ちゃん、おしっこは大丈夫? おもらししそうじゃない? それとも今年はおむつ履いてきたの??」
あまりにもストレートすぎる質問で、そのどれもが幼い子を相手にするような内容だった。
心も体もあの時より大人になった私にはそれが苦痛だった。
「おはよ。おばあちゃん」
私は少し怒っていたせいで冷淡に挨拶を済ませる。
後々、お母さんからおばあちゃんは心配してくれていたのにと叱られた。
なんで私が怒られないといけないの?
おばあちゃんが私を子ども扱いするからいけないんだよ。
でも、私はまだおもらしをしていない。それにおねしょは完全になおったんだからこれでおばあちゃんにいいところを見せられる!
私は心の中でガッツポーズをした。
そうして、その日の夜がやってきた。
最近はテレビを見ながら寝落ちしてしまった時でもおねしょをしなくなり、ちゃんと夜中に起きれるようになっていたが、わたしはそれでも一応トイレに行く。
私はトイレの便座に座り、二年前と同じようにちょろろろと音を立てながらおしっこをする。
今年はもう足が床から浮いているなんてことはなく、余裕で足が付いた。
ほら、私は成長してるんだから。
私は翌朝への期待も込めて眠りについた。
んっ、おしっこしたい……
私はハッと目を覚ました。うぅ、おしっこしたくなっちゃってる。おトイレ行かないと。
寝ぼけ眼をこすりながらも私はゆっくりと立ち上がる。
すると、お母さんから遺伝した貧血のせいでくらりとよろけてしまった。
私はその場にどしっとしりもちをつく。
ーーじょわっーー
だっだめ!
私は急いで両手で股間を抑えて今にもあふれ出そうなおしっこをせき止めた。
しりもちをついたせいで少しおしっこが出てしまったが、おもらしというほどにはならないように抑えられた。
よし、今のうちにおトイレ行かなきゃ。
今度は左手で股間を抑えながら、右手で壁を伝って確実に立ち上がる。
左手にあたるパジャマの布はちびってしまったおしっこで濡れていて、半径五センチほどのおしっこのシミができていた。
うぅ、シミ出来ちゃってる……
でもティッシュで拭いてもう一回寝てたらきっと乾いてるよね。
夜の静かな廊下を歩いていく。廊下を歩き、右に曲がり、トイレが見えた。
しかし、トイレの照明がついていて、さらにトイレの少し前に人影があった。
「あら、月菜ちゃんどうしたの? ってあらあら、そのシミどうしちゃったの? おねしょしちゃったの?」
「おばあちゃん…… こ、これはちが……」
言葉が出なかった。おねしょじゃなかったらお漏らしをしたということを認めているようなものだった。お茶をこぼしただなんてあからさまな嘘をついても意味がない。
「風邪ひいちゃうから、お着換えしよっか。こっちにおいで」
おばあちゃんは私が股間に当てていた左手を手に取り、着替えが入れてあるタンスのところまで連れていこうとした。
「だっだめ!」
左手による支えがなくなったことにより、抑えられていたおしっこが一気に外界を目指す。
じゅわっと一度ぬれたパンツとパジャマが温かくなる。
さっきは股の部分だけに広がっていたシミが重力でどんどんと太もも、ふくらはぎの方へと落ちていく。
パジャマ特有の薄い生地が寝起きの黄色いおしっこが吸い込んで、私の肌が見えるように生地をすかした。パジャマのズボンを伝って落ちていったおしっこが足首付近のすそからぽたぽたと流れ落ちる。
足を伝い落ちていったおしっこは茶色い木の板で作られた地面に水たまりを作った。
「月菜ちゃん! おもらししちゃったの?」
私は思わず泣いてしまった。おばあちゃんが私に話しかけなければおもらししなかったのに……
おばあちゃんのせいでおもらししちゃったんだ。普通なら間に合ったはずなのに……
私はぎゅっとこぶしを強く握りしめた。
「おばあちゃんのせいだから!! おばあちゃんのバカ!!」
私はそれだけを言ってそのままトイレに駆け込んだ。
濡れたパジャマとパンツが気持ち悪かったので私は足からもパジャマを脱ぎ去り、下半身裸になった。
一応トイレに座り、力んでみるがおしっこはもう出ない。
私はこれからどうしようかと考えながらも、とりあえずパジャマとパンツをティッシュで拭いた。
ティッシュの半分くらいを使用して水分を取った後、私はその濡れていたパンツとパジャマを再び履いた。やっぱりティッシュだけでは不完全で、微妙に湿っていた。
私はトイレの前に誰もいないか気にしながら、恐る恐るドアを開ける。
すると、トイレの前には一枚の置手紙と着替えのパジャマがあった。
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月菜ちゃんへ。
ごめんね、おばあちゃんは何をしたかわからないけど、謝るね。それと着替え置いておくからこれに着替えてね。風邪をひかないようにしてね。それと、濡れちゃったパジャマはこっそり洗濯機に入れておいてね。お母さんにはばれないように洗っておいてあげるからね。
おばあちゃんより。
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自然と涙がポロリと流れ落ちた。
なんでさ、なんで私があんなひどいこと言ったのにこんなにやさしくしてくれるの?
