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『空飛ぶ魔王の帰還』 ― 白き大地への別れと、日常戦線へ ―

修学旅行編 最終回

水曜どうでしょう観ながら書いてます。

水曜どうでしょうは、癒しです。

ありがとう水曜どうでしょう!!!

最終章:白き大地への別れと、空飛ぶ魔王の帰還


帰りたくない病と、最後のミッション

旭川からのバスが道央自動車道をひた走り、景色が雪原から徐々に都市のそれへと変わっていく。

新千歳空港。

北の玄関口であり、夢のような修学旅行の終着点。

バスを降りた瞬間、第8班の空気はどんよりと重かった。


「……やだ。帰りたくない」


如月沙夜が、いつになく弱音を吐いた。


「マジで無理……。東京戻ったら、またあの灰色の学校生活? 死ぬ……」


獅子戸レオが、この世の終わりのような顔でキャリーケースにもたれかかる。


「あぁ……私の楽園パラダイスが……。アイドル生活の日々か……」


花園美羽も肩を落とす。

三人は完全に「帰りたくない病」に罹患していた。

この4日間が、あまりにも濃密で、あまりにも幸せすぎた反動だ。

魔王の腕の中で眠り、美味しいものを食べ、心を一つにした日々。それが終わることへの恐怖。

だが、恋問持子は違った。

彼女は空港の巨大な吹き抜けを見上げ、不敵に笑った。


「……何を辛気臭い顔をしておる、貴様ら」


「だってぇ……持子ぉ……」


「甘えるな! まだ終わっておらんぞ!」


持子はビシッと空港の最上階を指差した。


「フライトまであと3時間ある。……これより、最終ミッション『魔王の湯あみ』を敢行する!」


「へ?」



天空の露天風呂(空港温泉)

持子が連れてきたのは、空港内にある**「新千歳空港温泉」**だった。


「くはーっ……! 極楽じゃあ……!」


露天風呂に浸かった持子が、長い手足を伸ばして快哉を叫ぶ。

頭上には冬の空。そして目の前には、轟音と共に飛び立っていくジェット機が見える。


「まさか空港で温泉に入れるなんて……」


沙夜が呆れつつも、お湯の温かさに頬を緩める。


「すごいっすね! 飛行機見ながら裸の付き合いとか!」


レオがバシャバシャと湯を叩く。


「持子さんの背中……流しますぅ♡」


美羽が手ぬぐいを持って背後に回る。

四人は、湯船の中でじゃれ合った。

肌と肌が触れ合う。

言葉はいらない。お湯の温かさと、互いの体温があれば、それだけで不安は溶けていく。


(……ふむ。悪くない)


持子は、湯気に霞む空を見上げた。

小樽でのみそぎ。師匠の墓前での誓い。

心の中にあったおりは消え、代わりに温かいものが満ちている。


「……持子」


沙夜が、そっと持子の肩に頭を乗せた。


「……ありがとう。この旅行、一生忘れない」


「うむ。わしもだ」


持子は沙夜の濡れた髪を撫でた。


「だが、感傷に浸るにはまだ早いぞ? ……風呂上がりには、ソフトクリームが待っているからな!」


「……ふふ。やっぱり持子は持子ね」


思い出のアルバムと、芽吹いた種

風呂上がり、一行は土産物売り場へと突撃した。


「よし! 雪にはこの『佐藤水産のルイベ漬け』と『日本酒』だ! 鮎には『ロイズのチョコポテチ』を箱買いだ!」


持子は魔王の財力(経費)をフル活用し、カート山盛りの土産を買い込んだ。

搭乗ゲート前の待合席。

フライトを待ちながら、レオがスマホを取り出した。


「ねーねー、これ見て! アルバム作った!」


画面に次々と映し出される、4日間の軌跡。


「……あはは! 美羽ちゃん、ラーメンの時すごい顔してる!」


「消してくださいぃぃ! アイドルとしての尊厳がぁ!」

「この持子の横顔……綺麗。待ち受けにしよ」


笑い合う三人の声を聞きながら、持子はふと、内面へと意識を向けた。


(……変わったな)


自分も、こやつらも。

初日は、ただの寄せ集めだった。

孤独な魔王と、壊れた人形たち。

だが今は違う。

小樽で出会った、あの岩のような神職の言葉。


『穢れは祓えばいい』


そして、影安先生が伝えてくれた言葉。


『技の中に、師匠が見えた』


(種は、あったのだ)


自分の中にある、武人の魂。そして、人を愛する心。

それは枯れていなかった。

この北の大地で、この騒がしい仲間たちからの水(愛)を受けて、確かに芽吹き始めたのだ。


(魔王として君臨するのも悪くない。……だが、共に歩むのも、案外心地よいものだな)


