『光の都と、廻る夜の観覧車』
天空の密室、あるいは魔王による「愛の洗礼」~愛のマシマシ・スペシャル~
札幌の夜。
4人はホテルを抜け出し、北の歓楽街・すすきののネオンが、雪の舞う夜空を極彩色に染め上げていた。
✴︎地上78メートルの「二周コース」
札幌の繁華街・ススキノ。そのランドマークである商業施設「ノルベサ」の屋上に、巨大な光の輪が鎮座している。
屋上観覧車『ノリア(nORBESA)』。
そのチケット売り場で、恋問持子は黄金の瞳を輝かせていた。
「ほう。……『2周コース』か。気が利いているな」
「でしょでしょ! 1周じゃ物足りないカップルのためにあるんだって! これならゆっくりお話できるし!」
獅子戸レオが、券売機の前で小銭をジャラジャラと投入する。
「はい、4人分! 持子、行こう!」
「うむ。……この鉄の籠で、下界を見下ろすのも悪くない」
(……ふん。カップル用か。だが、今のわしには愛人(Saya)、ペット(Miu)、狂犬(Leo)が揃っている。実質ハーレム、いや、酒池肉林の宴会場みたいなものだな)
持子は内心で不謹慎なことを考えながら、ゴンドラへと乗り込んだ。
赤いシートに4人の美少女がぎゅうぎゅうに座る。
密室のゴンドラが、ふわりと浮き上がった。
✴︎一周目:煌めく宝石箱と、JKたちの修学旅行
「うわぁ~っ! 綺麗! 見て見て、テレビ塔があんなにちっちゃい!」
ゴンドラが上昇すると、レオが子供のように窓にへばりつい
た。
眼下に広がるのは、190万都市・札幌の夜景。碁盤の目に広がる光の海は、宝石箱をひっくり返したような輝きを放っている。
「本当……。雪がレフ板みたいに光を反射して、すごく幻想的ね」
如月沙夜が、頬杖をつきながら外を眺める。
その横顔は、いつもの刺々しさが消え、年相応の少女のあどけなさを覗かせていた。
「ねえねえ持子さん! あそこの看板見てください! 有名な『ニッカウヰスキー』のおじさんですよぉ!」
花園美羽が、持子の袖をクイクイと引っ張る。
「む? どこだ花園」
「ほら、あっちですぅ。……あ、その隣のビルの屋上、配管剥き出しですねぇ。あそこから侵入できそう……(小声)」
「こら、泥棒猫。心の声が漏れているぞ」
持子は美羽の頭を軽く小突いた。
(……悪くない。こうして見ると、こやつらもただの女子高生だ)
(レオの馬鹿騒ぎも、沙夜のすました顔も、美羽の計算高い媚びも……。前世にはなかった、平和な光景だ)
「あ、持子! こっち向いて! 写真撮るよー!」
レオがスマホを構える。
「え、またか? さっきも撮っただろう」
「いいじゃん! はい、チーズ! ……うぇーい! 持子の『キョトン顔』いただきましたー!」
「ちょ、消せ! わしの威厳に関わる!」
「やだねーだ! 家宝にするし!」
「ふふっ。……持子、髪が乱れてるわよ。直してあげる」
沙夜が自然な手つきで、持子の前髪を整える。その指先が、愛おしそうに持子の頬を掠めた。
笑い声が狭い空間に反響する。
お菓子を交換し、夜景を指差し、他愛のない話で盛り上がる。
一周目のゴンドラは、どこにでもある「仲良し4人組」の、温かな時間だった。
だが。
ゴンドラが一周を終え、地上付近の乗り場を通過した二周目に入った瞬間――。
空気が、一変した。
✴︎二周目:黒き聖餐と、満たされる器たち(魔王・モード)
ゴンドラが再び上昇を始める。
ススキノの喧騒が遠ざかり、再び静寂と闇が支配する空へ。
持子は、パーカーのフードを脱ぎ捨て、艶やかな黒髪をファサリとかき上げた。
「……さて」
持子の黄金の瞳が、妖しく光った。
「遊戯は終わりだ。……貴様ら、腹が減っているのだろう?」
その言葉を合図に、ゴンドラ内の空気が重く、粘りつくような湿度を帯びた。
(……やれやれ。いつまでも『友達ごっこ』を続けてやるほど、わしは暇ではない)
(見ろ。この飢えた目をした雌たちを。……わしの魔力を欲して、涎を垂らさんばかりではないか)
ズズズッ……。
持子の背後から、陽炎のような**「漆黒の霧」**が溢れ出し、ゴンドラ内を満たしていく。
それは、彼女の強大な魔力そのもの。
常人には見えないが、契約を結んだ3人の「共犯者」たちには、それが極上の蜜のように見えていた。
「……あぁ……オーナー……」
