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『血脈の終焉』

✴︎血脈の蹂躙、深淵の双子 ―― 鋼鉄と影の死線


大手町の超高層ビル最上階。本来なら東京の夜景を一望できる展望フロアは、いまや「平将門の首塚」から溢れ出した千年の怨念により、グロテスクな朱塗りの回廊へと作り変えられていた。空間は物理法則を無視して歪み、壁面には無数の呪符が血のように赤く明滅している。その最奥、天を衝く黒い瘴気の渦を背負い、漆黒の玉座に座す影こそが、新皇・平将門公であった。

だが、その玉座へと至る階段を阻むように、二つの影が立ちふさがった。


「……何者だ、貴様ら。父上の邪魔をする不届き者が」


漆黒の狩衣を纏い、影のように透き通った肌を持つ美青年、**相馬将門王そうまのよしかど**が冷徹な声で告げる。


「うふふ、お可哀想に。私の可愛い『がしゃ様』の餌食にしてあげるわ」


凄絶なまでの美貌を誇る妖術使い、**滝夜叉姫たきやしゃひめ**が扇を広げると、天井を突き破らんばかりの巨大な白骨の腕――『がしゃどくろ』が、地を這うような重低音を響かせて出現した。


「ふん、前座のわりには立派なものを揃えておるではないか」


最前線に立つ恋問持子が、黄金の瞳を細めて不敵に笑う。その隣では、風間楓がすでに須勢理毘売命すせりびめのみことの魂に呼応し、神話級の宝具『生太刀いくたち』を召喚して白銀の輝きを放っていた。


「……先輩、ここは別れましょう。無視して進むのは不可能です」


楓の冷静な分析に、持子が頷く。


「ああ。鮎、美羽。それからルージュ。あのアマとガキを引き受けろ。わしと楓は、あの奥の不愉快な椅子に座る男のツラを拝みに行く」


「了解です、持子様! 任せてくださいっ!」


「楓ちゃんの頼みなら、お安い御用ですにゃ!」


持子と楓が玉座へ向けて突進を開始すると同時に、戦場は二つの絶望的な死闘へと分割された。


激突:本多鮎 vs 滝夜叉姫 ―― 砕け散る鋼鉄と姫の落日


「まとめて、塵に成りなさいっ!!」


本多鮎が吠える。彼女の手には、身の丈を優に超える無骨な鉄塊――**『デュラハンの大剣』**が握られていた。


「面の攻撃、開始っ!!」


鮎が大きく踏み込み、大剣を横一文字に薙ぐ。


ズガガガガガガガッ!!


圧倒的な質量を伴う「面の圧力」が、滝夜叉姫が召喚した数万の骸骨兵を正面から粉砕していく。

だが、滝夜叉姫の妖術は鮎の想像を遥かに超えていた。


「甘いわ。がしゃ様、その小娘を圧し潰しなさい!」

がしゃどくろの巨大な拳が、音速を超えて鮎の頭上から降り注ぐ。


ドゴォォォォォォンッ!!


「くっ……あぁぁっ!?」


大剣で受け止めたものの、衝撃波だけで鮎の防具に亀裂が入り、口端から鮮血が伝う。数十トンの質量に、狂戦士バーサーカーの力をもってしても膝が折れかける。


「鮎様! 踏ん張ってくださいまし!」


影の中からルージュが叫ぶ。彼女が花の都パリの地下で300年培った空間把握能力が、敵の術式の綻びを捉える。「あのアマの術式、心臓部の肋骨の三本目に集中していますわ! そこに全ての呪詛が循環する『穴』がありますのよ!」


「分かってる……でも、近寄らせてくれないっ!!」


無数の骸骨兵が鮎の足首に縋り付き、その動きを封じる。がしゃどくろの指先が、鮎の肩を無慈悲に抉った。


「あはははっ! 痛い、痛いよ……でも、持子様が見てる前で、無様な姿は見せられないんだからぁぁっ!!」


『特技・武装換装クイック・チェンジ』。

瞬時に大剣が消え、長大な柄の薙刀――**『岩融いわとおし』**が鮎の手に現れた。

鮎は骸骨兵の頭を足場に跳躍し、がしゃどくろの腕を駆け上がる。「線」の鋭い攻撃で迫りくる白骨の触手を切り裂きながら、心臓部へと肉薄する。


「ここだぁぁっ!!」


岩融の切っ先が、ルージュの指摘した三本目の肋骨の隙間へ、流星のごとき速さで突き立てられた。


「あがぁぁぁっ!?」


滝夜叉姫が悲鳴を上げる。だが、怨霊の姫もまた執念深い。がしゃどくろの胸部から無数の骨の棘が噴出し、鮎の腹部を貫こうと迫る。

交換チェンジっ!!」

鮎は空中で再び『デュラハンの大剣』へと持ち替えた。

突き刺した薙刀の反動を利用し、今度は大剣の「面」で、自身の腹部へ迫る骨の棘を根こそぎ叩き折る。


ガキィィィィィィィンッ!!


