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異世界物語 -黄泉返りの薬ー

作者: 酒呑入道

深夜テンションで書き上げた勇者の一生です……








 その日、一人の男が死んでしまいました。

 一か月間休み無しで営業活動に打ち込み、待ちに待った休日を目の前にした、それはそれは無念の最後でした。

 それを天上より見ていた女神様は、死んだ男を哀れに思い、その魂を転生させることにしました。

 女神は男の魂に問いかけます。


「あなたにはこれから異世界に転生してもらいます。

 一つだけ、あなたが望むものを与えましょう。

 何がいいですか……?」


 男は、生前に好きだったもの。

 物語に登場するような、勇者になる為の力を望みました。


 そうして異世界に転生した男は、その力を存分に振い、王国を滅ぼそうと企んでいた魔王を打ち倒し、みごと勇者となりました。


 しかし、平穏な日々は長く続きません。

 王国のお姫様が、流行り病で死んでしまったのです。

 王様はたいそうお嘆きになり、世界に一つだけ存在するという伝説の黄泉返りの薬を手に入れて来るよう、勇者に命令しました。


 そうして、勇者の新たな冒険が始まります。

 流石魔王を倒した勇者。どんな強い怪物が現れようと、えいやっさ!と、ひと捻りです。

 敵を倒し、黄泉返りの薬についてのヒントを集める長い旅の中で、勇者は勇敢な女戦士と出会い、共に歩む中で、その女戦士と恋に落ちました。

 そしてついに、二人は黄泉返りの薬の在り処を突き止めました。


 薬を守護するのは、古の竜種でした

 吐く息は全てを焼き尽くす炎。ひとつ羽ばたけば竜巻を起こす、そんな恐ろしい竜との戦いは、二渡を苦しめました。

 激しい戦いの末、辛くも勝利を収めた二人ですが、その代償はあまりにも大きいものでした。

 勇者の想い人である女戦士が、死んでしまったのです。

 勇者は泣きました。

 自分が何の為に戦っていたのか、誰の為に戦っていたのか、そんなものが何も思い出せない程、勇者の心は悲しみでいっぱいでした。

 だから、勇者は……



 黄泉がえりの薬の在り処を突き止め、竜を倒したが、そこにもう黄泉がえりの薬は無かった。

 そう、勇者は王様に嘘をつきました。

 その勇者の隣には、今日も女戦士の姿がありました。

 王様は嘆き、そしてもう一度、勇者を旅へと送り出しました。

 それは同時に、終わらない旅の始まりでもありました。

 世界に一つしかない黄泉がえりの薬は、もうどこを探してもあるはずがないのですから……


 それでも、勇者は幸せでした。

 心から愛する女戦士が、側にいてくれるのですから。

 しかし、大切な人を失う辛さを知る勇者は、黄泉返りの薬を使ってしまった後ろ暗い気持ちもあって、終わりの見えない旅に挑みます。

 まだこの世界のどこかに、黄泉返りの薬があると信じて……


 勇者は冒険を続け、その証を王様へと献上し続けますが、それで旅が終わることはありません。

また勇者は、女戦士と共に次の目的地へと旅立って行きます。

ジャングルの奥地、地底の遺跡、天空の森、勇者は様々な冒険を繰り広げました。


 しかし、ついにそんな日々に嫌気がさし、勇者は女戦士を連れ、王様の命令に背いて逃げ出してしまいました。

 勇者が逃げ出したことは、すぐに王様の知るところとなり、勇者はたちまち追われる身となってしまいました。


 山を越え、川を越え、勇者は女戦士を連れて逃げて行きます。

 しかしそんな勇者達を、山奥の小屋に暮らす優しい少女が匿ってくれました。

 少女は甲斐甲斐しく勇者達のお世話をしてくれます。

 三人での生活は、今まで戦い続けてきた勇者にとって、随分と久し振りの休息でした。


 でもやはり、幸せはやはり長くは続きません。

 小屋が見つかり、万の兵がそれを取り囲みました。

 勇者は応戦しましたが、矢を足に受けたのを皮切りに、とうとう討ち取られてしまいましたとさ……




 ※※※




 その日、一人の男が死んでしまいました。

 魔王を打ち取り勇者と呼ばれたその男は、救ったその国により打ち取られてしまうという、それはそれは無念の最後でした。

 それを天上より見ていた女神様は、死んだ勇者を哀れに思い、その魂を転生させることにしました。

 女神は勇者の魂に問いかけます。


「あなたにはこれから異世界に転生してもらいます。

 一つだけ、あなたが望むものを与えましょう。

 何がいいですか……?」


 答えるまでもなく、勇者の腕には最愛の女戦士が抱き抱えられておりました。

 重ねて女神が尋ねます。


「本当に、そんな人形を持って行くだけで良いのですか?」


 そう。黄泉がえりの薬で生き返った女戦士は、まるで魂が抜けたかのように、勇者の言葉に反応して行動するだけの、まさに人形のような有様だったのです。

 それでも勇者は、彼女が生きて、動いて、側にいてくれるだけで、嬉しかったのです。

 そして勇者は、自らの想いに従い、最愛の仲間を連れて旅立って行きます。

 次こそは、二人で添い遂げられることを願って……

 もう勇者には、女戦士がいない世界など、想像出来ないものだったのでした。





 ※※※





 勇者を見送りながら、女神は独り言を口走ります。


「そんな愛の物語でした……

 なんて、滑稽すぎて語れませんね。

 喜劇も喜劇。あんな人形を連れて行ってどうしようと言うんでしょう?

 あなたの最愛の魂は、ここにあるというのに」


 女神の振り向いた先には、勇者を匿い、殺された少女立っていました。

 少女は言います。


「それでも彼は、私を愛してくれました。

 たとえ私に気づいてくれなかったとしても、それはとてもよく分かりました」


 そんな少女の言葉に、女神はなにも答えませんでした。

 最後に、少女は訊きました。


「女神様、私はまた、あの人に巡り会えますか?」


 女神は答えました。


「もう違う世界の存在となったのです。

 今後貴方達が出会うことは未来永劫、ありえませんよ」


 そして女神は続けます。


「あなたはもう一度この世界で転生してもらいます。

  一つだけ、あなたが望むものを与えましょう。

 何がいいですか……?」


 少女が望むものは――





 おしまい。

少女はどうするんでしょうね?

国を滅ぼす魔王とかになるんですかね?

時代は繰り返す、みたいなのよくありますよねーww

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