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魔王、故郷へ還る。~修学旅行という名の凱旋~

3回くらい書き直しました。

もう無理となったので、アップします。

途中で趣味の部分が強く出て、もう全てが足りないです。

修学旅行編


プロローグ:忠犬の遠吠えと、社長ママの送り出し


早朝の代官山、トップモデルの乱心


11月の早朝。まだ薄暗い代官山の高級マンション前に、悲痛な叫び声が響き渡っていた。


「いやぁぁぁっ! 私も行くぅぅぅ! ご主人様ぁぁぁ! 置いて行かないでぇぇぇ!」


芸能事務所「スノー」の送迎車アルファードのステップにしがみついているのは、日本を代表するトップモデル、本多鮎である。

普段の彼女は、「国民の妹」として老若男女から愛され、数々のCMや雑誌の表紙を飾るカリスマだ。

学業においても、トップクラスの成績を誇り、有名大学への推薦も確実視される才色兼備の優等生。

クライアントやスタッフからの人望も厚く、その完璧な笑顔は「一億円の価値がある」とさえ言われている。

だが。

今の彼女に、その欠片もない。


「離せ、鮎! 貴様の鼻水でわしの制服が汚れるだろうが!」


魔王・恋問持子が、足元にまとわりつく鮎を必死に引き剥がそうとしていた。


「嫌ですぅ! 北海道なんて寒いところに、ご主人様をお一人で行かせるなんて! 私が湯たんぽになりますからぁ! トランクに入りますからぁ!」


「馬鹿者! 貴様は高校三年生だろう! 修学旅行は二年生の行事だ!」


持子が呆れ果てて叫ぶ。


「それに、今日は大事なCM撮影が入っておるはずだぞ。スポンサー様を待たせる気か!」


運転席の窓が開き、社長の立花雪が冷ややかな視線を送った。


「その通りよ、鮎ちゃん。……あんた、今の自分がどう見えてるか分かってる?」


雪が深いため息をつく。


「あんたは今、引く手あまたの売れっ子なの。今日も現場で50人のスタッフが、あんたの『完璧な笑顔』を待ってるのよ。……それなのに、なにこのザマは」


雪の視線の先には、髪を振り乱し、持子のローファーを舐めんばかりの勢いで懇願する「残念すぎる美女」の姿。


「あぅ……で、でもぉ……雪さん……愛ゆえに……」


「愛だろうが何だろうが、仕事に穴を開けるならクビよ」


雪の声色が、スッと低くなった。

その背後から、**「本物の殺気」**が立ち上る。


「ひっ……!」


鮎の動きがピタリと止まった。

そこへ、持子がしゃがみ込み、諭すように鮎の頭を撫でた。


「……諦めろ、鮎。わしがいない間、事務所しろを守るのが貴様の役目だろう?」


「ご、ご主人様……」


「良い子で留守番をしていれば、土産くらいは買ってきてやる。『白い恋人』でいいか?」


魔王からの慈悲(という名の餌)。

鮎の瞳に、理性の光が戻った。


「……はいっ! 分かりました! 私、日本で一番良い子で待ってます! だから……私のこと、忘れないでくださいね……?」


「うむ。忘れるものか(色んな意味で)」


ようやく鮎が手を離すと、持子は素早く車に乗り込み、ドアを閉めた。


「出せ、雪! 気が変わらんうちに!」


「はいはい」


車が滑るように走り出す。

リアウィンドウ越しに見ると、鮎はまだ道端に立ち尽くし、車が見えなくなるまで大きく手を振り続けていた。

その姿は、まるで主に置き去りにされた捨て犬そのものだった。



✴︎車内の説教部屋


首都高速に入ると、車内には静寂が訪れた――わけではなかった。


「……はぁ」


ハンドルを握る雪が、重たい溜息を吐いた。

そして、バックミラー越しに後部座席の持子を睨みつけた。


「持子さん」


「……な、なんだ雪。わしは何もしておらんぞ」


持子がビクリと身を縮める。