衝撃で吹き飛ばされながらも、鮎は着地と同時に再び大剣を振り抜いた。


「最後は『面』でお返しだよっ!! 愛のフルスイングッ!!」


渾身の一撃ががしゃどくろの胸部を粉砕した。


「……そんな、私の……がしゃ、様が……っ!」


滝夜叉姫は血を吐き、扇を落とした。依代としてのがしゃどくろが崩壊し、彼女自身の霊体もまた限界を迎えていた。


「父上……どうか、帝都に……栄光を……」


崩れ落ちるがしゃどくろの骨とともに、滝夜叉姫の体は窓の外、奈落のような闇へと真っ逆さまに落ちていく。彼女の叫びは、夜の風にかき消され、その存在は黒い粒子となって虚空へと溶けていった。


潜影:花園美羽 vs 相馬将門王 ―― 影の迷宮の崩壊


一方、美羽は相馬将門王が操る『影』の迷宮に閉じ込められていた。


「影に潜むなんて、暗殺者の私に言わせれば二流ですにゃ」


美羽は強がってみせるが、周囲は漆黒の瘴気に覆われ、方向感覚が麻痺する『魔力酔い』が襲う。将門公の圧倒的な魔力による結界は、並の術者なら発狂するほどの重圧だった。

将門王の影の刃が、美羽の背後から音もなく伸び、彼女の脇腹を浅く切り裂いた。


「っ……どこですにゃ!?」


「無駄だ。この領域において、俺は影そのもの。貴様の五感など無意味よ」


将門王の声が四方八方から響く。美羽の足元から伸びた影の手が、彼女の自由を奪おうと絡みつく。

「美羽様、惑わされてはいけませんわ!」


ルージュの真紅の瞳が怪しく光る。彼女の特異な感覚は、遠くを見通すのではなく、周囲の魔力の流れを完全に掌握するものだ。


「上空三メートル! 影の濃度が三パーセント上昇……そこに奴の『出口』がありますわ! 影の糸の結び目を断てば、この領域は崩壊しますの!」


「ルージュ……信じますにゃ!」


美羽は属性短刀の中から『風』と『聖』の二本を抜いた。


「属性合成・《断空の聖痕》!」


跳躍し、ルージュが指し示した虚空へ向けて、真空の刃を放射状に放つ。


「ぐわぁっ!? なぜ場所を……!」


悲鳴とともに影の結界が霧散し、実体化した将門王が姿を現した。

だが、将門王もまた「武器の天才」風間洋助に比肩する武人だ。実体化を突かれた衝撃を即座に殺し、二振りの太刀で美羽の首を狙う。


キィィィィィィィンッ!!


至近距離での火花散る剣戟。美羽の腕が、将門王の重い太刀の連撃に悲鳴を上げる。


「これで終わりだ、暗殺者の小娘!」


将門王の太刀が美羽の心臓を貫こうとした瞬間、美羽は獣のような笑みを浮かべた。


「……待ってましたにゃ」


彼女の手には、属性を循環させた七本の短刀が、狂気的な魔力とともに回転していた。


「属性循環・《七牙連斬しちがれんざん》!!」


炎、水、風、土、雷、聖、闇。七つの相反する力が、将門王の太刀を粉々に砕き、彼の胸部をズタズタに切り裂いていく。


「がはっ……父上……申し、訳……」


将門王の身体が、黒い粒子となって崩壊していった。


終幕:王への路


後方で繰り広げられた死闘の決着を感じ取り、持子が満足げに口角を上げた。「神格の子供たち」の撃破。それを成し遂げたのは、持子が選んだ、規格外の「絆」だった。


「先輩。雑音は消えました。……あとは、将門公だけです」


楓が神々しい『生太刀』を構え直す。

その視線の先。

玉座からゆっくりと立ち上がったのは、千年の怨念をその身に宿した武神、平将門公。


「よくぞ、ここまで辿り着いた。……須勢理毘売の転生体よ。そして、大陸の覇者の魂を持つ魔王よ」


今、帝都の運命を賭けた、最後にして最大の戦いが始まろうとしていた。

シリアス嫌

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