私は置かれていたパジャマに身を包み、濡れてしまったパジャマを洗濯機に入れた。
再び布団に戻ろうとしたときに、気づいたのだが、私が作ってしまった水たまりはきれいさっぱり消えていた。
翌朝、私はおねしょをすることはなく目を覚ました。私は隣で先に目を覚ましていたお母さんに挨拶をする。
「月菜ちゃん、今日はおねしょ、大丈夫だった?」
「うん!」
いつもの私なら、こういったことには冷たく答えていただろう。
しかし、私はおばあちゃんが昨晩のことを知っていながら、知らないふりをして言っていると考えるとうれしかった。
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ここまでが悪くは無い思い出。これ以降は私が悪いのかもしれないが、おばあちゃんにも非は必ずあるはずだった。
記憶は再び小学三年生のころのお盆休みに遡る。
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その夜、お盆恒例の心霊番組がやっていた。テレビの画面には口が異常なほどに裂け、唇の間から除く大きな歯には血が付いている幽霊が映っている。
確かに、怖かったが私だってもう小学三年生のお姉さん。怖くておトイレに行けなくなっておねしょだなんてそんなへまはきっとしない。
心霊番組を見終わった後、私は一人でトイレに行った。
長い廊下の奥にあるトイレはとても薄暗く怖く見える。
それでも私はおしっこをちびってしまうことすらなくトイレに行っておしっこをした。
よし! これでもうおねしょはしないはず!
昨日だって、起きたときはパジャマを濡らしてなかったんだから。
昨日の敗因は、貧血と、おばあちゃんのせい。
私は寝る前に部屋に戻って明日の帰る準備をした。
明日はピアノのレッスンがあって、それに間に合わせるためには朝起きたら朝ご飯も食べず家を出なければいけなかったからだ。
布団に入り、私がママに電気を消すように頼んだ時だった。
「月菜ちゃん。おねしょしない? 一応おむつ履いておいたら?」
「しないよ!! 赤ちゃんじゃないんだからおむつなんてしないから!! 私はもうおねしょ治ってるの!!」
頭に血が上り、私は思いっきり怒鳴った。これには思わずおばあちゃんもお母さんも驚いているようだった。
「こら! 月菜ったら、おばあちゃんは心配してくれてるのよ?」
「だって……」
「だってじゃない!! ほら謝りなさい!」
なんで。
なんで私が謝らないといけないの?
