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『四人の刺客と魔王の学園生活』

✴︎桜の花びらもすっかり散り、柔らかな新緑の香りが風に混じるようになった四月末。

新学期のバタバタもようやく落ち着きを見せ始めた、私立聖ミカエル学園の朝。

その芸能科の教室へと続く廊下で、周囲の視線を文字通り『独占』して歩く一人の絶世の美少女がいた。

身長175cm、神が計算し尽くした「黄金比ゴールデンバランス」のプロポーションを持ち、その魂に三国志の暴君「魔王・董卓」を宿す、世界的トップモデル・恋問持子こいとい もちこである。


「持子さぁん♡ 今日のリップ、すっごく似合ってますぅ! 私の持子さんは今日も宇宙一可愛いですにゃぁぁっ!」


「おい泥棒猫! 朝から暑苦しいぞ、離れろ!」


背中にピタリと張り付き、ドロドロとした重い愛を向けてくるのは、同じ芸能科の花園美羽はなぞの みうだ。


——スゥッ……。


「……っ!?」

一切の足音も、空気の揺らぎすらもなく、持子の背後に一つの影が立っていた。神話の女神の魂を宿す修羅の巫女であり、持子の頼れる(そして恐ろしい)後輩、風間楓かざま かえでである。


「か、楓!? 貴様、またその『無足の歩法』で背後を取るなと……!」


「……先輩」


持子の抗議を冷徹な氷の瞳で遮り、楓は身をかがめて持子の耳元で囁いた。


「今日、先輩のクラスに『四人の転入生』が来ます。……気をつけてください。表向きはただの学生ですが、その正体は政府機関と各クランが威信を懸けて送り込んできたエリート工作員たちです。先輩を監視し、あわよくば『懐柔』するためにやってきた厄介な連中です」


「ほう……わしを懐柔、とな。面白いではないか」


「……遊ばないでくださいよ。私は放課後、神社とTIAの任務があるので帰ります。適当にあしらっておいてください」


スッ、と。忠告だけを残し、楓は再び音もなく廊下へと消えていった。

その背中を見送った美羽が、ギリリリッ……! とアイドルらしからぬ殺気を放つ。


「クソッ……! どこぞの工作員どもが、私の持子さんに近づこうだなんて……! 私が全部、八つ裂きにして……!」


「ふははっ! 頼もしいぞ美羽! だが、貴様も歌手としての再デビューが近いのだ、十一時からボイトレが入っておっただろうが」


「ひぃっ!? ゆ、雪社長の……『逃げたら殺す』レッスン……っ! 嫌ですにゃぁぁっ! 私も持子さんと一緒にいたいのにぃぃぃっ!!」


ズルズルズル……ッ。


泣き叫ぶ美羽は、見えない力(マネージャーの圧力)によって強制連行されていった。


***


キーンコーンカーンコーン……。

ホームルームのチャイムが鳴り終わり、担任の影安かげやすの後ろに、四人の見慣れない男女が並んでいた。

美男美女が集まる芸能科のクラスであっても、その四人が放つ異質なオーラは、一瞬にして教室の空気をピンと張り詰めさせた。


「……失礼。霞涼介かすみ りょうすけと申します。皆様と戦略的かつ有意義な学園生活を構築できるよう、尽力いたします」


銀縁メガネの官僚系イケメンが淀みなく一礼する。(彼岸花)


「我が名は天草・クリストファー・流星りゅうせい! 主の導きにより、この学び舎に舞い降りた。迷える子羊ラムたちよ、共に魂の浄化を目指そうではないか!」


金髪碧眼の超絶美形ハーフが、制服の胸元を開けて十字架を光らせる。(聖三条騎士団)


「……土御門朔夜つちみかど さくや。男だよ。……面倒くさいから、あまり話しかけないでくれるかな」


ダボダボのカーディガンを羽織った、可憐な銀髪の美少女(※男)が淡々と毒を吐く。( 陰陽庁執行部・「六壬」)


