002 - 起きたら夢の続きだった
第2話です。
今回から女の子の心情も新たに書き込んでいきます。
「っ、朝か。久しぶりに見たなあの夢。」
窓から差し込んでくる日の光でソースケは目を覚ました。
そしてその目に飛び込んでくるのは見慣れたはずの天井ではなく、
シミ一つ無い真っ白な天井。
「どうなってんだ・・・?」
そして、布団の上から足の上に何かが載っている感触に、そちらへ目を向ける。
するとそこには床に膝をついて、ベッドにうつぶせでもたれ掛かるリアが目いた。
「・・・どうしてこうなった?」
(あれは夢のはず、何故?それともここは夢の続きか?
ほっぺたを・・・つねると痛いな・・・)
ベッドの上で上半身を起こして一人で頬を抓っていると足元のリアが起きだす。
「っ、おはようございます、ソースケちゃん。やっと逢えましたね。」
その笑顔は朝日に照らされソースケを赤面させる。
「おはよう、リアちゃん。」
そして改めてソースケは辺りを見回してみる。
(やっぱりここはウチじゃないよなぁ・・・)
「ねぇ、リアちゃん。
やっぱりここって子供の頃に一緒に遊んだお城?」
「はい、ここは叡智の国ウィンズダムの王宮にある来賓用の客室です。」
「そっか・・・オレの認識だと子供の頃の夢の出来事は全部オレの
想像だと思ってたんだけどな・・・本物だったのか・・・」
途端にリアの表情が曇る。
最初は悲しみに次第に憤慨に。
プンプンと聞こえてきそうな程に。
「ソースケちゃん、そんな悲しい事言わないで下さい。
私はソースケちゃんと会う事をずっとずっと楽しみにしていたのに・・・
それはあんまりよ!」
(ひどいわ、ソースケちゃん。私はずっと待っていたのに!)
「ご、ごめん、リアちゃん。オレもまだ混乱してて。」
(うわー、リアちゃん怒らせちゃったーー)
「うぅー、確かにまだこちらに来たばかりで混乱しているのはしょうがないですけど、
でももうそんな事言わないで下さいね。」
「う、うん、わかったよ。」
(な、何とか誤魔化せた。)
そんなやり取りを行っている時にふとソースケはそもそもな且つ
根本的な事を思い出す。
「そういえばさ、そもそも何でオレは夢でこっちに実体を持って来れてたのかな?
向こう《元の世界》ではオレここで習った魔法は全く使えなかったはずなんだけど。
だからオレがそもそも魔法でこの世界に来たって可能性はないと思うんだよね。」
(そうだよなー、ここで習った魔法、起きた後に習った通りにいくらやっても
そよ風さえ起きなかったのになー・・・)
と、ソースケは首をかしげる。
「そうですね・・・今となっては詳しい所までは分からないです。
しかし、向こうの世界にあってもソースケちゃんに何かしらの魔力的な力が働いた
という事はまず間違いありません。
今回だって私が向こうの世界からソースケちゃんを魔法で喚んだんですから。
ソースケちゃんのいた世界に世界を渡る術があると言うなら別ですが・・・」
「う~ん、少なくともオレのいた世界に他所の世界に渡るような技術は
オレの知る限りでは無いかな。
そうするとやっぱり魔術的な要因か・・・
因みにオレって向こうの世界には帰れるのかな?」
その瞬間リアが泣きそうになる。
「ソースケちゃんは向こうに帰りたいの?
たったさっき会えたばかりなのに。
私と結婚してくれるって言ったのはやっぱり嘘だったの?
っ、もしかして向こうに既に恋人か奥さんがいるの!?
どうなの!?」
(そんな!!私はこんなにソースケちゃんを好きなのに帰るなんて
言わないで!!)
そして声を荒げる。
「い、いや、オレ寝てる所でいきなりこっちに来たし、
あっちはどうなってるのかなぁって。
ちなみにオレは奥さんも恋人もいないよ。」
(あーー、リアちゃんって怒ると怖いなぁ(汗)むしろアブナイ?)
その瞬間さっきまでの剣幕がなりを潜める。
「ご、ごごごごごめんなさい。私勘違いしてたのね。」
そして深呼吸。
「そうですね、ソースケちゃんが夢でこちらに来ていた間隔から推定すると
向こうとこちらはほぼ同じ時間軸で進んでいると考えられますね。
もっともソースケちゃんが夢でこちらの日中に来ていたという事も考えて、
時間まで一緒なのかどうかについては宛てになりませんね。」
「そっかぁ、ちょうど高校も今夏休みに入ったばかりだから
学校は問題なさそうだけど、親は心配するだろーなぁ・・・
ちなみに一度向こうに戻れたりする?」
「今回ソースケちゃんを喚んだおかげで最初に召喚した術式を少しいじるだけで
次からは簡単に行き来出来ると思いますけど、『一旦』帰られますか?
あくまで『一旦』ですけどね。」
(そう、あくまで『一旦』です。)
一旦を強調する。
大事な事なので2度言ったようだ。
「そういえば、オレこっちだと魔法が使たよね?
今でも使えるのかな?」
(え~と、昔習った魔法はと・・・)
フワッとソースケの手に風が生まれる。
「うん、使えるな。
ちなみにその召喚魔法・・・いやオレ自身が移動する訳だから、
移動の魔法か。オレも使えるかな?」
しばしリアは考え込んだ後、
「はい、恐らくはもともと向こうの世界にいたソースケちゃんだったら、
移動は出来ると思います。
ただ、魔法を習ったのは子供の時に限られた部分だけなので、
この魔法を習得するために勉強が必要にはなるかと思いますけど。
一番大変な世界間移動の基礎理論は私が完成させているので、
後はその応用部分を踏まえて覚えるだけになると思います。」
この後暫くリアの講義が続くがソースケは『ほ~』とか『へぇ~』と、
言うばかりであった。
リアはリアでソースケに魔法を教えるのが嬉しいのか目をキラキラさせながら、
講義を続ける。
「・・・で、ですね、世界を渡れると言う事になるんですよ。
分かりました?」
(張り切りすぎて色々言い過ぎたかな?)
「・・・・・・ごめんなさい、すぐには無理です。」
(な、何を言っていたか半分も理解できなかった・・・)
しょぼ~んとなっている。
「時間はたっぷりあるのでゆっくり覚えていきましょう。
それまでは私が送り迎えしますよ。」
(夫を送り迎えする妻かぁ~~)
対照的にリアはモジモジしている。
そのときコンコンと部屋のドアが叩かれる。
そしてドア越しに聞こえてきたのは若い男の声だった。
「エスネリア様、宜しいでしょうか?
父君がお呼びです。」
「分かりました。準備出来次第伺いますと伝え下さい。」
「さて、一旦戻る前に父上と母上に会って貰えますか?」
「え!?」
(今まで流れるままに流されてきたけど、この状況って・・・ピンチ??)
相変わらず不定期ですが、よろしくお願いします。