組合に入る
仕方がないので町に出ました。
自分の姿が常識からかけ離れ、魔物を連想させる色を有していることをじじい、いえ師匠から聞いていましたので、早々にマントを購入して隣国に移動をしました。そして爺のせいでさらにワンサカ湧いて出てきた魔物を退治する専門の業者である「バリア」なるものに加入しました。
魔法が使えるのは、かなり優秀な部類に入るみたいです。(じいさんそこは感謝しておこう。)魔法を扱える人間は、ほとんどが国に所属をしているようですが、まあどこの世にもいるハミ出し者や団体生活に耐えられない所謂、クセのある人間が「バリア」に属しているようです。私はその人間どちらにも関わりたくはないのですが、瀬に腹は代えられません。仲間を募ってもいいようですし、単体で活動してもいいそうです。
まあ、私は人づきあい面倒なんで一人でいいです。それにクセのある人間となんかやってられません。
一体につき、何ゼル(こちらの通貨ですよ。)というお金が手に入ります。あんまりポコポコ倒しますと名が挙がってしまいますから、弱いのをチョコチョコと中くらいの狸クラスの大きさを週に一回ほど倒して、コツコツと日銭を稼ぐことにしました。それでもたまに象さんクラスの魔物を倒すとですね、一か月悠に暮らせる現金が手に入るわけです。魔物を倒すのがそんなに簡単なこと? そうですね、「バリア」に所属している人間は何千人といるわけですが、(ああ「バリア」は各国に支店を持ってますから、所属する人間も多いわけですよ。)年間に三分の一の人間が何らかの事情で入れ替わるそうですよ。まあ、それほど過酷な仕事なわけですよ。大変ですよね。
でもそれなりの対価ですから、「バリア」の成り手も多いわけです。貧民階級の人間がこぞって志願するようです。国の兵士になるより、よっぽどお手当が良いようですよ? 国は国同士の戦争なるものをしているものですから、魔物など放置状態で「バリア」の仕事が山のようにあるわけです。需要と供給ですね。
「バリア」には各国から依頼もやってきます。国からの仕事は、そんじょそこらの魔物退治ではなく、見た目にもオドロオドロシイものがほとんどですから、「バリア」の中でも優秀な人間が駆り出されるわけですが、私は全てお断りをしています。だから目立ちたくないんですってば。穏やかに暮らすのが私のモットーなんですよ。あなた、じいさんのように悪事に関わって一生逃亡生活するのは御免です。こちとら二度目の人生なんですよ。静かに平和に暮らしたいんです。人から恨まれたり、利用されたりするのは勘弁願いたいです。
ああ、説明するのを忘れていましたね。
「バリア」は力の強さに応じて10階級に分けられています。
私ですか? まあ、いいじゃないですか何位でも。
私は、爺さんとの暮らしを再現するかのように森の奥深くに住みはじめました。こんな成りをしてますから、人から恐れられたり、好奇心の目で見られたりするんですよ。ここに来て、人間じゃなくて魔物として命を落とすなんて嫌ですよ。それに珍しいからと言って貴族どもにペットのように囚われるのも避けたいですね。そりゃあ、町に住んだ方が何かと楽ですよ? でも町中で全身マントの人間に誰が近寄ります? 何か秘密を持ってますといわんばかりでしょ? それい暑いですしね。サウナダイエットするつもりはありませんよ。それなら「人の寄り付かない場所にしましょう。」ってことになりました。
稼いだお金でログハウスなるものを立てました。じいさんのあばら家は酷かったですからね。あれは雨風が凌げる程度の代物でした。それにしても一軒家ですよ? すごいですね。たかが20にも満たない独身女が一軒家&土地持ちですよ。私、やりますね。
ああ、その頃若干不安に思っていたことがありましてですね。
私の容姿ですよ。
ええ、変化なしなんです。
この世界に来てから、かれこれ5年にはなるでしょうか? 今では成人式を迎える年になりました。っていうのに、育ってないんですよ。どこがって、ほらアソコですよ。なんでブラジャーの必要もないみすぼらしい胸を20代にもなって所持しているんですかね。背も全く伸びていないんですよ。やってられませんよ。こんなことってありますかね?
ええ、大問題ですよ。
私の母親は顔こそイマイチでしたが、体型はとってもナイスなものでした。ボンキュッボンッを具現化した素晴らしい出来栄えでした。そこで普通、遺伝なるものがあってですね、母親の体型を受け継いでもいいじゃないですか? えっ?父型ですか? そんなものは知りません。面倒を見てもらってないんですから、それぐらい望んでもバチは当たりませんよね? ささやかな楽しみにして何が悪いんですか。それが年がら年中、幼児体型ですよ。働きにくいったらないですよ。ああ、悩むとこそこじゃないですかね?
まあいいや。今日も畑に精を出しますか。
恋愛にほど遠い主人公だなー(遠い目)