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踊る夢人形  作者: 執筆挫折マン
第一章
5/10

第一章 4

バンドの練習やら何やらでちょっと時間帯が遅くなりましたが、予定通りお送りします。

 昨日の敵は今日の友。ことバトルロワイヤルの世界においてはそれが常識。誰と組むのも自由だし――裏切るのも自由。

 そして、それを承知で、彼女は取引を持ちかけてきた。

 彼女曰く。

 先ほど奇襲を仕掛けてきたヤツは相当強い。単独で当たっても勝つことは非常に難しく、逃げ回っても、他の人間がやられ自分が最後の一人になった時――結局は戦いになり、負ける。

 だから、強いやつにはそれより弱い者が複数が同盟を組んで当たるのが定石。両者にとって最も驚異となる存在に対抗することができ、その存在を排除されるまでは互いの利害が一致するので裏切りのリスクは高くない。敵が健在の時に味方を裏切っても結局は敵にやられるだけだから。

 ――というわけで、あたしと組め。

 だそうだ。

 さっきまで自分を殺そうとしてきた奴が。

 ……まあ、悪い条件ではない。

 そもそもが、自分はこの戦いに関しては初心者なのだ。ある程度慣れるまでは味方がいる方が何かと都合がいい。

 加えて、彼女から自分を倒そうとする意思が首尾一貫して感じられなかったこともある。殺すなら出会い頭の初撃で決着を付けることができたはず。それをせずにわざわざ手間暇をかけてあれこれレクチャーした。一回戦いになった時だって本気で倒そうとしているようには見えなかった。むしろ、自分を試していたような気がする。実際、武器の出しかただってあの対峙で学んだのだ。むしろあれは、チュートリアル的な意味があったと考えられる。

 それから勘案され出される結論。

 彼女は最初から俺を味方として使うつもりでいたのではないかということ。

 それなら、彼女の提案に乗らない手はない。

 ……ただし、彼女と組むメリットは一つの前提によって成り立っている。

 もう一人の敵が彼女よりも強いこと。それも、客観的な強さではなく、あくまで自分にとっての、手強さ。

 しかし、それを確かめるには、まず戦ってみなければならない。だからどちらにせよ、一旦は彼女と組む。話はそれからだ。

 そういうわけで、自分は暫定味方の少女と行動しているわけだが……

「さあな」

「さあって……」

 目的もなく歩いてる、なんて言わないだろうな。

「向かってる、じゃなくて探してんだ。ヤツを相手にするのに適した場所をな」

「敵のこと知ってんの?」

 そういえば自分は、敵の姿をちゃんと見ていなかった。銃弾の飛んできた方向を確認する前にこいつに引き摺り下ろされたからだ。

「そりゃな。ミラとは当初いたメンバーのうちで互いに死なずに何度も戦った。まあ悪い意味での腐れ縁ってやつか」

「ミラって……その敵の名前?」

「そりゃそうだ。ていうか、まだおめーの名前訊いてないな。……いやはや、互いの名前知らずに良く会話が成り立ったもんだ」

 まったく、それは同感だ。今まで地の文で少女とか彼女とかだけで頑張ってきたけど、自己紹介くらい最初に済ませるべきだろ。何で今更なんだよ。

 いや、それより

「そういや名前って……」

 名前って何だ? まさか本名を名乗るのか?

