【悲報】元ライバルを引き抜いたら借金二億残りました。
魔力のエステです。
いかがわしい行為ではありません。
R15です。
『魔王の債務返済計画』
――漆黒の魔力充填と、輝ける地中海への旅立ち――
二億円の負債と、目前に迫るビッグオファー
七月の熱気が、代官山の高級住宅街を包み込んでいた。
だが、芸能プロダクション『スノー』の事務所内は、極寒のシベリアよりも冷え切っていた。
「……借金、しめて二億円。これが今の私たちの現実よ」
社長の立花雪は、デスクに突っ伏して深いため息をついた。
その視線の先、フローリングの床の上には、恋問持子と本多鮎が並んで神妙に**『正座』**をしている。
「本来なら鮎、貴女は刑務所行きよ。反社を使って私と持子を拉致監禁し、傷害未遂……。それが示談金と移籍金で済んだのは、奇跡に近いわ」
「……はい。本当に、申し開きもございません……」
本多鮎が、床に額がつくほど深く頭を下げる。かつての大手事務所の看板モデルも、今はすっかり毒気が抜け、従順な下僕として縮こまっていた。
「だが雪よ。その二億円、返せない額ではあるまい?」
持子が正座のまま胸を張り、机の上の書類――煌びやかなロゴが踊る『出演依頼書』を顎でしゃくった。
「うむ。国内最大手化粧品ブランド**『ルミナス・ドロップ』**。その夏キャンペーンのメインモデル……しかも、わしと鮎のダブルキャストだ」
そう、これが唯一にして最大の希望だ。
地中海のリゾート地での海外ロケ。ギャラは破格。成功すれば、借金返済の大きな足がかりになる。
「ええ、そうね。この仕事は継続よ。……でも、出発はもう数日後なのよ!」
雪が悲鳴に近い声を上げる。
「今は七月! 撮影は待ってくれないの! でも手元には渡航準備金すらない! だから私は、この契約書を担保に、今から銀行へ頭を下げてこなきゃいけないの!」
雪はバンッ! とデスクを叩いて立ち上がった。
リクルートスーツを整え、決死の覚悟を目に宿す。
「いい? あんたたちは出発までに、コンディションを完璧に整えておきなさい。肌荒れ一つ許さないわよ! ……行ってきます!」
「うむ、大義である。吉報を待っておるぞ」
バタン! と重い扉が閉まる。
嵐が去り、静寂が戻った事務所で、持子と鮎は顔を見合わせた。
✴︎丹田の黒き太陽、美の共鳴
防音扉で隔てられた浴室。そこは、世間の喧騒と借金の重圧から遮断された、桃色の湯気が立ち込める「犬小屋」だった。
「はぁ、はぁ……ッ! 持子さま、持子さまぁ……♡」
本多鮎は、浴室のタイルにちょこんと座り、濡れた瞳で背後の主を見上げていた。
だが、その表情には深い悔恨の色が滲んでいる。
「持子さま……。私、二億円も……。あんなに酷いことをしたのに、救っていただいた挙句、借金まで背負わせて……」
しゅん、と見えない犬耳が垂れ下がっている。
彼女は覚えている。自身の醜さに絶望し、死を乞うたあの夜。持子はそんな自分に「死の接吻」を与え、内側の怪物を喰らい尽くして救ってくれた。
「馬鹿者め」
持子は優しく、しかし絶対的な支配者の威厳で、鮎の濡れた髪を撫でた。
「雪の言った通りだ。泣いている暇があれば、美しくなれ。数日後の地中海……あの太陽の下で、貴様はわしの引き立て役として、最高の輝きを見せねばならんのだぞ?」
「はい……っ! もちろんです! 私は持子さまの『影』として、貴女様の美しさを世界で一番際立たせてみせます……ッ!」
鮎の瞳に、狂信的なまでの忠誠の光が宿る。
「くく、良い心がけだ。……ならば始めよう。貴様とわしの魂を練り上げ、ただの人間では到達できぬ美の領域へと昇華させる儀式を」
持子が、鮎の滑らかな背中に手を添える。
その瞬間、持子の下腹部――**丹田**の奥底で、何かが蠢いた。
すべての光を飲み込み、すべての不純物を浄化する、完全なる『漆黒』。
星の核よりも重く、夜の闇よりも深い、純粋な魔力の塊だ。
「あぁ……っ! くん、くん……♡ 持子さまの匂い……黒い……すごい……っ♡」
「受け取れ。これがわしの覇気、わしの魂の色だ。……貴様の細胞一つ一つを、わしの色で染め上げ、作り変えてやる」
ドクンッ。