持子は、スマホを覗き込む三人の頭を、愛おしそうに見つめた。

空飛ぶ魔王の帰還

『東京行き、514便。搭乗を開始します』

アナウンスが無情にも響く。


「……行かなきゃ」


沙夜が立ち上がる。その背中は寂しげだ。

レオも美羽も、俯いている。


「……帰りたくないなぁ」


そんな三人の背中に、持子の檄が飛んだ。


「顔を上げろ、第8班!」


三人が驚いて振り返る。

持子は、搭乗ゲートの前で、堂々と胸を張っていた。


「勘違いするな。これは『終わり』ではない」


「え……?」


「修学旅行は、ただの『遠征』だ。我々はこれから、日常という名の『本来の戦場』へ帰還するのだ!」


持子はニヤリと笑い、右手を差し出した。


「あの灰色の教室も、理不尽な社会も、仕事も、わしがいれば全て黄金に変えてやる。……貴様らの退屈など、わしが踏み潰してくれるわ!」


その傲慢で、頼もしすぎる言葉。


「……それに」


持子の声が、少しだけ優しくなった。


「わしとの契約きずなは、場所が変わろうと一生切れんぞ? ……覚悟しておけ」


その言葉に、三人の瞳に光が戻った。


「……はいっ! 一生、離しません!」


レオが飛びつき、持子の腕にしがみつく。


「……ふふ。覚悟なんて、とっくにできてるわよ。バカ持子」


沙夜が涙を拭い、持子の左手を握る。


「私もですぅ! 持子さんがいれば、どこだって楽園ですぅ!」


美羽が右手を握る。

四人は強く手を繋ぎ合い、ゲートをくぐった。

離陸した飛行機の窓から、北海道の夜景が見える。

宝石を散りばめたような光の海が、遠ざかっていく。


(さらばだ、北の大地よ。……わしの故郷よ)


持子は心の中で別れを告げた。

過去の孤独も、痛みも、全てこの白い大地に置いていく。

持って帰るのは、新しい自分と、この温かい手のぬくもりだけだ。

機体が雲を抜け、安定飛行に入ると、持子は小さく呟いた。


「……さて。帰るか」


「ただいま、日常せんじょう



エピローグ:羽田の喧騒と、魔王の帰る場所


羽田空港の到着ロビー。


「ご主人様ぁぁぁぁぁ!!」


自動ドアが開いた瞬間、待ち構えていた本多鮎が、音速のタックルで持子に突っ込んできた。


「ぬわっ!? 駄犬! 危ないではないか!」


「寂しかったですぅぅ! 匂い! 北海道の匂いがしますぅ!」


クンカクンカと持子の匂いを嗅ぎまくるトップモデル(残念)。


「……おかえり、持子さん」


その後ろで、社長の立花雪が静かに立っていた。いつもは張り詰めているその表情に、今日は柔らかな安堵の光が宿っている。


「……無事だったみたいね。少しは、羽を伸ばせた?」


「うむ。……ただいま戻ったぞ、雪」


持子は鮎を引き剥がし、雪の前に立った。

そして、小樽の北一硝子で選んだ、美しい江戸切子の包みをそっと差し出した。


「……土産だ。貴様の好みに合うかは分からんがな」


「あら……」


雪が少し驚き、包みを受け取る。そして、持子の顔をまじまじと見つめ、ふわりと優しく微笑んだ。


「ありがと。……すごく、いい顔になったじゃない」


その言葉に、持子はわずかに目を丸くした。

背後では、沙夜、レオ、美羽の三人が、鮎と笑い合いながら旅の思い出を競うように語り始めている。

その騒がしくも温かい光景を見つめながら、持子の胸の奥底に、じんわりと熱いものが広がっていった。


(……そうか)


かつての自分は、孤独な玉座に座るだけの空っぽの魔王だった。

氷のように冷たく、誰の手も届かない場所に一人でいた。

けれど今は違う。

振り返れば、不器用ながらも自分を慕い、共に歩んでくれる愛おしい「壊れた人形」たちがいる。

帰る場所には、厳しくも温かく見守ってくれる、家族のような存在が待っている。

もう、世界は灰色ではない。

彼女たちが笑い合うこの場所こそが、魔王にとっての真の「楽園」なのだ。


「……雪」


「ん?」


「わしは、良い仲間に恵まれた。……この出逢いに、感謝する」


持子がふと漏らした素直な言葉に、雪は少しだけ目を潤ませ、深く頷いた。


「ええ。……みんな、あなたに出会えてよかったって思ってるわ」


「持子ー! 早く早く! 鮎さんに写真見せるから!」

沙夜がぶんぶんと手を振っている。


「ご主人様の勇姿、一秒たりとも逃さず見ますぅ!」


「よし、わしが直々に解説してやる!」


持子は大きく息を吸い込み、愛すべき騒がしい日常へと歩み出した。

振り返らずともわかる。彼女の背中にはもう、孤独の影はない。

空港のロビーに、少女たちの笑い声がいつまでも響き渡る。

北の大地で過去と決別し、新しい絆を手に入れた魔王。

恋問持子と少女たちの物語は、この温かな帰る場所から、また新たな一歩を踏み出すのだ。


(修学旅行編・完)


今まで欲望のままに書いてましたけど、少しだけ構成とか許されるエロシーンて何かな(バカ)と考えて書きましたら、3回も書き直すことになりました。R15って難しい。


水曜どうでしょうは神!!

大泉洋は神!!

笑いは救いです。

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