表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/87

第85話 『収録現場襲撃──ラブコメ現場は戦場だった』

──都内某・アニメ収録スタジオ。


防音扉の内側には、いつもの収録準備が整えられていた。

台本が並び、スタッフがモニターを操作し、照明が調整され、今日も“物語の声”が紡がれようとしている。


 


「ふふっ、今日はちょっと、特別ゲストを呼んじゃいました♪」


 


その笑顔とともに、現れたのは声優・姫崎るりあ。


──そして、その背後から現れたのは。


 


・袋田歩美(制服のまま、無言の怒気を発しながら)

・舞香(なぜかスーツケース付き)

・磐城玲奈(手作りのおにぎり弁当を抱えて)

・そして妹・幸香(スタジオに“兄好感度表”を掲げて堂々入場)


 


るりあ「今日、実は“現場視察ツアー”ってことで、みなさんをお連れしましたぁ♥」


 


監督「え、え、えええっ!? 視察!? 聞いてないよ!? どこのプロダクションの指示!?」


 


スタッフ(ざわつき)「てか、なんで女子高生……?」

「この制服、つくばの高校じゃない?」

「え、原作の作者って……え、あの男子生徒?」

「え、嘘でしょ?“本人”?マジで? 収録止めた方が……」


 


俺(……やばい。この現場、五分でラブコメ地獄になる……!)


 


 


 ***


 


その不安は、開始3分で的中した。


 


ディレクター「はい、それじゃあ第10話のアフレコ入りまーす。姫崎さん、お願いします」


 


るりあ「はいっ、よろしくお願いします」


 


【収録ブース・台詞】


 


るりあ「……あなたの隣にいられるなら、私は……他に何もいらない……」


 


 


そのセリフの余韻が、ブースに満ちる。


モニタールームのスタッフも「さすがだな……」と頷き合う。


だが、その背後から――


 


「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!!!」


 


ブースマイクが、爆発的な割れ音で叫びに包まれる。


 


歩美がブース内に突撃してきたのだ。


 


歩美「……そのセリフ、現実で言えるの? こうきに、ちゃんと届いてると思ってんの?」


 


るりあ「えっ……なに……急に……!?」


 


舞香「申し訳ありませんが、“公式ヒロイン席”は本日、譲りませんわ♥」


 


玲奈「わたしの弁当が、彼の原動力です……アニメなんかに負けない……!」


 


監督「ちょ、ちょっと! アマチュアさんはブースに入らないでくださいぃぃぃ!!」


 


 


 ***


 


そして──ついにマイク前。


全ヒロインが揃って立ち、口々に叫ぶ。


 


歩美「こうきの“本命”は私です」

舞香「作者が私に惹かれるのは、もはや文化的必然ですわ」

玲奈「魂が書いたんです。私たちとの時間を」

幸香「兄の性欲構造は、私が一番把握してます♥」


 


収録ブースが、ラブコメ修羅場の特設会場と化した。


 


るりあ「な、なんで……この台詞録るだけなのに、ここまで混沌としてるの……」


 


 


 ***


 


監督「──カット! カット! 撮れません!! 一旦休憩!!」


 


アシスタント「マイク前で“本命宣言”したの、史上初です!!」


 


音響監督「こんな現場、聞いたことねえ!!」


 


 


 ***


 


その後。


控室で正座させられた俺は、頭を抱えて呻いていた。


 


「……お前ら、頼むから収録現場くらい空気読んでくれぇぇ……」


 


歩美「だって、“画面の中で勝つ”ってことは、“現実で負けてもいい”ってことになるじゃん」


 


舞香「声では勝てても、心では譲れませんわ♥」


 


玲奈「台詞より……日常の一言の方が、強いこともあります」


 


幸香「兄が喘いだの、わたしの耳が記録してますから♥」


 


──言い逃れ不可能。


 


俺「もう誰か、記憶消してくれ……」


 


スタッフ「いい声録れたら、アニメの告知PVに使おうかと思ったんだけどな……“本命争奪会議”の音源」


 


俺(絶対やめてぇぇぇぇ!!)


 


 


 ***


 


その夜。


るりあから、一通のDMが届いた。


 


るりあ【非公開チャット】

「……ねえ、“こうきくんの物語”って、今どこまで進んでるの?」

「私は、まだ“ヒロイン候補”でいられる……かな?」


 


──その問いに、俺はまだ答えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