「ごきげんよう。わたくしは葉室鶴子はむろ つること申しますわ。由緒正しき家柄の者として、皆様とは礼節をもって交友を深めたいと思っておりますわ。オーッホッホッホ!」


黒髪姫カットの大和撫子が、扇子を広げて気品あふれる挨拶をする。(古神道結社・八咫烏)


四者四様、完璧に訓練されたエリート工作員としての隙のない自己紹介(?)。

教室中が彼らの魅力に圧倒される中、窓際の一番後ろの席で、恋問持子だけが退屈そうに頬杖をつき、鼻で笑っていた。


(ふはははっ! なかなか気合が入っておるではないか。だが、いくら美男美女を揃えようと、この神が計算し尽くした『黄金比』を持つわしの美貌の前では、所詮は引き立て役に過ぎんわ!)


***


午前中の休み時間。

四人のエリート工作員たちは、いよいよターゲットである『極黒の魔王』の監視と偵察を開始した。彼らの本日のミッションは「まずは生態を探り、軽く接触して牽制する程度」。

(……ターゲット、恋問持子。一体どれほどの呪力と殺気を隠し持っているのか……)

彼らが息を呑んで持子の動向を監視していると――。


「キャー! そのリップ! もしかして今〜持子ちゃんがやってるCMのやつ!?」


「すっごく発色いいね! さすが『美は支配』って感じ!」


持子の席の周りには、瞬く間に女子たちの華やかな人だかりができていた。


「ふははははっ! その通りだ! わしの美しさをさらに引き立てる至高の逸品よ! ほれ、やるから貴様らも塗ってみろ!」


「えっ、いいの!? やったー!」


「よし、わしが直々にメイクしてやろう! 顎を上げい! ……うむ、見事だ! 貴様の戦闘力かわいさが5000は跳ね上がったぞ!」


「あはははっ! なにそれ持子ちゃん、ウケる〜!」


絶世のスーパーモデルが、普通の女子高生たちに混ざってキャッキャウフフとメイクをして遊んでいる。そのあまりにも平和でキラキラした光景に、工作員たちは面食らった。


「主よ……あの輝きは、悪魔のオーラではなく、ただの女子高生の輝きのようです……」


「……面倒くさいな。もっとドロドロした呪詛とか吐いてくれないと、僕の式神の出番ないんだけど」


流星と朔夜が戸惑う中、持子は今度は男子たちのグループへと移動していた。


「おい持子! 『三國志8 REMAKE with パワーアップキット』、もうやったか!?」


「ふはははっ! 当然だ! わしは初見プレイで徹夜して天下を統一してやったわ!」


「マジか! やっぱ最初は劉備とか曹操でやったの?」


その問いに、持子はバンッ! と机を叩いて仁王立ちした。


「馬鹿者! わしが選ぶのは『董卓』一択に決まっておるだろうが! わしの……いや、あの溢れんばかりのカリスマと圧倒的武力! 最高ではないか!」


「えー、董卓ぅ? あいつすぐ呂布に裏切られて死ぬじゃん!」


「ぐふぉっ!?」


『裏切られて死ぬ』という言葉に、前世のトラウマを抉られた持子が胸を押さえてたじろぐ。


「だ、だからこそだ! わしはゲームが開始した瞬間に、あの裏切り者の呂布を即刻『下野クビ』にしてやったわ!!」


「はあああ!? お前バカか! 呂布は最強の武将だろ! なんでクビにすんだよ!」


「うるさい! あの触角野郎の顔など見たくもないわ! あんな奴と一緒に天下など絶対に取らーん!!」


男子生徒(呂布ファン)と、謎の熱量で口喧嘩を始める持子(前世:董卓)。


「だいたいな! 真の王に裏切り者の息子など不要なのだ! 華雄がいれば十分だわ!」


「華雄すぐ関羽に斬られるじゃんかよー!」


「ぎゃーっ! 言うな! 痛いところを突くなァァァッ!」


「あははははっ! 持子、三國志ガチ勢すぎだろ!」


「ていうか、なんでそんなに董卓に感情移入してんだよ!」


ギャーギャーと楽しそうに騒ぎ合う持子とクラスメイトたち。

その光景を離れた場所から見ていた霞は、銀縁メガネをクイッと押し上げた。

(……ターゲット、想像以上に俗物ですね。なぜ歴史シミュレーションゲームの董卓にあそこまで感情移入しているのかは謎ですが……)