「あー、そうか。お前、まだ初日なんだな。名前決めてないのか」

「名前を、決める?」

「このゲームでは、現実の身分を探るのはご法度。現実の姿を隠し、偽りの姿で己を表し殺し合う。だから当然、本名を名乗ることもできない。でも――名前がなかったら不便だろ?」

 そりゃまあ。互いを呼ぶのもそうだけど……これ以上地の文で苦労させないで欲しい。むしろ、今までよく代名詞だけで形容できたもんだ。

「だから、夢人形の自分に仮の名前をつける。要はソーシャルネットワークと同じ原理だ。つまりハンドルネームってやつだ」

「なるほど……。それで、そっちの名前は?」

「――アカ」

「は……?」

 ごめん、よく聞き取れなかった。

「だから 『アカ』 だよ! カタカナの 『ア』 に、カタカナの 『カ』 だ!」

「カタカナにアって文字は入ってないぞ……?」

「ンなトコロでボケるな!」

 いてっ! ……ハリセンが無いからって拳で人を叩かないて欲しい。

「しかしアカって……。どんだけいい加減な名前だよ」

「うっせーな。凝った名前なんて厨二病っぽくてバカみたいじゃねーか」

「それにしても限度が……」

 てかまともな名前なんて最初から考える気ねえだろ。どいつもこいつも。敵の名前だってミラだもんな。……あっちはなんとなくそれらしく聞こえるという点で、少なくとも目の前のやつよりは優れているが。

「じゃあお前はイカしたセンスで名前考えてみろよ! そしたら許してやる!」

 何でそうなる。

 まあいいや。名前ないのも不便だしテキトーに何か考えるか。

 普通に名前から取ってアサギにでも……いや、待て。

 現実の身分を隠して殺し合うって言ってた。こういうシステムなんだから普通は現実の身分なんて分かりっこないが……そもそも現実の身分を隠さなければならない明確な理由があるかのような言い方だった。そもそもSNだって本名を隠すのが当たり前だ。それと同じだとしたら?

 だったら――名前でそれがバレるのはまずい。

 そもそもアカとかミラとかバカみたいに単純な名前も――現実の身分を推測する手がかりを極力少なくするための措置ではないのか?

 だとしたら、こちらも単純に行くべきだ。

 よし……思いついた。


「アオ、で」


 瞬間、アカの顔面が引き攣った。

「てめぇだって安直なネーミングじゃねえか!」

「いや確かに同系統だけと、アカよりはマシじゃない?」

「五十歩百歩だ!」

 それを五十歩のやつが言うか……?

「……まあいい。ここらにしておくか」

 そう言ってアカは足を止める。

 そこは、雑居ビルの立ち並ぶ場所だった。入り組んだ裏路地の中に二人して入っていく。

「……ここで戦うつもり?」

「ああ、こういう場所がちょうどいい」

 ビルの隙間の狭い路地は、ゴチャゴチャといろんなものが置いてあり、人ひとり通るのがやっと、というほどだ。

「こんな狭い場所で戦えるわけ?」

「狭いと不利なのは向こうさんさ。奴お得意の射撃に対して、こういう場所なら遮蔽が取りやすい。ついでに下手に武器を振り回すこともできないしな。……まあ戦えばわかるさ」

「でもわざわざ来るのか? 自分が不利になる場所まで」

「まあ来なかったら来なかったでタイムアウトまで待てばいい。バトルロワイヤルってのは相手を倒すことより自分が生き残ることを優先するもんだ」

 なるほど、下手に攻勢をかけても倒されたらそれで終わりだからな。自分の有利な土俵に上がってじっと待つのか。

「でも相手だって同じこと考えてるんじゃ……」

「いや、あいつはじっと待ってるようなタマじゃねえ。自分から仕掛けてくるに決まってる。さっきだってそうだったろ」

 それは自分たちがお互いに戦ってたからじゃないだろうか。大方横から奇襲をかけて漁夫の利を狙ったんだろう。

「まあ焦らず待ってろ。そのうち来る」

 自信満々に言い切ったが、その根拠はどこにあるというのか。


 だがその三十分後。

 アカの予想は――見事に当たった。

 ……割と、最悪の形で。


というわけで……まだ続くバトルパート。次回あたりでそろそろ終わりになるはずです。次回も予定通りに上げれるよう頑張る所存。あともう一つ新作を出してみようかなー……なんて思ったり思わなかったり。今リアルが忙しいので来週以降になるでしょうが。

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