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ジコチュー

寝る前にスマホでポチポチしてしまった。

更新直後に寝落ちしたのは秘密(笑)

「どうしたの?」

「いや、前にも言ったんだけど俺凄いジコチューだからさ」


明日は文化祭、居残りで俺達は最後の仕上げを行っていた。

向かい合って座っている委員長が、自分の髪を指先でクルクルと回しながらチラチラと視線をこちらに向けてくる。

明日、配布するチラシの作成が終わればコピーして帰れるのだが最後のレイアウトで悩んでいた。

配置を相談してる最中に指先が触れそうになったので慌てた俺の反応、それに疑問を抱いて委員長は尋ねてきたのだ。


「でもあんた自己中って言うわりに真面目じゃん」


うっ、つり目の委員長の微笑みに一瞬期待しただけに心が揺れるが俺は目を合わさない様に視線を下ろす。

あと少しだ。

これが終われば帰れる。

委員長の言葉を無視するように俺は作業を進めた。


「でも本当、相棒があんたで助かったよ」


嬉しい一言が俺に伝えられる、だが俺は委員長に気を許さず最後まで作業を頑張った。


「よし、これで終わり!」

「うん、いい感じだね!」


出来上がったチラシを委員長と最終チェックする。

問題が無いことを確認し終わり最後のコピーを残すのみとなった。


「委員長、後は俺がコピーしとくから先に帰ってもいいよ」

「えぇ~薄暗くなってきたから送ってはくれないの?」

「いや、俺…ジコチューだからさ…」


そう言ってチラシの原本をコピーしてこようと立ち上がる。

それに合わせて委員長も立ち上がった。


「じゃ、行こうか」

「委員長…」


何を言っても無駄なんだなと理解した俺は諦めて教室を出る。

その後ろを委員長が置いていかれない様に慌てて付いてきて…


「あっ?!」


躓いた。

委員長の声に驚いて振り返った俺は委員長の体を受け止める。


チュッ


勢いで偶然触れた唇。

目を見開いて口に手を当てる委員長。


「あっ…その…ごめん…」


委員長の謝罪の言葉に俺は告げる。


「だから言ったでしょ、これ以上俺に構わない方が良いですよ」

「うっ…うん…」


クラスでも話題になっていた俺の噂が真実なのだと彼女も理解した様であった。

そう、俺はジコチュー。

偶然発生する事故で俺と性別関係なくキスをしてしまう現象を引き起こす存在。

クラスメイトだけではなく家族からも言われている俺の不思議な体質。


『事故チュウ』


頬を赤く染めた委員長は俺の袖を指で摘まみながら後ろを付いてくる…

また一人その毒牙に掛かった少女を見て溜め息を吐く…


(またなのか…)


彼とキスをきた者は彼に好意を寄せ、その対価に彼は寿命が1日伸びる…

誰も知らない彼の彼だけの秘密…

現在325才の青年は遥かな昔、悪魔と交わした契約により寿命以外で死ぬことが許されない体なのだ。

その契約の内容が既に亡くなっている病弱の娘だった者の健康と引き換えだった事すらも彼は覚えていない。

人の記憶の限界は130年、それを越える記憶は彼には残っておらずまた1日死ねる日が遠退いた事に溜め息を吐くのであった…



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