最初に理性を溶かしたのは、獅子戸レオだった。
彼女は座席からずり落ち、狭い足元のスペースに身体を滑り込ませた。
「待ってた……。その黒い圧力……もっと、もっと踏んで……!」
レオが、持子のブーツに頬を擦り寄せる。
その瞳はトロンと濁り、死にたがりの狂気ではなく、飼い主に甘える忠犬の悦びに満ちている。
「よしよし、狂犬。……そんなに震えるな」
持子は黒い霧をレオの首輪のように巻きつかせ、その頭を乱暴に撫でた。
「貴様の空っぽな器、わしの恐怖で満たしてやる。……存分に怯え、存分に安らげ」
「んぅっ……! 重い……気持ちいい……っ! 生きてるって感じするぅ……!」
(まったく、手のかかる犬だ。恐怖を与えねば生を実感できんとは。……だが、その歪みこそが愛おしい)
「……持子」
隣に座っていた沙夜が、熱っぽい吐息を漏らしながら、持子の肩に頭を預けた。
「寒い……。身体の芯まで冷え切ってるの。……お願い、アンタの熱で、私を溶かして」
氷の女王の仮面は、もうない。
そこにあるのは、愛に飢え、熱を乞う一人の女。
彼女は持子の腕を抱きしめ、自分の胸に押し付けた。
「強欲な女だ。……いいだろう。焦げるほど熱くしてやる」
持子は沙夜の顎を指で持ち上げ、その唇に、魔力を込めた指先を這わせた。
「んっ……ぁ……!」
「貴様の冷たい血の一滴まで、わしの色に染めてやる。……もう二度と、孤独には戻れんぞ?」
「……構わない。アンタの熱で死ねるなら……本望よ」
(口では強がっていても、身体は正直だな。……この冷たい硝子細工のような心を、わしの手の中でドロドロに溶かす背徳感……たまらん)
「持子さぁん……私にも……」
向かいに座っていた美羽が、潤んだ瞳で両手を差し出した。
「私の中、空っぽなんですぅ……。何か盗まないと、手が震えちゃう……。このままだと、持子さんのボタン、毟り取っちゃいそうですぅ……」
「馬鹿者が。……ガラクタなど盗むな。わしが満たしてやる」
持子は美羽の両手を取り、その小さな掌に、濃密に圧縮した魔力の塊を握らせた。
「ほら、受け取れ。これは300万のオルゴールより価値があるぞ? わしの魂の一部だ」
「あぁ……すごい……重たい……♡」
美羽は、その見えない「宝物」を胸に抱きしめ、恍惚の表情を浮かべた。
心の穴が、物理的な質量を持って埋められていく充足感。
彼女の手の震えが止まり、代わりに悦びの震えが指先を走る。
「あったかい……。これがあれば、私、もう何も欲しくないですぅ……」
(金への執着も、盗癖も、結局は愛への渇望か。……安いものだ。わしの魔力など、いくらでもくれてやる)
ゴンドラは、頂上へ。
地上78メートル。
煌めく夜景の中心で、四人は黒い霧の繭に包まれていた。
外部から遮断された密室。
そこでは、魔王が下僕たちに魂を与え、下僕たちが魔王に忠誠を捧げる、冒涜的で神聖な儀式が行われていた。
「……ふふ。可愛い奴らだ」
持子は、自分にすがりつく三人の少女たちを見下ろし、慈愛に満ちた(そして少しサディスティックな)笑みを浮かべた。
(前世では、力でねじ伏せ、金で縛りつけた。だが、今世はどうだ)
(痛みを知らぬ狂犬(Leo)、愛を知らぬ人形(Saya)、満たされぬ泥棒猫(Miu)。……どいつもこいつも、壊れた玩具ばかり)
(だが――だからこそ、わしの手で直してやりたくなる。わしの色に染め上げたくなる)
「食らえ、飲み込め。そして、わしのためにその命を燃やせ」
持子の言葉に、三人が呼応する。
「はい……オーナー……一生、尻尾振ります……」
「あぁ……ご主人様……もっと、壊して……」
「持子さん……大好き……全部、ください……」
三者三様の喘ぎ声が、夜景の中に溶けていく。
二周目のゴンドラは、彼女たちの魂を繋ぎ止める、甘く優雅な檻だった。
持子は、夜空に浮かぶ月を見上げ、ニヤリと笑った。
(……ススキノの夜景か。美しいが、わしの所有物たちの輝きには勝てんな)
(さて、そろそろ地上だ。……魔力を放出した分、腹が減ってきたな)
(この後は、ジンギスカン5人前……いや、10人前はいけるか?)
地上へ降りる頃には、彼女たちの絆は、どんな鎖よりも強く、熱く結ばれていた。
前の消えていた。
前に書いたの探したけど、無い。
もっとちゃんとしたの書いていたはずなんだよ〜




