表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/168

『クラス全員に揉まれる魔王ですが何か?』

✴︎魔王の裸身と、湯けむりの美少女博覧会


登別温泉の夜は更け、夕食の「カニ合戦」を終えた第8班の4人は、一日の疲れと汗を流すべく大浴場へと足を運んでいた。

そこは、日本でも有数の湯量を誇る登別の名湯。

脱衣所に一歩足を踏み入れると、硫黄独特の香りが鼻腔をくすぐる。


「う~ん、この匂い! 卵が腐ったような……いや、大地の香り! 効きそう~!」


獅子戸レオがジャージを豪快に脱ぎ捨て、健康的な小麦色の肢体を晒す。

陸上で鍛え上げられたしなやかな筋肉は、無駄な脂肪がなく、まるで野生動物のような機能美を誇っている。


「ちょっとレオ、服はカゴに入れなさいよ。……品がないわね」


如月沙夜が丁寧に浴衣を畳みながら、冷ややかな視線を送る。

その肌は、透き通るような白磁色。細身ながらも、女優として磨き上げられた曲線美は、硝子細工のような繊細な美しさを放っていた。


「わぁ~、広いですねぇ~♡ 泳いじゃダメかなぁ?」


花園美羽は、小柄ながらも守ってあげたくなるような華奢な肩と、意外とふっくらとした柔らかそうなラインを持つ「妹系」ボディ。あざとくタオルで前を隠しているが、その隙間からは豊満なマシュマロ肌が覗いている。

芸能科に所属する彼女たちは、普段から己の肉体磨きに余念がない。

その輝きは、一般の女子高生とは一線を画すオーラを放っていた。

だが。

それら美少女たちの輝きさえも霞ませる、**圧倒的な「暴力」**がそこにはあった。


「ふぅ……。やはり日本人は湯に浸かってこそだな」


魔王・恋問持子が、悠然と衣を脱ぎ捨てた瞬間だった。


ザワッ……。

脱衣所の空気が止まった。

ドライヤーを使っていた生徒の手が止まり、体重計に乗っていた生徒が息を呑む。

身長175センチ。

神が設計図を引いたとしか思えない、黄金比のプロポーション。

豊かな胸元は重力に逆らうように上向き、極限までくびれたウエストから、弾力のあるヒップラインへと続く曲線は、まさに「動く芸術品」。

雪のように白い肌は、湯気の中で内側から発光しているかのように艶めいている。


「……な、なによアレ……」


「同じ人間……?」


周囲の囁きなど意に介さず、持子はタオル一枚を持って堂々と浴室へ入っていく。

その歩き方一つとっても、ランウェイを歩くトップモデルの風格。

隠そうともしないその堂々たる裸身は、もはや卑猥さを通り越して神々しさすら感じさせた。


「……行くぞ。背中くらいは流してやろう」


「う、ういーっす……(マジかよ、オーナー……裸もバケモノかよ)」


レオはゴクリと唾を飲み込み、その背中を追った。


***


広大な大浴場には、白濁した硫黄泉がなみなみと湛えられている。

持子は、その豊満な肢体を惜しげもなく湯船に沈めた。


「はぁ……。極楽、極楽。この硫黄の香りが、わしの暴虐な魂を鎮めるわ……」


持子が湯船の縁に腕を預け、長い髪をかき上げる。

その仕草だけで、映画のワンシーンのようだ。

クラスメイトたちは、遠巻きにその姿を眺めていた。

憧れと、嫉妬と、畏怖。

高嶺の花すぎて、誰も近づけない。

その沈黙を破ったのは、やはりこの「狂犬」だった。


「うっひょー! 持子パイセン! お邪魔しまーす!」


バシャーン!

