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『極黒の魔王と女装陰陽師のゲーセンデート ~懐柔任務のはずが親友とラーメン二郎作戦が爆誕した件~』

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✴︎『極黒の魔王と女装陰陽師のゲーセンデート ~懐柔任務のはずが親友とラーメン二郎作戦が爆誕した件~』


極黒の魔王・恋問持子を巡る、各陣営のエリート工作員たちによる血で血を洗う接待デートリレー。

波乱の土曜日が明け、決戦の舞台はいよいよ日曜日へと持ち越された。

TIAの修羅の巫女・風間楓から突きつけられた絶対条件。

『一、時間は厳守。午前9時から午後3時までに次の者へ無傷で引き継ぐこと』

『二、お菓子と食事には絶対に連れて行くこと。空腹にさせれば命の保証はない』

『三、この時間内に持てる全てを駆使して、懐柔・引き抜きを完了させること』

この過酷なデス・ゲームの第三走者として選ばれたのは、陰陽庁執行部「六壬」からの刺客、土御門朔夜つちみかど さくやであった。


***


――日曜日、午前9時00分。

都内の待ち合わせスポットに、周囲の視線を文字通り『独占』する絶世の美女が立っていた。

恋問持子である。昨夜、楓とクローゼットをひっくり返して選び抜いた『気合い入りまくりの超絶綺麗な春服』に身を包んだ彼女は、春のそよ風にシフォンスカートを揺らし、まさに降臨した女神のようなオーラを放っていた。


「……ふはははっ! さあ来い、陰陽庁の刺客よ! 今日のわしは宇宙一美しいぞ!」


ドヤ顔で待ち構える持子の前に、ペタペタと気怠げな足音を立てて朔夜が現れた。

身長155cm。銀髪のショートボブに、吸い込まれそうなほど大きな瞳。どう見ても『守ってあげたくなる可憐な美少女』だが、れっきとした男だ。彼は気合いの入った持子とは対照的に、いつも通りのダボダボのカーディガンを羽織っていた。


