第87話 『公式ヒロイン争奪戦、発令──選ばれるのは“声”か“心”か』
──朝の教室。
掲示板に貼られた一枚のプリントが、校内の空気を破壊した。
【 緊急告知!ヒロイン選抜総選挙 開催】
あなたは誰を“公式ヒロイン”に選びますか?
投票期間:今週いっぱい
投票場所:校内全端末・生徒アプリ連動済
主催:久慈川幸香(公正な妹)
生徒一同「…………は?」
俺「何やってんだおおおおおお!!!???」
***
事の始まりは、昨夜の屋上での“公式ヒロイン争奪会議”宣言。
そして今朝、妹・幸香は全力で行動に出た。
「だって、言ったじゃん。**“公正に競わせたい”**って♥」
「それは“人知れず”とか“家の中で”とかでやることであって!
なんで校内投票にしたんだお前は!!」
「だって……お兄ちゃんの人気は“公共財”だもん♥」
(この妹……世界がハーレム前提で回ってると思ってやがる……!)
***
【 投票フォーム内容:】
誰が“久慈川幸喜の公式ヒロイン”にふさわしいか?
(※最大1名まで選択可能)
理由を200文字以内でどうぞ
(例:「原作よりヒロインしてる」「怒る顔が最高」「嫁力」等)
あなたの属性(男子/女子/作者本人←混入禁止)
──そして、何より恐ろしいのは。
この企画に、ヒロインたちが完全に乗ってきてしまったということだ。
***
【昼休み・校庭特設ステージ】
なぜか、舞台が組まれていた。
妹「じゃーん♥ “ヒロインパフォーマンス審査会”も同時開催するよー!」
俺「えっ、なにそれ!? いつの間に!? 予算は!? 許可は!? なにより常識は!?」
「全部、SNSの“有志ファン”からの支援で集まりました♥」
(クラファンで俺の人生売るな!!)
***
【パフォーマンスNo.1:袋田歩美】
「私のプレゼンは、“10年の隣人愛”です!!」
写真付き年表とともに、彼女は幼少期からの成長記録をスクリーンで上映。
・同じ傘で帰った雨の日
・高熱で倒れた俺を看病した小学生時代
・高校入学式での「変わってないね」の一言
「──わたし、こうきのこと、“物語の外側”から愛してます!」
観客「うおおおお! 幼なじみ強すぎ!!」
「俺、そっちのルート選ぶ!!」
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【パフォーマンスNo.2:舞香・フォン・アーデルハイト】
「わたくしのアピールは、“国際正妻外交”ですわ♥」
彼女はスライドを使い、結婚後の財政試算/共同生活シミュレーション/五か年計画を披露。
「配偶者控除は最大限活用しつつ、生活費は“萌え課金”に集中投下。
家計の主導権はわたくしに♥」
観客「嫁力のレベルが一人だけ“国家単位”……」
「やばい、安心感が異次元……!」
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【パフォーマンスNo.3:磐城玲奈】
「……私は、“声”じゃ勝てないので、“心”でいきます」
玲奈は小さな声で、自作詩を朗読した。
『声なき恋は、やがて香る。
目を合わせることさえ、怖かった。
でも、あなたの隣に咲くには。
私は、書くしかなかった』
「……私は、“画面の外”でも、彼を愛せます」
観客「詩が……沁みる……」
「ラノベ原作者、全員惚れる詩力……!」
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【パフォーマンスNo.4:妹・幸香(ルール違反)】
「本命は私じゃないから♥ “管理者”ですから♥」
しかし、終盤に突然前に出てマイクを握る。
「──ちなみに、お兄ちゃんが初めて“濡れた”日のパンツ、まだ保管してます♥」
「校内に“展示します”♥」
観客「通報だああああああああ!!」
俺「この学校終わってる!!」
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【投票結果・途中経過】
・歩美:37票
・舞香:34票
・玲奈:35票
・るりあ:38票
・その他:2票(うち1票“作者本人”)
・幸香:強制失格
(えっ……俺の1票、カウントされてるの!?)
俺「もうやだこの学校ぉぉぉぉおおお!!!」
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その夜。
るりあが俺の部屋のベランダに現れた。
「──次、ちゃんと“私の声”だけ、聞いてくれますか?」
その問いに、俺はまた、答えられなかった。




