仲間を募る
私の平穏は、どこへ行ったのでしょうかね?
あのじじい、いえ師匠と出会ったのは、今世紀最大の間違いだったのかもしれませんね。じいさん、あんた本当に何してくれちゃったんですか?
まあ、文句を言っても仕方がない。訳もわからず「お尋ね者」になってしまった私は、魔法だけでは身が守れないことを痛感しました。
だって魔法を使うとですね。後が大変なんですよ?
何が大変かって? 人が一瞬で灰になるのを見たいんですか?
紫外線にあたった吸血鬼じゃないんですから、人の消し炭など勘弁願いたいです。
吸った空気の中に異物混入なんて嫌ですよ。
実際に、試したわけじゃないですよ?
私そこまで鬼畜じゃないですから。じいさんに魔法を教えてもらった時に、ご注意を受けましてですね、
「なずは。教えておいてこんなことを言うのはなんだが。お前に力を使ってほしくないのじゃ。お前の力は巨大すぎる。人間の力を超えておる。もし力を使うならば、魔法抑制装置を何重にも施してから使うように。この世界に魔物とお前しか残らん世にしたくないだろう?」
ってことは、ちょいと本気を出したら野焼きのようになるわけですよ。
辺り一面、消しカスですね。
ええー。汗水たらして、ようやく畑に水みずしい菜っ葉が収穫できるまでに育てたのにー。トマトの味に似た果物ももうすぐで収穫間際で、トマトソースが作れそうなんですよ? 苦節何年だっけ?
アレ? 話が逸れましたね。
じじいのせいで追手がかかったって話ですね。
どうもどこぞの何タラ国ってのから「指名手配」がかかりましてね。確認してませんけど、じいさん死んでますよね? スタコラ逃げたからなー。どうなんでしょう?
まあ、弟子である私に何らかの情報を渡していると考えたんでしょう。
「あれよこせ。」
と言われましてもね。
なんなんでしょうかね。
じいさん、何も残してくれなかったですよ?
なーんにもですよ。本当にケチ。
やっとこせ女の身一つで、ここまで漕ぎつけたというのに、平穏な生活を簡単に握り潰してくれちゃって。しかも罪を犯した当人は死人ですよ?
ええっ!
どこにどう怒りをぶつけたらいいんですかね?
じいさん、悔いを残して動物に移らなかったんですかね?
今なら、ギッチャンギッチャンのグチャグチャにして差し上げますのに。
まあ仕方がないですね。
で逃亡ついでに、各国から「バリア」に出ている魔物討伐指令書をたんまりと受けてですね、独りでは身動き取りにくいので、相方を所望しました。グループなんて面倒きまわりないので、一人だけで十分です。
「うるさくなくて、他人の詮索をしなくて、自分の面倒は自分でみれ、弱いよりは強い方がいいですね。私、他人の尻拭い等は真っ平御免なんで。後、人に情けをかけて要らん仕事を増やす、いかにも勇者な人間はやめてください。虫唾が走ります。そんな人、お願い致します。」
とまあ、少々文句をつけてですね、申請をしました。そしたら、何タラという名前の長い人物に行き当たりました。この世界の人間は名前が長いですね。はい、覚えられませんでしたよ? 聞いたそばから忘れてしまいました。お互いあまり会話がなかったですし、名前を呼び合うこともなかったのでいいじゃないですか。
ああ、でも久しぶりに感動をしましたよ。
この人、強いんですよ。惚れ惚れしました。魔法もまま使えますし、何しろ剣術が最高なんですよ。思わず弟子入りをしましたよ。タダで、いえ魔物討伐ついでに教えてもらうんですから、いいと思いませんか?
彼とは、じじいの次ぐらいに一緒にいましたよ。思ったより長い付き合いになりました。各国を転々としました。始終一緒にいるわけではなく、魔物を討伐したら、「次は何タラ国で落ち合おう。」てな感じでした。一週間に一回会えば良い方です。まあ程よい距離間でしたね。逃亡しつつ暇なので世界各国の地図でも作っちゃおう&観光マップなんか作ったりして。案外楽しく過ごしていましたよ。髪を染める染料も手に入りましたので、街中をポクポク歩けるようになりました。魔法でやってみればいいじゃないか? 魔法と超能力を一緒にしてはいけませんよ? 魔法は案外使いがってが悪いんですよ。もし実験して〇禿になったら、どうしてくれるんですか? いや首から上がなくなる可能性もあるしなー。ホラーですね。まあ、それよりですね。街中を歩けるようになったのですが、
「お嬢ちゃん、迷子?」
「お母さん探しているの?」
「お嬢ちゃん、こっちにおいでいいこと教えてあげる。」
等々の勧誘に会うのは、勘弁願いたいです。
それは置いといてですね。剣術も合格点をもらえましたし、髪を染めることで追手から目をくらますことができますし、何より、成長しない&怪我即治りの体に嫌気がさしてですね、とある大きな町に永住することを決意した次第です。相方さんとはお別れをしました。すいません。最後まで名前を覚えられませんでした。アルなんとかさんでしたね。
住むことになった町には、古くからある大きな神殿がありました。学問の町としても有名でしたので知識を集めるのに十分な町でした。まあ、学生として居続けても問題ない体型でしたから。
さて、どうなることでしょう?
このように淡々と進んでいきます。
よろしくお願い致します。