「……おはよう。うん、服、気合い入ってるね。すごく似合ってるよ」


「おおっ! そうであろう、そうであろう! 楓が選んでくれた……」


「……でも僕、歩くの面倒くさいから、すぐそこの建物に入ろ」


クルッ。

朔夜は、持子をエスコートする気など微塵も見せず、すぐ背後にある巨大な『大型ゲームセンター』へとスタスタ歩いて行ってしまった。


「なっ!? き、貴様! このわしの完璧なデート服をゲーセンにぶち込む気か!?」


「だって、インドアの方が疲れないし。それに、君もゲーム好きでしょ?」


「……ふははっ! 良いだろう! わしをただのモデルだと思ったら大間違いだぞ! ゲーセンの覇王の力、見せてやるわ!」


かくして、陰陽庁の刺客と極黒の魔王による『インドア同盟結成・カオスなゲームセンター白熱デート』が幕を開けた。


***


「……あ、そうだ。はい、これ」


ゲーセンの休憩スペースに陣取った直後。

朔夜はダボダボの袖から、桐箱に入ったいかにも高級そうな和菓子を差し出した。

楓の条件その二、『ティータイム(お菓子)には絶対に連れて行くこと』を早々にクリアするための供物である。


「おおっ!? なまら美しい菓子ではないか!」


「京都の御用達の老舗に作らせた特注の『季節の練り切り』だよ。……余ったからあげる」


持子は絶世の美貌を綻ばせ、遠慮なく練り切りをパクッと口に放り込んだ。

モグモグ……ゴキュッ。


「うむ、上品な甘さだ! だが一口サイズで腹の足しにはならんな! もっとないのか!?」


「……ないよ。図々しいな。ていうか、味わって食べてよ……面倒くさいなぁ」


朔夜は呆れたようにため息をついた。

持子はそのツンデレ気味な態度を気にする風でもなく、机に頬杖をつきながら、じーっと朔夜の姿を観察し始めた。


「……なに。人の顔をジロジロ見て」


「いやな。前々から気になっておったのだが。貴様、男のくせになぜそんな『女装』めいた格好をしておるのだ?」


持子の直球すぎる質問。

朔夜は特に慌てる様子もなく、淡々と答えた。


「別に、呪術的な意味とかないよ。単なる僕の趣味。……それに、このダボダボのカーディガンは、袖の中に大量の『式神札』を隠しやすいし、動きやすいんだ」


朔夜は袖口をチラリと捲り、そこに仕込まれた呪符を見せた。


「それに……可愛い服を着て何が悪いわけ? 僕に似合ってるんだから、別にいいでしょ」


「ふはははっ! 堂々としておるな! 確かにその可憐な顔立ちにはよく似合っておるわ!」


持子は豪快に笑い飛ばしたが、次の瞬間、黄金の瞳をスッと細め、極めて深刻な顔つきで身を乗り出した。


「……ならば、もう一つだけ爆弾質問をさせてもらうぞ。貴様、恋愛対象は『男』か? それとも『女』か?」


ゴクリ。持子は固唾を飲んだ。

彼女(中身は董卓)にとって、男からの『BL的アプローチ』は、物理攻撃が通じない未知の精神攻撃コズミックホラーに等しい。以前、吸血鬼エティエンヌから受けた狂気的な求愛のトラウマが蘇るのだ。

朔夜は怪訝な顔をしながらも、即答した。


「……は? 普通に『女』が好きだけど」


――その瞬間。


「おおおおおおおッッ!! 神よ……! 感謝するゥゥゥッ!!」


ガタッ! と椅子から立ち上がった持子は、天を仰ぎ、両手を広げて歓喜の雄叫びを上げた。

心底、心の底からの異常なまでの『安堵』だった。


「よ、良かった……! 本当に良かった! 貴様がただの『可愛い服が好きなノーマルな男』で! わしはてっきり、またあのアホ吸血鬼のようなカオスな事態になるかと……ヒィィッ、思い出しただけで鳥肌がッ!」


「……何一人で震えてるの。意味わかんないし、面倒くさい」


ドン引きする朔夜をよそに、すっかり安心しきった持子は「よし! ゲームだゲーム!」と筐体へと走っていった。


ピコピコピコ……ドガァァァンッ!!


「オラァッ! そこで隙を晒したな! くらえ、わしの超絶コンボォォッ!」


「……甘いよ。君のプレイング、大味すぎるんだって。そこはこうやって、フレームの有利を取ってから……カウンター」


K.O.!!


「ぐあぁぁぁっ!? ま、負けただとぉぉっ!?」


格闘ゲームの筐体の前で、持子が頭を抱えて絶叫する。

朔夜の『式神操作で鍛え上げられた異常な反射神経』は、持子の魔王としての動体視力を凌駕し、ゲーム上で容赦なくボコボコにしていた。


「……ふぁ。もう飽きた。クレーンゲームやろ」


「待て待て待て! 泣きのもう一回だ! 次は絶対に勝つゥゥッ!」


ギャーギャーと騒ぐ絶世の美女と、それを淡々とあしらうダボ服の美少年(?)。

二人のカオスな遊びは、昼過ぎまでぶっ通しで続いた。


***


――午後1時00分。

『二、食事には絶対に連れて行くこと』の条件を満たすため、朔夜はゲーセンに併設された高級すき焼き店へと持子を案内した。

ジュワァァァァッ……。

最高級の黒毛和牛が、甘辛い割り下の中で音を立てる。


「ふははははっ! 肉だ肉だァァッ!」


持子は、気合いの入った春服に肉汁が飛ぶのも構わず、無限に湧き出るブラックホールの胃袋へと次々と肉を放り込んでいく。

朔夜は、お茶を啜りながらその光景をチラリと観察した。

(……ターゲット、恋問持子。ガサツで、大食いで、頭が悪くて、さっきゲーセンでエロフィギュア見て喜んでたし……)

工作員としての客観的な評価は、完全に『底辺』である。

しかし。

(……でも、裏表が全くない。自分の欲望に忠実で、変に媚びてこないから……一緒にいて、全然面倒くさくない)

陰陽庁というドロドロとした権力闘争の中で生きてきた朔夜にとって、持子のその『人間臭さ』は、あまりにも眩しく、居心地の良いものだった。

『三、懐柔や引き抜き工作を完了させること』という楓からの命題など、朔夜の頭からはとうに抜け落ちていた。

(……任務とか組織とか、どうでもいいや。なんか、普通に一緒にいるのが楽しいかも)

