第一章 2
初めての連載小説で実質初めての次話投稿。……う~ん、細分化してるわりに一つ一つはそこまで分量多くないんですよね。読み足りないという方はすいません。たぶん次回からは多くなってると思います。なにぶん一節ごとの量を均等にする技量がないものでして……(汗)
「え……?」
どういうこと? と、訊き返そうとした時には、もう、あのぬいぐるみはいなくなっていた。
「えーと……」
いや、ナニコレ? いきなり殺しあってください、とか言われましても。
……意味がわからないのですが。
すごいね、この手持ち無沙汰感。自分以外誰もいないよ。まったく、せっかく夢の中くらいはエンジョイできると思ったのに。
まあ、とりあえず動いてみるか。
もと来た道を引き返すのは何となくシャクなので、線路に飛び降りる。これも夢の中だからこそ。
……しかし現実問題として、スカートのまま飛び降りると大変なことになるなこれ。別に誰も見てないし、そもそも夢の中だから気にすることもないけど。
しかし再現度高いな、この夢。視覚聴覚のみならず肌の感覚や空気抵抗まで再現するなんて。よくよく感覚を研ぎ澄ませば周囲の微妙な物音や遠くで車が走る音、それに虫の声なんかも聞こえる。ちゃんとスカートの布が足に擦れる感触も、風が股下を通り抜ける冷たさも……ていうか、これ本当に夢なのか?
……いや、愚問だ。夢に決まってる。自分の身体が自分のものじゃなくなっているのが何よりの証拠。頬を抓って痛かったからといってそれが現実とは限らない。夢の中は痛みを感じない、なんて法則は絶対的に通用するなんて言えないだろう? 痛みを感じる夢だって――五感全てを再現する夢の存在だって、否定はできない。
それにこのご都合主義的展開。これぞ夢の典型じゃないか。女の子に変身とか、ぬいぐるみが喋るとか、バトルロワイヤルとか、全部厨二妄想の典型もいいところだ。これが現実に起こり得ると思うほど、自分はおめでたい頭をしていない。むしろこんな厨二的な夢を見ることが若干嘆かわしいかもしれない。
……まあいいや。
深く考えても仕方がない。線路の上を歩きつつ、スタンドバイミーでも歌ってみるか。
――という風に考えを固めた直後に限って、ロクでもない方向に事態は進んだりする。
例えば――今のように。
「見つけたぜっ!」
大声とともに急速接近してくる、人影。
突風のように疾駆するそれは――少女の影だった。
外見年齢は14歳くらいか。肩まで届くセミロングの髪に――凶暴な表情。
それ以上の細部は描写している暇がない。なぜならそいつは――日本刀片手にこちらに襲いかかってきたからだ。
「ひっ!?」
思わす少女のように情けない悲鳴が口から漏れる。というか外見や声は少女そのものだから見かけ上はまったく少女の悲鳴そのものなのだが。
背を向けて全力で逃げる――というわけにはいかない。ここは逃げられねえ! ……いや、という意味ではなく。
敵から視線を逸らすという行為がもう危険すぎるのだ。刃物を振り回している人間に直に遭遇すればこの意味はわかると思う。
「ちょっ――まっ――なっ――」
結果、無様に逃げ回り――もとい慎重にバックステップを踏みつつ、説得を試みる。が、恐怖と混乱で言葉が断片的になってしまった。これでは意味も通じない。敵は「オラオラオラオラオラァ!!」とテンションマックス状態。どうせ聞く耳持たないに違いない。これはまずい。
「タンマ! ちょっとタンマ! ……お願いだから!」
ダメもとで叫んでみる。……ところが、結果的にこの判断が効を奏した。
「……たく、なんかシラけたぜ」
少女は唐突に攻撃を止めると、そのまま日本刀を線路の砂利に突き刺し、不貞腐れた表情になる。
「お前なに? なんで勝負しようとしないわけ? あーまさか降参したフリして騙し討ちとかねーよな。テメェが武器出す一瞬で首ぐれー落とせるっつーの」
少女はよくわからないことを言ってから、ふと何か得心したような表情になって、
「もしやお前、ルーキー?」
初心者? うん、そう、よくわからないけどたぶん、その通りです。と頷くことで意思表示。
「あぁ、そう……」
少女はすっかりやる気が失せましたという表情になって、突き立てた剣を引っこ抜いた。そしてその剣が――唐突に消える。
「……え?」
思わず漏れた疑問の声に、逆に少女は納得した表情になる。
「なるほど、マジで初心者か。あのクマもん、また新しいヤツ連れてきやがったな……」
そう言って溜め息を吐き、
「まあ丸腰のチビ斬ってもなあ……」
そんなことを呟く。
そういえば、自分は少女の姿をしているんだった。しかし現実の自分は男で、この姿とは大きく乖離している。だとしたら、この少女もまた現実では別の姿をしているのだろうか。
少女の外見年齢は、さっきも言った通り14歳ほど。体型などは中学生という感じだが表情がやたら鋭いというかギラギラしている。……ちなみに服装は黒一色。マントみたいなロングコートに、革製のロックな服。我ながら表現力に乏しい言い方だが、実際そうとしか言えない。ちなみに下は一応スカート。余談だが生足を出しているわけではなくレギンス的な何かで覆っている。したがってパンチラは有り得ません。
……ハイ残念でした。しかし仮に見たら見たで(外見が女とか関係なく)蹴り殺されそうなのでむしろ賢明な展開と言えるだろう。
鴉のように黒い服装というのは闇夜に紛れるのに都合が良さそう……に見えるが、意外とそうでもない。完全な黒よりも灰色や紺色のほうが闇に紛れやすいのだ。……ということは単なる趣味の問題だろう。
言動から推測すればDQN風のしっかり者アニキだったりするのかもしれない。まあ、あくまで推測だけど。
少女は少しばかり何か悩んでいたようだったが、やがて俺に言った。
「仕方ねえ。ちょいと補足説明してやるからこっちに来い」
こうして自分は、数分で元いた場所に逆戻りすることになったのだった。
まあこんな感じでゆるゆるぬるぬるバトルが続きます。日常シーンとか主人公の素性については二章以降で。
あと更新頻度についてですが、週二回くらい(月と木かな? 暫定ですが)を目安にしたいなーと思ってますがさてどうなることやら……。最近割と忙しいのでそこまで手が回るかどうか……。次回は木曜、ですかねえ……。