「もういい!! 眠たいから寝る!」
私はすべての音を遮断するかのように、布団にもぐりこんだ。
初めは怒りで興奮してしまい寝付けなかったが、気が付くと私は眠っていた。
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んっ、おしっこしたい。
私は昨日の失敗から学び、ハイハイで壁の近くまで寄った後、壁に寄りかかりながらゆっくり立ち上がった。
よし、これでもうおしっこのシミはできてないからおばあちゃんに止められる心配もない。
私は薄暗い廊下を歩き、トイレへとつながる角を曲がった。
昨日の夜と同様にトイレのドアが開き、光が漏れている。
今日もおばあちゃんがいるのかな。よく目を凝らしてみると、身長からしておばあちゃんらしき人が立っていた。
「おばあちゃん。昨日はありがと……」
私の口からいつもなら出てこない素直な言葉がすっと出てきた。
「私が…… おばあちゃんだって?」
おばあちゃんは何変なことを言っているんだろうかと思い、私はからかおうとおばあちゃんの顔を覗き込んだ。
私の目に映ったのは、おばあちゃんではなく、テレビで見たような恐ろしい口裂け女だった。
「きゃあああああああっ!!」
私は思わず大絶叫した。恐怖で恐れおののき、私は思わずしりもちをついてしまった。
しりもちをついた反動で、膀胱に刺激が加わりおしっこがあふれ出てくる。
ちょろ、ちょろろ、ちょろろろとひくひくしながらおしっこがパンツに出されていく。
お尻から中心におしっこで温かくなり、昨日と同じところに水たまりを作る。
でも、そんなことよりも、口が裂けたお化けが怖くて私の目からは涙がぽろぽろとあふれ出た。
お化けが私の方へゆっくりと近づいてくる。お化けの足が私の水たまりにあたるほどの距離になった。するとお化けは急に私に顔を近づけるとともにその大きな口を盛大に開ける。
私は再び絶叫した。
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「はぁ、はぁ、はぁ…… ゆ、ゆめかぁ……」
息切れが激しい。それでもほんとに夢でよかった。
悪夢を見たせいで、顔や腕までもが汗で濡れている。あれ、でもお尻と太もももこんなに濡れてるだなんて変。
そこからが第二の悪夢だった。
手をおしりに当てて、その手を鼻に持ってきて臭いをかぐ。ツーンとしたその匂いは私が再びおねしょをしてしまったことを示していた。
「月菜! そんなに汗かいちゃって、どうしたの!? って、この臭いもしかして、月菜ったらおねしょしたんでしょ?」
お母さんが表情を突然変えて私の掛布団をばっとめくる。
当然、そこに現れるのは黄色い世界地図。
そこでおばあちゃんがやってきた。
「あらあら、月菜ちゃん。おねしょしちゃったの? だからおむつしとけばいいのにって言ったのに」
「おばあちゃんの言う通りよ。おむつしとけばこんなことにならなかったのよ」
「なんで小学三年生なのにおむつなんて履かないといけないの!! もう、おばあちゃんなんて嫌いだから!!」
私はそう叫んで、濡れたパジャマのまま車に乗り込んだ。
お母さんがやってきて出発する前におばあちゃんに謝りなさいと促されたが、私は寝たふりをしてその時を過ごした。
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ほら、思い出したっていい思い出なんてない。
そのあと確か、お母さんを通じてお手紙を書いたんだっけ。
それでも、私はおむつやおねしょやおもらしと子ども扱いされるのが嫌で、4年生と5年生の時にはおばあちゃんの家に行かなかったんだ。
その流れで今年もおばあちゃんの家にはいかないつもりだったが、強制的に行くことになってしまった。
さすがに、私だってもう小学6年生だ。登校班ではみんなの先頭を歩くリーダーのお姉さんだ。おもらしどころかおねしょだなんてするわけがない。
今度こそ見返してやるんだ。おばあちゃん、大人になった私を見せてあげるんだから覚悟しててよね!
私は戦いに出るかのような気持ちで車に乗り込んだ。
最近買ってもらったスマートフォンで友達とラインをしたりしているうちにおばあちゃんの家についていた。サービスエリアにだって以前は二つ寄っていたのに、今年は一つしかよらなかったし、こんなの勝負は勝ったも同然ね!