朔夜はふと、遠回しな言葉を口にした。


「……僕さ」


「ん? なんだ、肉食わんのか?」


「……こういう、ガサツで、頭悪くて、胃袋が底なしのメスゴリラみたいな女……嫌いじゃないかも」

実質的な、朔夜なりの精一杯の『デレ発言(遠回しな告白)』であった。


だが。


相手は、恋愛偏差値がカンストしてマイナスに振り切れている極黒の魔王である。


「……ん? なんだと?」


持子は肉を頬張る手を止め、黄金の瞳をパチクリと瞬かせた。

彼女の脳内で、先ほどの朔夜の発言が凄まじい速度で『致命的な誤解』へと変換されていく。

(ガサツで、大食いの、メスゴリラみたいな女……? つまり、わしのような洗練された絶世の美女ではなく、野生に生きるワイルド女子に恋をしているということか!? そうか、朔夜には他に好きな女がいるのだな!)


持子はポンッと手を打ち、立ち上がって朔夜の肩をガシィッ!と掴んだ。


「ふははははっ! なるほどな、朔夜! 貴様、そんなワイルドな女に惚れておったのか!」


「……え?」


「安心しろ! 貴様はわしのインドア同盟の友だ! この魔王様が、貴様の『恋のキューピッド(作戦参謀)』になってやろうではないか!!」


ドヤ顔で胸を張る持子。 

「は……? いや、あの、君、何言って……」


「大食いのメスゴリラをオトすのに、ちまちました和カフェやすき焼きなど言語道断! わしの完璧な作戦案を授けてやろう! いいか、今度その女を『ラーメン二郎』に連れて行くのだ!!」


ビシィッ! と持子が虚空を指差す。


「そして、『ニンニクアブラカラメ増し増し』を注文し、男らしく一気に平らげてみせろ! 大食いのメスゴリラは、そういう圧倒的なカロリーの暴力と漢気にキュンと来るものなのだ! 絶対に間違いないぞ!!」


「…………ッ」


朔夜は、開いた口が塞がらなかった。


『それ、全部君のことだよ!』と言いたい。喉まで出かかっている。

しかし、あまりにも明後日の方向へフルスロットルで暴走し始めた持子の勢いと、そのピントのズレた自信満々の顔を前に、朔夜のツンデレな性格が邪魔をして、決定的な一言がどうしても言い出せなかった。


「ち、違う、そうじゃなくて……! ああもう、面倒くさい! 誤解だってば!」


「照れるな照れるな! よし、その二郎デートの時は、わしもこっそりついて行って、貴様をサポートしてやるからな! 任せておけ!」


完全に自分を蚊帳の外に置き、プロデューサー気取りでノリノリの持子。

朔夜は両手で顔を覆い、深い深い絶望の淵へと沈んでいった。


「……最悪だ。僕の初恋(?)、なんでこんなカオスなことになってるの……」


***


――午後2時55分。


タイムリミットが迫る中、朔夜は疲労困憊の表情で、次の担当者である『八咫烏』の葉室鶴子との待ち合わせ場所へと向かっていた。


「おい朔夜! アブラは増し増しだぞ! カラメも忘れるなよ!」


「……もういいよ。わかったから、静かにして」


「一、午後3時までに『次の者』へ無傷で引き継ぐこと」。


無傷ではあるが、朔夜の精神的ダメージは計り知れない。

『三、懐柔や引き抜き工作を完了させること』は完全放棄。代わりに『インドア同盟の友人』となり、何故か『恋の相談役(勘違い)』のポジションに収まってしまった。


午後3時00分。

待ち合わせ場所に立つ、黒髪姫カットの大和撫子・葉室鶴子。

朔夜は、魂の抜けたような顔で持子を引き渡した。


「……あとは、任せたよ。面倒くさいから、僕帰る」


「は、はい……? お疲れ様ですわ?」


かくして、『アブラとニンニクの紳士同盟』第三走者、土御門朔夜。

引き抜きは失敗、告白も致命的な誤解を生むという大惨事を招きながらも、魔王の「親友ポジション」を確立し、午前の部が終了したのである!

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