「あんたねぇ……。飼い主なら、ちゃんとペットのしつけをしなさいよ!!」


雪の怒号が車内に響いた。


「あの子、最近どんどん情緒不安定になってるじゃない! 現場では完璧な優等生なのに、あんたが絡むとIQが3くらいになるのよ! 私の胃の身にもなりなさい!」


「す、済まん……」


天下の魔王・董卓も、この「母」には頭が上がらない。

持子はシュンと肩を落とし、小さくなった。


「わしも困っておるのだ……。あそこまで依存される覚えはないのだが……」


「あんたが無自覚に魔力エサを与えるからでしょ! ……ったく、帰ってきたら鮎ちゃんのメンタルケアも頼むわよ」


「う、うむ。善処する……」



✴︎旅立ちの朝と、雪解けのデレ


車は羽田空港の出発ロビーに到着した。

持子はトランクを降ろし、雪に向き直った。


「では、行ってくるぞ雪。……土産はカニでいいか?」


「カニもいいけど、あんた自身の無事が一番のお土産よ」


雪は運転席から降りてくると、持子の前に立った。

そして、少し曲がっていたコートの襟に手を伸ばした。


「……もう。襟、曲がってるわよ」


雪の細い指が、持子の胸元を整える。

その距離、わずか30センチ。

持子の心臓がドクンと跳ねた。


(ぬおっ……!? ち、近い! 推しの顔が近い! 雪のいい匂いがする……!)


持子が緊張でカチコチに固まっていると、雪の手がふと止まった。

彼女は、綺麗に整った持子の制服姿と、大人びた美しい顔立ちをじっと見つめた。

かつて札幌で拾った時は、たった一年程前、孤独で、世界を呪っていた小さな女の子だったのに。

今はこうして、立派に(中身は魔王だが)成長して、修学旅行へ行こうとしている。


「……ん、よし。綺麗になった」


雪がポツリと呟いた。

その頬が、朝焼けのせいだけではない、ほんのりとした朱色に染まる。

彼女は恥ずかしそうに視線を逸らしつつも、口元を緩ませた。


「……やっぱり、あんたは私の自慢のモデルね。……行ってらっしゃい、持子」


いつもの社長としての威厳を保とうとしているが、隠しきれない愛情デレが滲み出ている。

その破壊力に、持子の顔もボンッと赤くなった。

だが、魔王としてのプライドが、素直になることを許さない。


「ふ、ふんっ!」


持子は顔を背け、ぶっきらぼうに鼻を鳴らした。


「子供扱いするな。……わしはもう、自分の足で歩ける魔王だぞ」


少し尖った口調。精一杯の反抗。

だが、その耳まで赤くなっているのを、雪は見逃さなかった。


(……ふふ。ほんと、中身はおっさんなのに……こういう所は可愛げがあるんだから)


雪は心の中でくすりと笑い、愛おしそうに持子の肩を叩いた。


「はいはい、魔王様。……じゃあ、聞いて」


雪の表情が、優しく、真剣な「母」のものになる。


「いい、持子さん。……久しぶりの故郷(北海道)なんだから、楽しんできなさい」


「……」


「ちゃんと友達作って、美味しいもの食べて、普通の高校生みたいに『青春』してきなさいよ。……悪いことはするんじゃないよ? 補導されたら、私、迎えに行かないからね」


心配と愛情が入り混じった小言。

持子は苦笑しながら、その言葉を受け止めた。


「……ふっ。誰に向かって口を利いておる」


持子はトランクのハンドルを握り、ニヤリと不敵に笑った。


「だが、承知した。……魔王らしく、派手に青春を謳歌してきてやろう」


「いってらっしゃい」


「行ってくる」


持子は一度だけ手を上げると、振り返ることなく空港の自動ドアへと向かっていった。

その背中は、モデルとして磨かれた美しさと、これから始まる「征服(修学旅行)」への期待で輝いていた。

改行だけで済んだ

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