霞が冷静に分析していると、持子たちの話題はさらにカオスな方向へとスライドしていった。


「そういや持子、これ見ろよ。『漢のロマン・極秘エロ本コレクション』!」


「ふははははっ! なんだその雑誌は! 貸せ貸せ、わしにも見せろ! ……おおっ! 素晴らしいプロポーションではないか! なまらそそるぞ!」


男子たちと肩を組み、まさかの『エロ本(表紙:ド迫力のビキニお姉さん)』を片手にゲラゲラと爆笑して盛り上がる絶世の美少女。


「「「「…………え?」」」」


四人のエリート工作員たちの思考が、完全に停止した。


「オーッホッホ……えっ? エ、エロ本……?」


由緒正しいお嬢様として育てられてきた鶴子は、顔をゆでダコのように真っ赤にして扇子で顔を隠し、ワナワナと震え始めた。


「そ、そそそ、そのような破廉恥な……っ! あの方が本当に魔王なのですか!? わたくし、どう監視すればよろしいの……! あわわわわっ!」


***


午後。体育の授業。

女子は体育館でバレーボール、その後は更衣室での着替えタイムである。

鶴子は更衣室で持子を監視すべく、ロッカーの陰からそっと様子を窺っていた。

しかし、そこで彼女が見たのは、この世の地獄……いや、魔王の楽園であった。


「デヘヘヘヘ……。皆の者、今日も素晴らしい脱ぎっぷりだな!」


持子が、鼻の下を限界まで伸ばし、完全に『エロオヤジ』の顔になって女子たちの着替えをガン見していたのだ。


「もー、持子ちゃんってば、またエロい目で見てる〜!」


「ふははっ! 減るもんじゃなし、見せろ見せろ! その若さ弾ける柔肌を!」


「しょうがないなぁ、はいっ♡ セクシーポーズ!」


バッ! と、クラスの女子たちが下着姿のまま、グラビアアイドルのようなセクシーポーズを持子に向かってキメる。

持子にとってはこれが「いつものこと」なため、女子たちも完全にノリノリで遊んでいるのだ。


「おおおおおォォォッ!! 素晴らしい! ビューティフォー! 青春の曲線美! なまら最高だぞ!!」


持子は両手でサムズアップし、感極まって鼻血を吹き出しそうになっている。


「あははははっ! 持子ちゃん、オッサンじゃん!」


「やばい、ウケる〜!」


キャッキャと笑い合う、平和で、少しだけ破廉恥な女子更衣室。


「…………ッ!! 破廉恥ですわ! 破廉恥すぎますわァァァッ!!」


鶴子は扇子で顔を覆い、あまりのインモラルな光景に耐えきれず、更衣室の隅でプシューッと煙を上げて気絶しかけていた。


***


放課後。

四人の工作員たちは、持子をさらに深く調査すべく、彼女が所属する『合気武道部』の道場へとこっそり潜入(見学)していた。

(……来るぞ。極黒の魔王の戦闘訓練。一体どれほどの呪力や殺気が飛び交うのか……)

