『弘法大師のプレスマン』
掲載日:2026/10/22
武蔵国のある村は、川から遠いため、雨の少ない夏は、田畑も、村人も、水不足に悩まされていたのでした。あるとき、旅の僧が通りかかり、農家で一杯の水を所望しました。農家のおばあさんは、お坊さんに頼まれて断るなど、考えもしませんでしたので、水瓶にわずかに残った水を差し上げて、これしかなくてすいません、と謝ると、このあたりは水に乏しいのか尋ねられましたので、日ごろの苦労をお話しすると、旅の僧は、表へ出て、つえを一突きしました。するとどうでしょう、地面に穴が空いて、水が湧いてくるではありませんか。それはそれでありがたいのですが、家の前に急に水が湧いても、水浸しじゃありませんか。おばあさんが、やんわりと文句を言いますと、旅の僧は場所を選ばなかったことをわび、何かほかに欲しいものがあったら埋め合わせに差し上げよう、と言うので、おばあさんが、息子が速記を始めたからプレスマンが欲しいと言うと、適当に何本かくれました。
教訓:この僧は、弘法大師だったらしい。ただし、諸説ある。




