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第77話 『仏壇の前で、婚約挨拶!?』

──翌朝、久慈川家・仏間。


 


「ではみなさん、整列してくださ~い♥」


 


妹・幸香の明るすぎる声が、仏壇の間に響きわたった。


 


「今日はね、**“亡き祖父ちゃんへの婚約挨拶”**だよ!」


 


「やるか普通!?」


 


俺・久慈川幸喜は、正座しながらツッコミを入れた。


だが時すでに遅し。

母・静江はちゃぶ台の横に胡座をかき、茶を啜りながら「いいじゃん」とノリノリで見守っていた。


 


「故・久慈川甚八じんぱちじいちゃんの前で、愛の誓いを述べてください♪」


 


(じいちゃん、棺の中で全力で首振ってる気がする……)


 


 


 ***


 


【一番手:袋田歩美】


 


「え、わたしが最初!?」


 


歩美は顔を赤らめながら立ち上がり、仏壇の前へ。


位牌に向かって、両手を合わせて深く一礼。


 


「はじめまして、袋田歩美です……」


 


一呼吸。


 


「私は、こうきと幼い頃から一緒に育ちました。

彼の笑顔、怒った顔、落ち込んだ姿……いっぱい見てきました。

それでも、ずっと傍にいたいと思っています」


 


「だから、どうか……

“幼なじみ”じゃなく、“嫁”として、彼のそばにいさせてください」


 


静江「……やるじゃん」


 


俺(え、めちゃくちゃ感動してる!?)


 


 


【二番手:磐城玲奈】


 


次に立ったのは玲奈。


相変わらず小さな声で、そっと仏壇の前に座る。


 


「……磐城玲奈と申します……」


 


手を合わせ、目を閉じた。


 


「私は……かつて“茨城太郎萌左衛門”という名前で活動していた彼に、助けられました」


 


「そのときから……私は、ずっと、彼に“救われている気がして”……」


 


ぽつりぽつりと語られる言葉は、

どこか詩のようで、切なくて、真っ直ぐだった。


 


「静かに、そばにいさせてください。

彼が疲れたとき、帰ってこられる場所になりたいんです」


 


静江「……あんた、地味だけど……骨あるわね」


 


俺(母、完全に見直し始めてる!?)


 


 


【三番手:舞香】


 


堂々と立ち上がる。


長いスカートを翻し、正座の姿勢に入った舞香は、堂々たる王族の風格で仏壇に向き合った。


 


「ごきげんよう。舞香・フォン・アーデルハイトと申します」


 


母「いや名前長っ!!」


 


舞香は微笑んだ。


 


「私はこうき様に出会い、自分の国とは違う文化に触れました。

最初は戸惑いましたが、今は心から……この人の隣にいたいと願っています」


 


「おじいさま。もし来世でお会いできたら、ぜひ“婚姻届の証人欄”にサインをお願い致しますわ♥」


 


静江「……いや、ちょっと笑ったけど……それはそれでありだな……」


 


 


【四番手:妹・幸香】


 


そして、最終兵器・妹。


静江「いや、アンタは違うでしょ……」


 


幸香はにっこり笑って言った。


 


「わたしは“家族代表”です♥」


 


「なので、おじいちゃんには安心してほしいなって。

兄の性欲は、私が管理してますんで♪」


 


静江「やめぇぇぇぇ!!」


 


玲奈「また言った……」

舞香「それ遺影の前で言うな!!」

歩美「祖先の魂が泣いてるよ!!」


 


 


 ***


 


その後、仏壇の前で母・静江が立ち上がった。


 


「──よし。言いたいことは聞いた」


 


全員がピシッと背筋を伸ばす。


 


「ぶっちゃけ、みんな“正妻”にふさわしいくらい、根性あったわ」


 


母の目が、俺に向く。


 


「幸喜。お前、モテてることに感謝しなさい。

でもそれ以上に、“覚悟”決める準備だけはしときなさい」


 


「どっちつかずは、誰かひとりを深く傷つけるからな」


 


──その言葉は、優しく、そして少しだけ重かった。


 


俺は小さく頷いた。


 


(……いつか必ず、ちゃんと“言葉”にしよう)


 


 


 ***


 


夜、縁側で妹が言った。


 


「ねぇお兄ちゃん。明日、帰る日だね」


 


「……ああ」


 


「でも、恋の修羅場は“東京編”で再開するんでしょ?」


 


「やめてくれその予告ナレーション風!!」


 


幸香は笑った。


 


「お兄ちゃんの物語、“仏前で婚約挨拶したヒロイン全員と同居再開”ってトンデモ展開から始まるんだよ♥」

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