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爺さんと孫

異世界って異世界ですよ。



魔法が存在してですね。魔物がワンサカ出現するんですよ。

落ちたところが幸いしてですね。どがつく田舎の鬱蒼とした森の中で、目の前には生まれて初めて見る魔物ですよ。いや確か先ほど死んだばかりで、



「どこかも判らずに、もう死んでしまうんですか? ってか自分が死んだにも関らず、生き返ってですね、好か不幸かわからずに死ぬんですか? 早いですね。それにしても二度目は痛いの嫌だな。」



なんて考えていましたら、どこぞのおじいさんに助けられました。

どうも私は、50代以上の叔父さんに助けられることが多いようです。ほら、定吉さんとか。あっと定子さんでした。



それは置いといてですね。

このお爺さん、なんて名前だったっけ? まあいいや。「きこりのおじいさん。」とかにでもしときましょう。私、人の名前を覚えるのが苦手なんですよ。このお爺さん、一人で森の奥深くに仙人のように住んでいらっしゃいました。言葉も生活様式もわからない、何も持たない私を囲って、いえ、面倒をみてくださいました。



それから何年経ったんでしょうかねー。

孫のような関係になりましたよ。傍から見たらそうなんでしょうね。

私としては師匠なる感じでしたがね。異世界トリップといったら、王子様&救世主&巫女&絶世の美女なる様々な恩恵を受けるものだと思っていました。が、何年経とうと幼児体形は変わらず童顔のままでした。この世界には珍しい真っ黒な目と黒髪。ええ、側には怪しい爺さんしかおりませんでした。



それでもまあ、楽しかったですよ。

この爺さん、魔法が得意だったようで、



「ありがたく思え。お前にわしの全てを受け継がせる。」



なんてありがたくもない教えを受けてですね、魔法なるものを端から端まで教えてもらいました。魔法を覚えても何があるわけじゃないですよ? だって師匠が教えてくれた魔法は、ほとんどが攻撃魔法でした。性格悪いですよね。人を助けようって良心の欠片もないんですかね。ああ、すいません私にもなかったです。で、どうやら異世界トリップらしくですね、私の魔力は爺さんのを軽く越すほど巨大で無尽蔵にあったようです。めったに人も来ない森の奥深く、何に使うんですかね?

結局、前世と変わらずに、炊事洗濯掃除の三種の神器ですよ? 日々の生活+魔法ですかね。



私の毎日の生活は、朝の散歩から始まります。

森の中を歩いて果実をもぎ取り、ついで魔物を退治するんですよ。そしてじじい、いや師匠の朝食の用意をするんです。



ああ、魔物って奴の説明を忘れていました。

この世界には純正の魔物は存在していません。悪魔ってやつもです。神様なるものはあるようですが、所詮人が作った代物でしょう。神様やらその使いが実際に力を行使したところを見たことがありませんし、変な透明なブヨブヨとした見るからに怪しい幽霊に遭遇したことないですし、私という異物が存在していることを許容している&「どっかいけ。」&「この世界で平和に暮らしてくれ。」なる指示もありませんし、神様いないってことで。あと羽をつけた小さな生き物、妖精&精霊って奴もなしです。いても総無視です。面どいから。



ああ、魔物の説明ですね。

魔物は人間が恨みを残したまま死ぬとですね、その恨みが動物さんに取り付いて動物がいぎょうとなり、魔物が出来上がるんですよ。形はですね、そうですね。崩れた真っ黒な巨大プリンに目が沢山ついていたり、腕がついていたり、たまに動物の形そのままに、牙が突出したり、目が赤くなったりするものもありますね。能力が高いものほど、もとの動物の姿がわからないほど変形しています。でもまあ、動物さんにしたら、はた迷惑ですよね。それにしても死んで悔いを残すって執念深いですよねー。



恨みの深さに比例し、魔物の力、サイズも変わっていきます。手のひらサイズから大きくてキリンサイズまであります。恨みの塊ですから、人を襲うそうですよ? まずは人の多い村や町に出現しますから、こんな山奥にやってくることないんですが、残っている知能が薄くて狂乱状態ですから、たまに方向を間違って森にやってくるんですよ。で暴れまわるものですから、困ったチャンですよね。果物の木をなぎ倒してもらっては困るので、早々に輪廻の輪に戻ってもらいます。まあ、わたしのように死んでからすぐに次の世界に新たな命になるかもですから、次の幸せを掴んでもらおうってことで、さくっとサヨナラです。



ああ、一日の流れなるものの途中でしたね。

朝、じいさんの朝食の用意をした後は、掃除洗濯&畑を耕して、魔法の教えを受けて、森の滝つぼで体を洗って、ついで魚を取って魔物退治して、夕食を作って一日が終わります。



そう、なんて穏やかな日常でしょう。




まあ、そんなにスンナリと行かないってわかってましたよ。



じいさん、あんた若いときに何してくれちゃったんですかね。若気の至りってやつですか? 今はノホホンとした爺さんですが、ちょいと前に悪いことをしたらしく、実はお尋ね者だったらしいです。ああ、それで森の中ですか。納得している場合じゃないですよね。で、なんか大層ゴツイ服を着ている人たちに、



「ネルデラード=セゴルト=イシアは、どこにいる。」



聞かれてもですね、爺さんの名前なんて覚えてないんで、



「知りません。」



って答えましたら、怒りまくってですね。

ああ、久しぶりに激怒している人間を見たなー。なんてホノボノ見ていたら、さらに真っ赤になって人に剣を向けてきました。そんな危ないものを人に向けたらいけないって親に教わらなかったんですかね。しかも私これでも未成年で女性です。この男達、最悪ですね。



「貴様、我らを謀っても何もならんぞ。この森はネルデラードが黒の魔物と住んでいることは明白だ。お前が黒の魔物であろう!」



魔物って人型もあるんですか?

知らなかったな。



「森に住んでいるが、そんな仰々しい長い名前の人間は知らん。見ての通り忙しい。この先の小屋にいる、じじいにでも聞いてくれ。」



久しぶりに長文を話しました。疲れました。

まあ、早くどっかに行って欲しかったんですよね。私、その時、畑を耕していたんですよ。この後、水やりもありましたしね。生活かかって忙しいんですよ。捕り物は他所でやってくださいよ。



ボロをまとった小娘&泥だらけの顔と手を見て、やる気のなくなったオッサンたちは捨て台詞を残して小屋の方へ向かいました。



その後ですかね。

ものすごい轟音と供に半径一キロメートルほど吹っ飛びました。

私は魔法のおかげで助かりました。きっと結界魔法にでも引っかかったか、爺さんわかって吹っ飛ばしたかですよね。案外お茶目さんでしたから。老い先短いと観念してたんでしょうね。それにしても道連れにされた人たちが可哀想なんじゃないですか? あれじゃ何も残っていませんよ?



って、ああっ!



私これから身一つでどうやって生きてけばいいんですかねぇ。



爺さん、なんか遺産残してから逝ってくださいよっ!





薄情な主人公でスイマセン。

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