レオが助走をつけて湯船に飛び込み、ザブザブと波を立てて持子に接近した。


「おい獅子戸! 湯船で泳ぐな! 波が立つだろうが!」


「だってさー! 我慢できないっしょ、これ!」


レオは持子の隣に陣取ると、いきなりその二の腕にギュッと抱きついた。


「なっ!? き、貴様……!」


「すっげ! 何これ!? 肌スッベスベ! マシュマロ!? いや、高級羽毛布団!?」


レオは興奮気味に、持子の濡れた肌に頬ずりをする。


(……ヤバい。オーナーの肌、マジで気持ちいい……)


(これ、私だけの特権だよね? 契約したもんね?)


レオの瞳が、恍惚と優越感で怪しく光る。

しかし、口調はあくまで「仲の良いクラスメイト」を演じていた。


「ねえねえ、持子! 何食ったらこんな肌になんの!? カニ!? やっぱカニ!?」


「ええい、離れろ! 鬱陶しい! ただの肉だ、肉!」


持子が顔を赤らめてレオを引き剥がそうとするが、レオは「えー、減るもんじゃないじゃん!」とさらに密着する。

その様子を見ていた周囲のクラスメイトたちが、顔を見合わせた。


「……あれ? 獅子戸さん、普通に触ってる?」


「怒られてない……?」


「もしかして、恋問さんって……怖くない?」


「ねえねえ! 私も触りたい!」


「私も! 恋問さん、どこのボディクリーム使ってるんですか?」


「そのくびれ、どうやったらできるの!?」


レオが突破口を開いたことで、せきを切ったようにクラスメイトたちが殺到した。


「ちょ、待て! 貴様ら、寄るな! 狭い! 暑い!」


「キャハハ! 逃がさないよー!」


「うわっ、ほんとだ! 雪見だいふくみたい!」


四方八方から伸びる手、手、手。

ある者は背中をさすり、ある者は二の腕をプニプニと押し、ある者は大胆にも太ももの弾力を確かめる。

湯船の中は、さながら美少女たちの芋洗い状態となった。


「あ、あぅ……っ! そこは、くすぐったい……っ!」


「恋問さん、意外と声かわいい!」


「ここ気持ちいい? ここ?」


(ぬうう……! 近い! 柔らかい! いい匂いがする!)


(だが落ち着け、わしは今、女子高生なのだ! ここで鼻血など出せば社会的死だぞ! ……し、しかし……悪くない!)


持子は満更でもない表情で、されるがままになっている。

孤独な暴君だった前世では考えられない、肌と肌のぶつかり合い。

それは、彼女が求めていた「普通の青春」の形でもあった。


***


そんな喧騒から離れた湯船の端で。

二人の少女だけが、冷めた目でその光景を見ていた。


「……猿山ね。キャンキャンうるさい」


如月沙夜は、お湯につけた手ぬぐいを肩に乗せ、不機嫌そうに呟いた。


「あんな脂肪の塊に群がって、何が楽しいんだか。……品がないわ」


彼女は持子の方を見ようともせず、自分の世界に閉じこもっている。

だが、その視線が時折、持子たちの輪を寂しげに掠めていることに、本人は気づいていない。

その隣では、花園美羽が頭にタオルを乗せ、計算高い目で持子を見ていた。


(へぇ……。あのガードの堅い持子さんが、あんなに揉まれてる……)


(……有料ハグ会とか開いたら、一回5000円はいけるな。いや、あの肌なら1万か? チェキ付きなら……)


美羽は指先でお湯に文字を書きながら、持子の「商品価値」を再計算していた。


(ま、私はタダでも触りたくないけどね。……あんなに持ってたら、盗む気も失せるわ)


湯けむりの向こうで、持子の悲鳴とも歓声ともつかない声が響く。


「だーかーら! 胸を揉むなと言うておろうが!!」


「えー! 減るもんじゃないしー!」


「レオ、貴様……後で覚えておれよ……!」


「ういーっす! (ゾクッ♡)」


地獄谷の夜は、騒がしく更けていく。

魔王と狂犬、そしてまだ心を閉ざした二人の少女。

奇妙な修学旅行の一日目が、こうして幕を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