持子の丹田から、漆黒の魔力が奔流となって溢れ出し、触れた手のひらを通じて鮎の体内へと流れ込んでいく。
「あぅんッ♡!!」
鮎の喉から、愛らしい鳴き声が漏れた。
それは単なる快楽ではない。
人間が持つ生命力とは次元の違う、濃厚で重厚なエネルギー。それが鮎の血管を駆け巡り、疲労物質を食らい尽くし、肌のキメをミクロ単位で整え、髪の一本一本にまで魔性の艶を与えていく。
「はぁぁぁあんッ♡ す、すごぉい……! 黒いのが、丹田から……私の中に、どろどろって入って……私が、綺麗になっていくのが分かりますぅ……っ!」
鮎は陶酔し、自らが美しい器へと作り変えられていく感覚に身を委ねた。
そして、その絶対的な服従と賛美の心は、逆に持子へと還流する。
「そうだ、もっと崇めよ。貴様のその純粋な信仰心が、わしの魔力をさらに研ぎ澄ますのだ」
鮎が美しくなればなるほど、その主である持子の輝きもまた増していく。
浴室を満たす桃色の湯気は、二人の魔力がぶつかり合い、混ざり合うことで、黄金の粒子を帯び始めていた。
「もう、持子さま以外考えられませんぅッ! もっと、もっと私を……貴女様好みの『美』に作り変えてくださいぃッ!」
「貪欲な犬め。……よかろう、地中海の太陽すら霞むほどの、極上の女に仕立て上げてやる」
持子は鮎を強く抱きしめ、互いの肌と魂を擦り合わせるようにして、美の高みを駆け上がっていった。
浴室の鏡は、もはや二人の放つ熱気とオーラで白く染まり、何も映し出せないほどだった。
✴︎圧倒的な美の顕現
数時間後。
事務所のドアが開き、疲れ果てた雪が戻ってきた。
「た、ただいま……。あぁ、もうダメ……銀行の担当者、マニュアル通りの対応しかしないんだから……」
雪はよろめきながら靴を脱ぐ。
心身ともに限界だった。二億円という数字が、鉛のように肩にのしかかっている。
その時だった。
「おう、お帰り雪。……遅かったではないか」
脱衣所の扉が開き、湯上がりの二人が姿を現した。
雪は、ハッと息を呑んだ。
「え……?」
そこにいたのは、ただのタレントとモデルではなかった。
バスタオルを纏っただけの姿なのに、発光しているかのような圧倒的な美が、そこにあった。
持子の肌は、陶磁器を超えた神々しい白さを放ち、その黄金の瞳は見る者の魂を吸い込むような引力を帯びている。
そして鮎。以前のような刺々しさは消え失せ、代わりに、濡れたような艶めかしさと、どこまでも澄んだ透明感を纏っている。その肌は内側から輝き、この世のものとは思えないほど美しい。
(な、なんなの、これ……!?)
雪は疲れも忘れ、呆然と二人を見つめた。
ただお風呂に入っていただけのはずなのに、まるで高級エステに一ヶ月通い詰めた直後のような――いや、生まれ変わったかのような「格の違い」を感じる。
二億円の借金など、この二人の美貌の前では端した金に思えてくるほどの説得力。
「ど、どうしたの二人とも……? なんか、すごく……綺麗になってない?」
雪の問いに、持子はニヤリと不敵に笑い、さらに美しさを増した鮎の腰を引き寄せた。
「ふふん。地中海へ征くのだぞ? 雪の言いつけ通り、わしらが本気を出して『仕上げて』おいたのだ」
「はいっ! 私たちは今、最高のコンディションです……! 雪さんのためなら、どんな撮影だってこなしてみせます!」
鮎もまた、頬を紅潮させ、自信に満ちた笑顔を向ける。
その身体の奥底、丹田の深淵には、誰にも見せない**「持子の黒」**がたっぷりと溜め込まれ、美の燃料として燃え盛っていることを、雪だけが知らずにいた。
「……はぁ。もう、あんたたちって本当に……」
雪は呆れたように、しかしどこか救われたような顔で苦笑した。
この圧倒的な美があれば、『ルミナス・ドロップ』の撮影も、二億円の返済も、決して不可能ではない――そう思わせてくれる力が、今の二人にはあったからだ。
「よし! じゃあ、すぐに出発の準備よ! 地中海で、その美しさを世界に見せつけてやりなさい!」
「応!」
「わふっ!(はいっ!)」
借金と秘密を抱えた『スノー』の一行は、輝ける地中海の夏へと、今まさに飛び立とうとしていた。
深夜はバカになります。