霞がメガネを光らせ、流星が十字架を握り締め、朔夜が式神を忍ばせ、気を取り直した鶴子が扇子を構える。

しかし。

彼らの目に飛び込んできたのは、驚くほど『普通』の光景だった。


「いいか新入部員ども! 受け身はこうだ! アゴを引け! 床を力強く叩け!」


「「「はいっ!!」」」


「バンッ! バンッ! そうだ、素晴らしい音だ! 次はすり足! 重心を落とせェェッ!」


「「「はいぃぃッ!!」」」


真っ白な道着に身を包み、汗だくになりながら一年生たちに熱血指導を行う持子。そこには、魔王の片鱗も、極黒の魔力も、呪術のジュの字も存在しない。

ただひたすらに、泥臭く、真面目で、体を動かすことを全力で楽しむ「部活の先輩」の姿があった。


「……あの」


朔夜がポツリとこぼす。


「……普通、だね。すごく、普通の部活動……」


「主よ……あの汗は、悪魔の瘴気ではなく、ただの青春の汗のようです……」


流星も十字架を下ろして呆然としている。


「……私の対霊CQCの出番、全くなさそうですね……」


霞がそっと胃薬を飲み込んだ。


***


「ふははははっ! 今日も良い汗をかいたな! よし! 今日もわしの奢りだ! そこでコソコソ見ていた転入生ども! 貴様らも来るか!」


部活後。持子は道場の隅で固まっていた四人をあっさりと見つけ出し、合気武道部の仲間たち(森、千手、一年生たち)と一緒に、強引に「ある場所」へと連行した。

到着したのは、黄色い看板に黒い文字が輝く、伝説のラーメン店。


――『ラーメン二郎』である。


「さあ! 食うぞ!!」


バンッ!! とカウンターに置かれたのは、器の縁から溢れんばかりのモヤシとキャベツの山、分厚いチャーシューの塊、そして背脂が雪のように降り積もった、凶悪極まりない一杯だった。


「「「「……え?」」」」


……四人のエリート工作員たちは、目の前にそびえ立つ『カロリーの暴力』に絶句した。


「ふはははっ! 大将! わしのは『ニンニクアブラカラメ増し増し』で頼むぞ!!」


「あいよォッ!!」


ズバババババッ!! ズルルルルゥッ!!


持子は、絶世の美少女の顔を油でテカらせながら、獣のような勢いで極太麺を啜り上げ、豚肉を貪り食う。


「さあ、貴様らも食え! 遠慮はいらんぞ!」


「あ、あの……恋問様、この油の浮いた茶色い沼は、一体……」


「迷える子羊よ……このニンニクの匂いは、悪魔の……ゲホッ、ゴホッ!」


「……僕、もうお腹痛くなってきた……」


「わ、わたくし、このようなジャンクな食べ物は……っ、うっぷ」


――ドゴォォォンッ。


国家やクランの威信を懸けて送り込まれた、選び抜かれた四人のエリート工作員たち。

初日の監視と挨拶で終わるはずだった彼らのミッションは、持子の底知れぬ食欲と、あまりにも俗物でマイペースな日常の前に、アブラとニンニクの海へとあっさりと沈んでいった。


「ふはぁ〜っ! 食った食った! なまら美味かったぞ!」


満面の笑みで店を出る持子の背後で。

四人の刺客たちは、膨れ上がった胃とニンニクの匂いを抱え、夜風に吹かれながら完全に白く燃え尽きていた。


(……この魔王、思っていたのと全然違う……ッ)


極黒の魔王の、甘くて脂っこくて、そして誰よりも「人間」として毎日を楽しむ騒がしい日常。

それに振り回されるエリートたちの受難の日々は、まだ始まったばかりである。

前から思っていたが、自分はあまり頭が良くない( ; ; )

最初は、政府機関、全クラン(TIA除く)の工作員のプロット作成していける!!!

書き出したら、文章だけ長くなって全然進まないストレスが溜まる。諦めた!!!やってられるか〜!!!

昔テーブルトークのマスターやっていた時は、結構沢山のキャラを動かしていた。あれはプレイヤーがいたからキャラ達が回っていたのであって、自分が優秀な訳ではなかった。書いていてつくづく感じました。プレイヤーの皆さんが優秀だった〜

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