『バカンス最終夜と、絶世の美女の来訪』(イラスト有り)
第十五章:バカンス最終夜と、絶世の美女の来訪
南仏コート・ダジュールでの『リュクス・アンペリアル』のメインビジュアル撮影は、天候の都合などで当初の最短予定より一日延びたものの、持子の圧倒的な美のカリスマ性と雪たちの完璧なマネジメントにより、わずか『四日間』で無事に完了していた。
三月三十日から始まった過酷な撮影を乗り切り、約束通り持子たちに与えられた『二日間の完全なるご褒美バカンス』。
地中海の青い海で遊び、最高級のシーフードやジェラートを食い尽くしたそのバカンスも、ついに最終日となる夜を迎えていた。
「ふぅ……。終わってみれば、あっという間の南仏であったな」
その日の深夜。
豪奢なスイートルームの寝室で、持子は一人、極上の羽毛ベッドにゴロゴロと寝転がっていた。
明日の夕方にはプライベートジェットに乗り、極東の日本へと帰還することになる。
「持子様ぁ! 最後の夜くらい、私を抱き枕にしてくださいよぉ!」と扉の外で泣き叫ぶ鮎を「うるさい、わしは一人で大の字で寝るのだ!」と一蹴し、完璧なプライベート空間を満喫している。
(あの鬱陶しい包帯男も現れんだろう。やはり『わしの中身は男だから、女しか抱かん!』と宣告してやったのが効いたのだろう。ふはは、これで今夜は心置きなく熟睡できるわ!)
持子は満足げに笑い、シルクのネグリジェの胸元をはだけさせたまま、目を閉じようとした。
――その時だった。
スゥッ……。
開け放たれたバルコニーの窓から、ふわりと、甘く蠱惑的な香りが漂ってきた。
高級な香水ではない。極上の花を煮詰めたような、本能を直接揺さぶるような香りだ。
「……む?」
持子が怪訝に思い、ベッドから身を起こして黄金の瞳を向けた先。
月明かりを背にしてバルコニーに立っていたのは――息を呑むほどに美しい、『絶世の金髪美女』だった。
「……ぁ……」
持子の口から、無意識に感嘆の吐息が漏れる。
透き通るような雪白の肌。月光を溶かしたような、輝くブロンドの長い髪。
身に纏う薄いシルクのガウンからは、豊満で重力に逆らうような美しい双丘の谷間と、滑らかな腰の曲線が惜しげもなく晒されている。
そして、その潤んだような赤い瞳が、熱を帯びた視線で持子を見つめていた。
「おおおっ……! な、なまら良い女ではないか……ッ!!」
美女や可愛い女に目がない持子の内なる「雄(董卓)」の魂が、一瞬にしてトップギアに入った。警戒心など宇宙の彼方へ吹き飛び、ただただ眼前の極上の美に釘付けになる。
「夜分遅くに、申し訳ありません……」
金髪の美女が、とろけるような甘い声で囁き、ゆっくりと室内に足を踏み入れた。
「わたくし、あなたのその圧倒的な美しさと強さに、すっかり心を奪われてしまったのです。……どうか今夜、わたくしをあなたの慰みにしていただけないでしょうか……?」
まさかその絶世の美女の中身が、吸血鬼の秘伝の「魔法の薬」を使って自身の肉体構造すらも作り変えた、あのドMの真祖エティエンヌだとは、絶望的に頭が悪い持子は微塵も気づかなかった。
『女であれば受け入れる』という持子の言葉を斜め上に解釈し、肉体ごと極上の女へと変異するという狂気の沙汰に出た真祖の執念。
しかし、結果としてその作戦は、持子の「性癖」に完全なるクリティカルヒットを果たしていた。
「ふははは! 慰みだと? 良い心がけだ! わしの美しさに惹かれて夜這いに来るとは、見所のある女よ!」
持子はベッドの上で胡座をかき、ポンポンと自分の隣を叩いた。
「来い! わしがたっぷりと可愛がってやる!」
「ああっ……! ありがとうございます、私の……麗しき王……っ」
金髪美女は、歓喜に打ち震えながらベッドへと這い上がり、持子の胸元へとその柔らかな身を預けた。
あー