3年生の時と同じようにおばあちゃんが車のところまでやってきた。
「あらあら、月菜ちゃん、お姉さんになったわね。おしっこは大丈夫?」
おばあちゃんは相変わらずだった。
私は少しむっとしながらも、二つ返事を返しておばあちゃんの家の中に入る。
それからは、私はたまに言葉を交わすくらいしか、おばあちゃんとコミュニケーションを取らなかった。
そうして、夜がやってきた。私は念には念を入れてトイレに行っておく。
そして、部屋に戻り寝ようとした時だった。
「月菜ちゃん。おねしょは大丈夫? おむつした方がいいんじゃない?」
「そうよ月菜。おむつつけておきなさい」
お母さんまでもが口をそろえていってきた。
いらだちのあまり頭に血が上ってくる。
「何年生だと思ってるの!? もう6年生だよ!! おねしょなんてするわけないでしょ!! ほんとに、いつまでたっても子ども扱いしないでよ!! おばあちゃんなんて…… おばあちゃんなんて大っ嫌いなんだから!!」
翌朝、私はお母さんの叫び声で目を覚ました。
「お母さん! お母さん!! もう少しだけ待って、もう少しでお医者さんやってくるから!!!」
あまりの異様な空気で、今朝はおねしょをせず勝負に勝ったことを喜ぶ前にお母さんの声がする方へと走って向かう。
お母さんがいたのはおばあちゃんの部屋で、泣いているお母さんの前には弱った姿のおばあちゃんがいた。
「えっ、おばあちゃんどうしたの!?」
「月菜、おばあちゃんね、喘息みたいなの」
「救急車は??」
「もう呼んだわ。お母さんもう少しだからね。待っててね」
お母さんの目は赤くなり、ひどく哭いているようだった。
私の脳裏には祖父のお葬式の時の母の顔が蘇る。
それと同時に連想したのはおばあちゃんの死だった。
「おばあちゃん! がんばって! まだ死んじゃだめだからね!」
「あら、月菜ちゃん。今日はおねしょしなかったのね。おむつがいるだなんていって悪かったわね。もうお姉さんなのね」
おばあちゃんが弱弱しくその手を私の頬に当ててそう言った。おばあちゃんは無理にしゃべったせいで再びひどくせき込む。
お姉さんだって認めてもらいたかったけど、今はそんなことどうでもいい。
おばあちゃんに生きてもらわないと。
「おばあちゃん! そんなことどうでもいいの。安静にしてて。きっと助かるから」
「おばあちゃんね。もうだめかもしれない…… 寿命だもの。でもお姉さんな月菜ちゃんがいるならきっと大丈夫。お母さんのこと手伝ってあげてね」
そう言った後、再びおばあちゃんがひどくせき込んだ。
私にはまだ、おばあちゃんが必要だ。私がまだ子供でいればおばあちゃんはきっと生きていてくれる。私はそう考えた瞬間、すぐに下腹部に力を入れた。
じゅっとおしっこが女児パンツではなく真っ白なパンツにしみこむ。
パジャマを濡らし、その場に黄色い水たまりが広がる。
「ほら、おばあちゃん。月菜ね、今おもらししちゃった。私はまだまだ子供だから!!」
つい昨日まで、私はもうお姉さんだなんて言っていたの嘘のようかもしれないが、私の口からすんなりと出てきた。
「おばあちゃんにいてほしいの! おばあちゃんにおむつだって履かせてもらいたい。だから…… だから、まだ生きて!」
私はおもらししながらも必死にそういった。
「おばあちゃん、いままでひどいこと言ってごめんね。大嫌いだなんて嘘。大好きだよおばあちゃん……」
私はおばあちゃんの両手を包み込むようにして握りながらそう言った。
「あらあら、月菜ちゃん、おばあちゃんも月菜ちゃんのこと大好きだよ。だから、かわいらしいお姉さんになってお母さんを支えてあげてね。二人とも、今までありがとうね。
さようなら」
そう言った直後、私が握っていたおばあちゃんの手からは力がなくなっていく。
それは、おばあちゃんの死を示していた。
それから私とお母さんはひどく哭くことしかできなかった。
ふと、風が吹き込み、外を見ると大きな入道雲が青い空に広がっていた。
夏が終わりに近づいているせいか、それとも蝉たちが空気を読んでいるのかは分からないが、いつもよりも遠くで静かに鳴いているようだ。
私はおしっこで濡れたパジャマのまま、縁側に座り綺麗な空を眺めながらつぶやいた。
「おばあちゃん…… 今までありがと」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
夏の終わり的な少し寂しさのあるテイストに仕上げました。
もしよろしければ感想や評価などいただけると嬉しいです(__)
以下はただ書きたかっただけです。
この短編を書くときに、どう終わらせるかで結構悩みました。
朝起きたらもうおばあちゃんはなくなってしまっていたという終わり方もありかな、なんて考えたんですけど、私の心がそれに耐えられませんでした。
ひどいことを言ったまま関係がおわってしまうだなんて悲痛すぎて嫌だったので(笑)
それと、ほんとなら後日談を追加しようと思ったのですが、なんかグダグダしそうで、きれいな終わり方から離れそうだったのでやめました(笑)
夏も、もうすぐ終わりですが、残りの夏らしさを楽しみましょう!
今回は本当にありがとうございました(__)