"白水受墨"
「僕たちみたいな粘躰が交接を行うと」
怪訝そうに僕は君に尋ねる
「意識まで混ざって、場合によっては戻れなくなると聞くけど………」
君は、ふーっ、ふーっ、と息を吐きながら、僕の両手首を離さない
実のところ、僕には選択権は無いのかも知れなかった
人類種の中でも、僕たち粘躰は特殊で、家には絶対に躰中の水分量を保つため、浴室のような窓の無い多湿の部屋が用意されて居る
衣服を脱いで水の補充を行う事などから、同性同士であれば、裸で同じ場所に居る事も、僕たちの場合は普通に有る
状況の特殊さは「僕が君に組み敷かれて居る」という事、一点だけだった
タイル張りの部屋に、スプリンクラーの音だけがして居る
君があまりに握り締め過ぎたせいで、僕の腕に君の指が混ざる
互いの躰の水が混ざっていく、じゅっ、という音
意識の中身総てが爆発するような気持ち良さが、それに続いてやってきた
声がする
自分の躰が、それに合わせて震えて居る
声は、抑え切れない悦びに、僕が仰け反りながら上げた声だった
「ねえ……」
「嘘だよね、なんかその……」
意識が冷静さを取り戻すと、動揺だけが残る
なんとかして君を宥めたかった
でも、躰の繋がってしまった部分が視えた途端、眼から涙が溢れてきた
「入っちゃってるじゃん……」
「どうするんだよ、これ…………!」
「お前さ、こんな事して病院でなんて言う───」
言い掛けて、息を飲む
僕が泣いて居る様を視て、君は逆に興奮してしまって居るみたいだった
「ねえ」
声が掠れるのは、涙のせいか
心に恐怖でも在るのだろうか
心が落ち着かず、客観的に考える事が出来無かった
「まだ、今なら取れるかも知れないし……」
「誰にも、あの…言わないであげるから……」
君が僕に、捕食のように躰を重ねる
足が重なる
腿が重なる
胴が重なる
指が重なる
腕が重なる
唇が重なる
頭が、重なり混ざる
それが全部、一瞬のうちに起こった
自分のものではない意識が沢山入ってくる
でもそれが、とても心地良かった




