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第4話 白猫を拾ったら

僕はその白い猫を抱えた。

でも、黄色い傘を差しながら抱えるのが難しかったから、

僕は傘を置いていく事にした。


結構気に入ってた傘なんだけど、


「しょうがないよね。」


僕は一度猫を下ろし、傘を閉じた。

郵便局の入り口に向かった。

傘立てに僕の傘を立てて、猫の方へ小走りで向かおうとした。


「ニャアア」


「うわっ!?」


振り返ったら、すぐそばに猫がいた。

でっかい声で鳴くものだから、びっくりしてしまった。


「ついてきたの?」


「にゃあ」


ノドをゴロゴロ鳴らして、僕の差し伸べた左手に顔をすり寄せてくる。

僕は猫を抱き上げて家まで帰った。









 帰ってから玄関でお母さんを呼んだ。


「英行、あんた…びしょ濡れじゃないの!!傘はどうしたの?それに、その猫…」


お母さんは驚いてたけど、猫の姿を見るなり笑顔になった。


お母さんも、お父さんも猫好きだ。

1年前に、けがをした子猫を拾ってきた時は、お母さんと病院に連れて行った。

その時に拾ってきた猫は病気だったらしくて、すぐに死んじゃったんだ。


「拾ってきちゃったんだけど…」


「かわいい猫ちゃんね。ちょっと待ってて」


お母さんはバスタオルを2つ持ってきてくれた。

僕が自分の身体をふいている間、お母さんはもう1枚のバスタオルで猫をくるんで家の中に入っていった。


「あっ!お母さん!!どこに行くの!?」


急いで長靴と靴下を脱いで、家の中に入った。


「あ!あんた、せめて足ふいてから入ってよ!」


「どこ行くの?」


「お風呂に入れてあげるの」


そう言うと、長方形の廊下の右側にある

2つ目の扉に入って行ってしまった。


ずるい!!僕が拾ってきたのに!!!


「待ってよー!!」


足の裏をバスタオルでふいて、ランドセルを放り投げた。

廊下を走ってお風呂場に駆け込む。


「どこで拾ったの?」


お母さんはすでに、猫にシャワーのお湯をかけていた。

猫は気持ちよさそうに目を閉じて、鼻先を上に向けている。


「郵便局の前だよ。傘、邪魔だったから郵便局に置いてきちゃった。」


「そっか。名前、なんにしようかねぇ?」


猫の額を人差し指でなでながら、お母さんはほほえんだ。


「シロちゃんかな?」


「えー、ありきたりで面白くない!」


僕が頬を膨らませると、お母さんの大きな目が

ギョロッてこっちを向いたからびくっとした。


「あんた、名前考えてるの?」


「え?ううん…今から考えようかなーって」


「お父さんにも後で連絡しとかなきゃだな」


お母さんの指示で足ふきマットを敷いて、

猫をその上に乗せる。

洗面台の向かいの棚からドライヤーを出して、

洗面台のコンセントにさした。


お母さんに渡すと、お母さんはドライヤーを

猫にあて始めた。


猫はお母さんの顔を見たり、

僕の顔を見たりしている。


「顔似てるから、どっちが英行か分かんなくなったのかな?」


お母さんが笑いながら言った。


「分かるよ!僕が拾ってきたんだもん!」


「えー、だって髪型まで一緒じゃん」


お母さんはそう言って笑った。


「分かるもん!お母さんみたいにおっきくないもん!まだ子供だもん!」


僕がそう言うと、猫は僕の顔を見て「ニャアン」と鳴いた。


「ほら!賢いよ、この子!」


僕はさっき、猫が人間みたいにうなづいたのを

思い出して興奮した。


「かわいい声してるねー」


お母さんはドライヤーの電源を切って、

僕に渡した。

まだ完全には乾いていないけど、

お母さんは猫を抱きかかえて廊下に出た。


急いでドライヤーを元の棚に戻して、僕も

廊下に出る。


玄関から真正面にある扉を開けて、

リビングキッチンに入った。


部屋にはダイニングキッチンと木製のテーブル、イスが置いてある。

そのテーブルの横には僕の膝くらいの高さのガラスのテーブルと、紺色の布生地ソファーが置いてある。


お母さんは猫をソファーの上に乗せ、ゆっくり頭をなでていた。

ソファーに駆け寄って、僕も猫をなでた。


猫は目をうっすらと開け、ノドを鳴らしながら部屋の中を見回している。

その時、僕は猫の名前を思いついた。


「"ミータ"って、どう?」


「あら、いいんじゃない?」


お母さんも賛成してくれた。

後はお父さんが賛成してくれたらオッケーだな。


「ミータ、ミータ」


「ミータくん」


ミータは黄色い大きな目をぱっちり開いて、


「ニャアン」


と鳴いた。


「返事してくれてるよ?」


「かわいいわね~」


お母さんはミータを抱っこして、抱きしめた。

ミータはノドを鳴らすのを止めて、目をパチッと見開いた。

前足と後ろ脚をバタバタさせて、お母さんの腕から逃げてテーブルにジャンプした。


「嫌がってるよ、ミータ」


「抱っこは嫌いなのね…」


お母さんは少し悲しそうな顔をした。


ミータはテーブルの上で、ピンク色の鼻を前足でこすっていた。

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